循環器トライアルデータベース

VITAL
Vitamin D and Omega-3 Trial

目的 近年,ビタミンD投与およびオメガ-3脂肪酸による,がん,心血管疾患(CVD)の予防効果がいくつかの臨床試験や疫学研究,二次解析等で示唆されている。しかし,その関連について,一般集団を対象に厳密に検証し,統計学的に十分な検出力をもつ大規模試験は行われていない。
VITAL試験は,米国の一般集団を対象とし,高用量のビタミンD,n-3系(オメガ-3)脂肪酸投与による,がんおよびCVDの一次予防効果を検討した2×2 factorial designの大規模ランダム化試験である。

一次エンドポイントは,すべてのタイプの浸潤性がん,および主要CVイベント[MACE:心筋梗塞(MI),脳卒中,CV死の複合]。
コメント サプリメント(健康食品)の使用量が激増している。特にアメリカでは,ビタミンDやn-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)は最近の10年間でそれぞれ4倍,10倍になっているという。これは,ビタミンDはがんの予防に,n-3 PUFAは冠動脈疾患(CAD)およびCVDの予防に期待されているものと思われるが,このようなエビデンスは十分ではないということから本試験が行われている。本試験は,がんとCVDの既往のない一般集団の一次予防試験である。本試験の特徴は,極めて大規模(25,871例)の長期(5.3年)のビタミンDとn-3 PUFAとプラセボの2因子二重盲検のRCT(2×2)であることである。結果としては,残念ながら2因子とも一次エンドポイントであるがんに対してもCVDに対しても予防効果は示しえなかった。本試験は,極めて大規模であり,長期であることからこのエビデンスは十分注目に値するであろう。ただし,同時に発表されたREDUCE-IT試験では,n-3 PUFAがCVDの予防効果を示しており,その違いを認識しておくことが求められる。本試験は一般住民であることを特徴としているが,REDUCE-ITはCVDの高リスク群であり,比較的トリグリセリドの値も高い集団であること,また使用しているn-3 PUFAの量が本試験では1 g/日であるのに対し,REDUCE-ITでは4 g/日であることなどであり,このことはn-3 PUFAの推奨対象者は,一般集団というより,リスクの高い脂質異常症の“患者”であるということになるのではないだろうか? 一方,ビタミンDについては,がんによる死亡が減少する傾向が認められたことから一定の期待を持たせる結果であるが,現状では,がんによる死亡を減少させるという結論を導くべきではない。今後のこれらサプリメント使用の増加傾向も一考を要するものといえよう。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照,2×2 factorial,intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間中央値は5.3年。
登録期間は,2011年11月~2014年3月。
対象患者 米国の成人男女25,871例(うち黒人5,106例*,男性≧50歳,女性≧55歳)。登録時に,CVDまたは,がん(非黒色腫皮膚がんを除く)の既往のない者。
除外基準:腎不全,透析,肝硬変,高カルシウム血症の既往など。
* 黒人は,他人種にくらべ,太陽光曝露による皮膚のビタミンD合成が低いとされている。
■患者背景:平均年齢67.1歳,女性51%,平均BMI 28.1 kg/m²,現喫煙7.2%,登録時の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の平均値 30.8 ng/mL(血液を採取した例のうち解析可能な15,787例。うち12.7%が<20 ng/mL)。
併存疾患:糖尿病(13.7%)。
登録時の治療状況:降圧薬49.8%,脂質低下薬37.5%。
人種構成:白人71.3%,黒人20.2%,ヒスパニック4.0%,その他4.5%。
治療法 ビタミンD3の投与量は,2,000 IU/日,魚油由来のn-3系(オメガ-3)脂肪酸の投与量は,1 g/日**。ランダム化前に3か月のプラセボrun-in期間を設定。試験レジメン以外のビタミンD服用(マルチビタミン剤含む)については,800 IU/日を上限とした。
** 米国心臓協会が心保護のために推奨する摂取量に準じた。
①《 ビタミンDでの検討 》
投与群12,927例(ビタミンD3+n-3系脂肪酸6,463例,ビタミンD3+n-3系脂肪酸プラセボ6,464例),プラセボ群12,944例(ビタミンD3プラセボ+n-3系脂肪酸6,470例,両者ともにプラセボ6,474例)。
質問票(ランダム化後6か月,1年時点,その後は1年ごと)の回答から,アドヒアランス,試験以外でのビタミンD服用,主要疾患の発症,危険因子などに関する情報や有害事象を収集。
②《 n-3系(オメガ-3)脂肪酸での検討 》
投与群12,933例(ビタミンD3+n-3系脂肪酸6,463例,ビタミンD3プラセボ+n-3系脂肪酸6,470例),
プラセボ群12,938例(ビタミンD3+n-3系脂肪酸プラセボ6,464例,両者ともにプラセボ6,474例)。
質問票(毎年1回実施)の回答から,アドヒアランス,有害事象の可能性,主要疾患の発症,危険因子などに関する情報を収集。ベースライン時に希望者(16,956例)に対して血液採取を行い,解析可能な15,535例について血清n-3系脂肪酸濃度を測定(平均濃度2.7%)。
結果 質問票の平均回答率は,ビタミンD,n-3系脂肪酸ともに93.1%。
試験レジメンの平均遵守率(患者自己申告)は,ビタミンD群82.0% vs. プラセボ群80.3%,n-3系脂肪酸群81.6% vs. プラセボ群81.5%。
[一次エンドポイント]
①《ビタミンD》浸潤性がん,MACEの累積発生率は,ともに群間で有意差は示されなかった。
浸潤性がん:投与群793例 vs. プラセボ群824例[ハザード比(HR)0.96; 95%信頼区間(CI)0.88~1.06; P =0.47]。
MACE:投与群396例 vs. プラセボ群409例(HR 0.97; 95%CI 0.85~1.12; P =0.69)。
②《n-3系脂肪酸》浸潤性がん,MACEの累積発生率は,ともに群間で有意差は示されなかった。
浸潤性がん:投与群820例 vs. プラセボ群797例(HR 1.03; 95%CI 0.93~1.13; P =0.56)。
MACE:投与群386例 vs. プラセボ群419例(HR 0.92; 95%CI 0.80~1.06; P =0.24)。
[二次エンドポイント:部位別がん発症,がんによる死亡,MACEの各項目,MACEの各項目+冠血行再建術]
① 部位別がん発症(乳がんHR 1.02,前立腺がんHR 0.88,大腸がんHR 1.09)に群間で有意差は示されなかった一方,がんによる死亡はプラセボにくらべ投与群で低い傾向であった[154例vs.187例,HR 0.83; 95% CI 0.67~1.02]。
また,MACEの各項目および冠血行再建術について群間で有意差は示されなかった。
② 部位別がん発症(乳がんHR 0.90,前立腺がんHR 1.15,大腸がんHR 1.23)および,がんによる死亡(HR 0.97)に群間で有意差は示されなかった。
MACE各項目については,プラセボにくらべ,総MI(HR 0.72; 95%CI 0.59~0.90),冠血行再建術施行(HR
0.78; 95%CI 0.63~0.95),MIによる死亡(HR 0.50; 95%CI 0.26~0.97)が投与群で低下した。
[有害事象の発生]
① 高カルシウム血症,腎結石,消化器症状の発生に群間で有意差は示されなかった。
② 消化器症状,大出血などの発生に群間で有意差は示されなかった。
★結論★がん,CVDの既往のない一般集団において,ビタミンDおよびn-3系脂肪酸投与は,プラセボにくらべ,浸潤性がんまたはCVイベントを抑制しなかった。ClinicalTrials.gov No: NCT01169259.
文献
  • [main]
  • Manson JE, et al for the VITAL Research Group: Marine n-3 fatty acids and prevention of cardiovascular disease and cancer. N Engl J Med. 2019; 380: 23-32. PubMed
  • Manson JE, et al for the VITAL Research Group: Vitamin D supplements and prevention of cancer and cardiovascular disease. N Engl J Med. 2019; 380: 33-44. PubMed

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収載年月2019.01