循環器トライアルデータベース

AUGUSTUS
A Study of Apixaban in Patients With Atrial Fibrillation, Not Caused by a Heart Valve Problem, Who Are at Risk for Thrombosis (Blood Clots) Due to Having Had a Recent Coronary Event, Such as a Heart Attack or a Procedure to Open the Vessels of the Heart

目的 急性冠症候群(ACS)を合併またはPCI施行後の心房細動患者に対する抗血栓薬の選択は難しい。至適治療戦略は確立されていないため,許容できる範囲でのベネフィット・リスクプロファイルをもつ抗血栓治療戦略が求められている。
AUGUSTUS試験は,ACSを発症またはPCI施行後でP2Y12阻害薬を投与されている心房細動患者を対象に,抗凝固薬[経口直接Xa阻害薬apixabanとビタミンK拮抗薬(VKA)]と抗血小板薬(aspirinとプラセボ)それぞれの抗血栓レジメンの安全性および有効性を検討した2×2試験。

一次エンドポイントは,6か月後の大出血または臨床的に重要な非大出血(いずれもISTH基準)。
コメント ランダム化比較試験による標準治療の転換が現在の臨床医学の科学であるが,「PCI後には抗血小板薬併用療法が標準治療」,「脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動には抗凝固薬が標準治療」とされたときに,「PCI後の心房細動には抗血小板薬併用療法と抗凝固薬の併用が標準」のような発想には,根本的な誤りがある。抗血小板薬は血小板の活性化阻害を介して凝固系の阻害効果があり,抗凝固薬にはトロンビン受容体刺激阻害を介して抗血小板効果があるので,抗凝固薬と抗血小板薬は独立ではない。本研究はランダム化比較試験ではあるが,仮説検証試験とはいえない。
70歳前後の症例が欧米の容量のP2Y12阻害薬とVKA群の併用により6か月の重篤な出血が14.7%,apixaban群で10.5%であり,aspirin群で16.1%,プラセボ群で9.0%であった。死亡または入院の発生割合がVKA群で27.4%,apixaban群で23.5%と高いことも示された。禁煙,運動習慣,適切な水分摂取などにより血栓イベントリスクを低減できることを考えれば,真に抗血栓療法を要する症例を選別することが重要である。ランダム化比較試験による標準治療の転換は,循環器病一般の予後の改善に役立った。PCIを受けた心房細動症例など,PCIを受けたのちの条件にも大きな幅があり,心房細動であっても臨床アウトカムに大きな幅がある症例では,個々の特殊な症例に対する治療法を科学的に支持する論理が必要である。(後藤
デザイン 無作為割付け,非盲検(抗凝固薬レジメン)/ 二重盲検(抗血小板薬レジメン),多施設,2×2 factorial。
期間 追跡期間6か月。
登録期間は,2015年9月~2018年4月。
対象患者 4,614例。18歳以上,直近のACS発症またはPCI施行後で,P2Y12阻害薬による治療を6か月以上継続予定の心房細動患者。
おもな除外基準:人工弁/静脈血栓塞栓症/僧帽弁狭窄症での抗凝固薬服用,高度腎不全,頭蓋内出血既往など。

■患者背景:年齢中央値70.7歳,女性29.0%,CHA2DS2-VAScスコア中央値3.9,HAS-BLEDスコア中央値2.9。
登録時のACSまたはPCI施行の治療状況:ACSに対するPCI施行37.3%,薬物療法のみでACSを治療 23.9%,待機的PCI施行38.8%。
P2Y12阻害薬の種別の治療状況:clopidogrel 92.6%,prasugrel 1.1%,ticagrelor 6.2%。
登録時の経口抗凝固薬使用歴:49.0%。
指標となるイベント(直近のACSまたはPCI施行)からランダム化までの平均日数:6.6日。
治療法 ①apixaban 5 mg×2回/日*群2,306例またはVKA群[(PT-INR)目標値2.0~3.0で調節]2,308例にランダム化。
②aspirin 81 mg/日群2,307例またはプラセボ群(aspirinと同量)2,307例にランダム化。

* 年齢≧80歳または体重≦60 kgまたは血清クレアチニン値≧1.5 mg/dLの場合は,2.5 mg×2回/日に減量。
結果 いずれのエンドポイントにおいても,2つのランダム化要素間に有意な交互作用は認められなかった。
[一次エンドポイント]
①apixaban群241例(10.5%) vs. VKA群332例(14.7%)。100人・年あたりのイベント発生率は,VKA群にくらべ,apixaban群で有意に低かった[ハザード比(HR)0.69, 95%信頼区間(CI)0.58~0.81]。非劣性および優越性のP <0.001。
②aspirin群367例(16.1%)vs. プラセボ群204例(9.0%)。100人・年あたりのイベント発生率は,プラセボ群にくらべ,aspirin群で有意に高かった(HR 1.89, 95%CI 1.59~2.24; P <0.001)。
治療内容を統合して解析すると100人・年あたりのイベント発生率はVKA+aspirinで最も高く(49.1/100人・年),apixaban+プラセボで最も低かった(16.8/100人・年)。apixaban+aspirin:33.6/100人・年,VKA+プラセボ:26.7/100人・年。
[二次エンドポイント]
《死亡または入院の複合》
①apixaban群541例(23.5%)vs. VKA群632例(27.4%)。100人・年あたりのイベント発生率は,VKAにくらべ,apixaban群で低かった(HR 0.83, 95%CI 0.74~0.93; P =0.002)。死亡率は群間で類似,入院率はapixaban群で低かった(22.5% vs. 26.3%)。
②aspirin群604例(26.2%)vs. プラセボ群569例(24.7%)。死亡または入院の発生率は,両群で類似(HR 1.08, 95%CI 0.96~1.21)。
治療内容を統合して解析すると100人・年あたりのイベント発生率はビタミンK拮抗薬+aspirinで最も高く(69.5/100人・年),apixaban+プラセボで最も低かった(52.7/100人・年)。apixaban+aspirin:62.0/100人・年,VKA+プラセボ:68.9/100人・年。
《死亡または虚血性イベント**
①apixaban群154例(6.7%)vs. VKA群163例(7.1%)。
②aspirin群149例(6.5%)vs. プラセボ群168例(7.3%)。有意差は示されなかったものの,虚血性イベントはプラセボ群でより多く発生した。

** 脳卒中,心筋梗塞,definite/probableステント血栓症,緊急血行再建術。

★結論★直近のACS発症またはPCI施行後でP2Y12阻害薬投与中の心房細動患者において,apixabanを含む抗血栓療法(aspirin非併用)は,VKAおよび/またはaspirinを含む抗血栓療法にくらべ,虚血性イベント増加を伴わずに出血および入院を抑制した。
ClinicalTrials.gov No: NCT02415400
文献
  • [main]
  • Lopes RD, et al for the AUGUSTUS Investigators: Antithrombotic Therapy after Acute Coronary Syndrome or PCI in Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2019; 380: 1509-1524. PubMed

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収載年月2019.04