循環器トライアルデータベース

SCREAM project
Stockholm CREAtinine Measurements project

目的 透析患者では大動脈弁狭窄症(AS)有病率が高いこと,また,推算糸球体濾過量(eGFR)の低下(<60 mL/分/1.73m²)と動脈硬化性疾患や心血管疾患との関連は,いずれも先行研究で報告されてきた。しかし,透析導入前段階の患者も含めて腎機能の程度とAS発症とを関連づけた検討はこれまでに行われていない。
本研究では,スウェーデンのSCREAM projectコホートのデータを用い,透析非依存も含めた腎機能の程度とAS発症との関連を検討した。
本研究のデータソースとなるSCREAM projectは,スウェーデン・ストックホルム居住かつ血清クレアチニン値を入手可能な地域住民を対象としたプロジェクトであり,慢性腎臓病(CKD)の疾病負荷や予後の評価,医療政策への反映などの検討を目的としている。

主要評価項目は,AS発症。
コメント eGFR >90を対照としたAS発症補正ハザード比(HR)が,eGFR <30でHR 1.56と高値で,また,eGFR <30のincidence rateも8.27/1000人・年と高く,病期ステージの進んだCKDにおけるAS発症のリスクを強く示すと考えられる。高血圧や糖尿病など,CKDに対しても動脈硬化に対しても原因となる疾患は交絡調整が行われている。残余の交絡因子についても,胆石や胆嚢摘出術,自動車事故がeGFRと関係していないことを示すことで,きめ細かな検討を加えている。
SCREAMの結果を踏まえると,CKDをASも含めた多疾患のリスクのマーカーとしてとらえたほうが,臨床的には有用と考える。CKDの予防や治療がASを予防するかなどは,当然興味が持たれる検討課題ではあるが,高血圧,糖尿病や高脂血症の治療が,結局,CKDの予防とASの予防の両者につながるのであれば,臨床的リソースを費やす方向性は変わってくる。
SCREAMでは,112万1,875例を対象としており,登録時に中等症から重度のCKDの有病率は6.0%であった。高血圧の一般人口における有病率がより高いことを考えると(SCREAMでは16.2%),CKDを病態のマーカーとしてとらえた場合に示唆に富む。SCREAMでは糖尿病の有病率が5.5%と中等症から重度のCKDより低かった。高血圧や糖尿病からCKDを発症し,その後にASなどの臓器障害が発生すると仮定するならば,障害の進行を防止する上で,障害の進行の度合に基づくよりきめ細かい対処が可能となるのではないだろうか。(中村
デザイン 観察研究。
期間 追跡期間中央値5.1年。
参加者 SCREAM project* 参加者のうち,112万1,875例。18歳以上で,ASの既往のない者。
除外基準:AS(ICD-10:I35.0およびI35.2)または腎代替療法(腎移植,透析)既往。

* SCREAM:2006~2011年の間に血清クレアチニン検査を受けた,スウェーデン・ストックホルム居住者の臨床検査データと個人データ[人口統計学的データ,受診データ,処方歴,腎代替療法(透析または腎移植)に関するデータなど]を紐付けしたデータリポジトリ。SCREAM projectの推定人口カバー率は,18~44歳で54%,45~64歳で78%,≧65歳で92%。

■患者背景:年齢中央値50歳,女性54.2%。eGFR中央値96 mL/分/m²。
登録時の中等度~重度のCKD** 有病率: 6.0%(66,949例)。
登録時の併存疾患:高血圧(16.2%),脂質異常症(9.9%),糖尿病(5.5%),虚血性心疾患(5.3%),狭心症(4.2%),脳血管疾患(3.0%),心不全(3.0%),心筋梗塞(2.9%),慢性閉塞性肺疾患(2.1%),末梢動脈疾患(1.5%)。
登録時の治療状況:高用量(>160 mg)aspirin/NSAIDs(15.1%),β遮断薬(13.0%),ACE阻害薬/ARB(12.3%),利尿薬(9.5%),低用量(≦160 mg)aspirin(9.1%),カルシウム拮抗薬(6.2%)。

** 本研究における中等度~重度のCKDの定義は,eGFR <60 mL/分/m²。
調査方法 eGFRは,初回の血清クレアチニン値からCKD-EPI式により算出。さらに,KDIGO 基準によりeGFRを分類(>90/ 90-60/ <60-45/ <45-30/ <30 mL/分/m²)。
Kidney Disease: Improving Global Outcomes
結果 [一次エンドポイント]
AS発症5,858例(0.5%;粗発症率1.13/1000人・年)。
〈eGFRとAS発症の関連〉
AS発症リスクは,eGFR >90 mL/分/1.73m²にくらべ,eGFR 60~90 mL/分/m²で14%,eGFR <30 mL/分/m²で56%増加。
・AS発症率(IR):eGFR >90(IR: 0.34 /1000人・年),eGFR 60~90(IR: 1.88 /1000人・年),eGFR 45~59(IR: 4.61 /1000人・年),eGFR 30~44(IR: 6.62 /1000人・年),eGFR <30(IR: 8.27 /1000人・年)。
・eGFR >90を対照としたAS発症補正ハザード比(HR):eGFR 60~90(HR: 1.14),eGFR 45~59(HR: 1.17),eGFR 30~44(HR: 1.22),eGFR <30(HR: 1.56)。
[感度解析]逆因果バイアスの可能性検討のため実施。
解析対象は,①登録後1年までのAS発症例,死亡例,追跡終了例を除外した者,②登録時に心不全の既往がない者。
〈結果〉①eGFR ≦44mL/分/m²でAS発症リスク22%増加(HR: 1.22),②eGFR ≦44 mL/分/m²でAS発症リスク20%増加(HR: 1.20)と,主解析と差がなかった。
[その他:サブグループ解析]
女性のCKD患者は,非CKD女性にくらべ,AS発症リスクが20%増加した一方,男性では関連は示されなかった。また,虚血性心疾患,糖尿病,高血圧および心不全非合併CKD患者のほうが,合併患者よりAS発症とより強く関連した。
★結論★ eGFR <60 mL/分/m²の中等度~重度の慢性腎臓病は,大動脈弁狭窄症発症の独立した危険因子であることが示唆された。

[主な結果]
  • Vavilis G, et al: Kidney Dysfunction and the Risk of Developing Aortic Stenosis. J Am Coll Cardiol. 2019; 73: 305-14. PubMed

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収載年月2019.03