循環器トライアルデータベース

RACE 7 ACWAS
Rate Control versus Electrical Cardioversion Trial 7-Acute Cardioversion versus Wait and See

目的 救急外来を受診する発症後間もない心房細動に対しては,洞調律復帰を目的として早期に薬理学的または電気的除細動を行うのが標準治療とされている。しかし,心房細動はしばしば自然停止し,レートコントロールにより症状が治まることも多いため,こうした症例に対する早期の洞調律化の必要性については疑問が残る。
RACE 7 ACWASは,救急外来を受診した発症後36時間未満の心房細動患者を対象に,洞調律復帰に関して,早期除細動に対する待機的治療戦略の非劣性を検討したランダム化試験。

一次エンドポイントは,4週後の洞調律。
コメント 発症後間もない心房細動がレートコントロールのみで自然に洞調律化することは,日ごろ経験することである。1998年,Daniasらは発症後72時間未満の心房細動356例を対象に,レートコントロールのみでどの程度洞調律化が可能であるかを報告した(J Am Coll Cardiol. 1998; 31: 588-592. PubMed)。レートコントロールは本報告と同様に,ジギタリス,β遮断薬,Ca拮抗薬を用いた。その結果,242例(68%)が洞調律に復帰した。発症後24時間未満の例では73%(292例中213例)で洞調律化したが,24~72時間の例では45%しか洞調律化しなかった。
本研究の待機群でもレートコントロールのみで48時間以内に69%が洞調律化しており,Daniasらの報告と同じ結果であった。今回の研究は,無作為化比較試験という厳密な方法を採用していること,また48時間後の洞調律化のみならず4週間後の洞調律維持率を示したことに特徴がある。現在の救急診療においては,発症後間もない心房細動は除細動されるのが通例である。しかし,NOACという即効性の経口抗凝固薬が使用できる環境下においては,本研究の待機的治療という選択肢も十分採用できることが明らかにされたといえる。(井上
デザイン 無作為割付け,オープンラベル,多施設(オランダ,15施設)。
期間 追跡期間4週間。
登録期間は2014年10月~2018年9月。
対象患者 437例(解析対象427例)。≧18歳,救急外来を受診した発症後36時間未満の症候性心房細動で,血行動態が安定している症例。
除外基準:心筋梗塞の徴候,持続性心房細動(>48時間)の既往,血行動態不安定,失神/洞不全症候群/WPW症候群の既往,他の臨床試験への参加など。
■患者背景:平均年齢65歳,男性60%,初発の心房細動44%,CHA2DS2-VAScスコア(≧2)64%,登録時の経口抗凝固薬使用40%。
・登録時のおもな症状:動悸87%,運動時疲労感26%,呼吸困難23%,胸痛23%。
・既往歴:高血圧58%,糖尿病11%,心筋梗塞9%,虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作7%。
治療法 待機的治療*群(待機群)218例または早期除細動**を行う群(早期群)219例に1:1の比でランダム化。
脳卒中高リスク例には,CHA2DS2-VAScスコアに基づき,現行ガイドラインに準じた抗凝固療法を開始または継続。

* レートコントロール薬(β遮断薬,非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬,ジゴキシン)による治療のみで経過観察(心拍数≦110/分,症状軽快を目標)。翌日(可能な限り,発症後48時間に近いタイミング),心房細動が持続している場合に除細動を実施。
**薬理学的除細動(flecainide)が禁忌または無効の場合に,電気的除細動を実施。
結果 [洞調律復帰]
・待機群:レートコントロールのみで48時間以内に自然に復帰150例(69%),除細動後61例(28%,薬理学的除細動9例+電気的除細動52例)。
・早期群:除細動前に自然に復帰36例(16%),除細動後171例(78%,薬理学的除細動83例+電気的除細動88例)。
[一次エンドポイント]
※一次エンドポイントの両群間の差の95%信頼区間(CI)下限値が-10%ポイントを上回る場合,非劣性が認められるとした。
待機群193例(91%)vs. 早期群202例(94%)。群間差-2.9%ポイント; 95%CI -8.2~2.2; 非劣性のP =0.005により,待機群の早期群に対する非劣性が認められた。
[その他のおもな結果]
・遠隔ECGモニタリングでの再発:待機群49/164例(30%) vs. 早期群50/171例(29%)
・救急外来総滞在時間(除細動のための翌日の受診も含む)中央値:待機群120分 vs. 早期群158分。
・追跡期間中の血栓塞栓症:待機群1例 vs. 早期群1例。
・AFEQT 総合スコア平均値:待機群72点 vs. 早期群73点。

Atrial Fibrillation Effect on Quality-of-Life questionnaire。心房細動患者のQOL評価スケール(0~100点)。点数が高いほど,心房細動によるQOLへの影響が小さいことを表す。

★結論★救急外来を受診した発症後間もない症候性心房細動に対する待機的治療戦略は,4週間後の洞調律の割合において,早期除細動に対し劣らない。
文献
  • [main]
  • Pluymaekers NAHA, et al for the RACE 7 ACWAS Investigators: Early or Delayed Cardioversion in Recent-Onset Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2019; 380: 1499-1508. PubMed

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収載年月2019.06