循環器トライアルデータベース

REDUCE-IT
Reduction of Cardiovascular Events with Icosapent Ethyl-Intervention Trial

目的 トリグリセリド(TG)は心血管(CV)イベントの独立した危険因子であり,スタチン治療を受けてもなおTG高値の患者では,この残存リスクによりCVイベントリスクが依然として高い。これまでTG低下作用をもつ薬剤(フィブラート系薬,徐放性ナイアシンなど)を用いた数々のランダム化試験が行われたものの,いずれもCVイベントを抑制できていない。
一方,同じくTG低下作用をもつイコサペント酸エチル(EPA製剤)投与によるCVD抑制効果は,すでに日本人高コレステロール血症患者を対象としたJELIS試験で示されている。
REDUCE-ITでは,スタチン治療中にもかかわらずTG高値のCV高リスク患者において,スタチン併用下における高純度EPA製剤投与がCVリスクを低下させるという仮説を検証する。

一次エンドポイントは,CV死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中,冠血行再建術,不安定狭心症の複合。
コメント n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の心血管疾患(CVD)予防については,多くの基礎研究や,疫学研究からほぼ確立された認識ではあるが,エビデンスとしての証明は十分ではない。特にスタチンが一般化した現在,スタチンの効果を凌駕するエビデンスを示すことは困難となっている。我が国で行われたJELISという試験は,その中にあってEPAとスタチンの併用がスタチン単独療法よりもCVDの予防効果があることを示した数少ないエビデンスであるが,PROBE法というプラセボは用いているもののブラインド化していないRCTであり,一定の制約は否めない。また,JELISでは不安定狭心症を含むいわゆるソフトエンドポイントであり,ここに大きな差が生まれることによる結果であるという批判もある。
REDUCE-IT試験は,ブラインド化したRCTであり,8,179例の高リスク患者を対象とし,JELISと同様,スタチンとの併用がスタチン単独療法を有意に上回ってCVDを予防することが証明されたという点では十分評価できるものである。さらに,二次エンドポイントであるが,不安定狭心症や,冠動脈再建術などを除いたハードなエンドポイントでも有意に抑制効果を示したことは極めて意義深いことである。その理由として,対象患者のTG値が中央値216 mg/dLと比較的高い高リスク患者であったという点を挙げることができる。また,n-3 PUFAの投与量が4 g/日と大量であったこと(他の多くの試験では1 g/日,JELISでは1.8 g/日)が大きな意味を持つ可能性はある。このことが,スタチン治療後の残余リスクとしてのTGの低下効果を表出させたと考えることができるかもしれない。しかし,TGの14 mg/dLの低下から期待されるCVDの予防効果は6~8%であることを考えると,脂質のみの変化では説明できないものと思われる。また,その効果が2年目で表れていることから,n-3 PUFAの抗血栓効果というより,リポ蛋白としての変化(レムナントの減少や,small dense LDLの低下など)による可能性が考えられる。
今後,ガイドラインでもこのような試験結果を含めて表現の仕方として,CVD予防のために高リスク患者では4 g/日以上のn-3 PUFAが推奨されるということになるかもしれない。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照,並行群間,国際多施設共同(11か国,473施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間中央値は4.9年。
登録期間は,2011年11月~2016年8月。
対象患者 ◆対象患者
8,179例(EPA群4,089例 vs. プラセボ群4,090例)。≧45歳のCVD患者または1つ以上の追加的CVDリスクを有する≧50歳の糖尿病患者,かつ空腹時TG値150*~499 mg/dLおよびLDL-C値41~100 mg/dL,4週間以上にわたり安定的にスタチン治療を受けている者。
* 2013年5月にTGの選択基準値は,150mg/dLから200 mg/dLに修正された。
除外基準:重症心不全,進行性の重症肝疾患,HbA1c >10.0%,冠動脈インターベンションまたは外科手術予定,急性または慢性膵炎の既往,魚または甲殻類,EPA含有食物に対するアレルギーなど。
■患者背景:年齢中央値64歳,女性28.8%,白人約90%,BMI中央値30.8 kg/m²。
登録時のLDL-C,HDL-C,TGの各中央値:75.0 mg/dL,40.0 mg/dL,216.0 mg/dL。
登録時のezetimibe使用:6.4%。
登録時の糖尿病罹病:2型糖尿病 約58%,1型糖尿病 0.7%。
参加地域:北米,カナダ,オランダ,オーストラリア,ニュージーランド,南アフリカ(約71%),東欧(約26%),アジア太平洋(3.2%)。
治療法 CVリスク(CVD一次予防コホート:29.3%または二次予防コホート:70.7%),ezetimibe使用,参加者の居住地などで層別化した上で,EPA群(2 g×2回/日)またはプラセボ群にランダム化。
結果 [一次エンドポイント]
EPA群17.2% vs. プラセボ群22.0%[ハザード比(HR)0.75; 95%信頼区間(CI)0.68~0.83; P <0.001)。
NNTは,21(95%CI 15~33)。
[おもな二次エンドポイント:CV死,非致死的MI,非致死的脳卒中など]
EPA群11.2% vs. プラセボ群14.8%(HR 0.74; 95%CI 0.65~0.83; P <0.001)。NNTは,28(95%CI 20~47)。
[安全性と有害事象の発生]
心房細動(AF)および末梢浮腫の発生率は,プラセボ群にくらべ,EPA群で有意に高かった(AF:5.3% vs. 3.9%,末梢浮腫:6.5% vs. 5.0%)。一方,貧血および下痢,消化器症状はEPA群で有意に低かった(貧血:4.7% vs. 5.8%,下痢:9.0% vs. 11.1%,消化器症状:33.0% vs. 35.1%)。
また、重篤な出血イベントの発生率はEPA群2.7% vs. プラセボ群2.1%(P =0.06)だったが,致死的出血イベントは両群ともに発生しなかった。さらに,出血性脳卒中の発生率に有意差は示されなかった(0.3% vs. 0.2%,P =0.55)。
★結論★トリグリセリド高値のスタチン治療中患者において,高用量EPA製剤の追加投与はCV死を含む主要虚血イベントのリスクをプラセボにくらべ有意に低下させた。ClinicalTrials.gov No: NCT01492361.
文献
  • [main]
  • Bhatt DL,et al for the REDUCE-IT Investigators: Cardiovascular risk reduction with icosapent ethyl for hypertriglyceridemia. N Engl J Med. 2019; 380: 11-22. PubMed

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収載年月2019.01