循環器トライアルデータベース

AVERT
Apixaban for the Prevention of Venous Thromboembolism in High-Risk Ambulatory Cancer Patients

目的 がん患者の静脈血栓塞栓症(VTE)リスクは,非がん患者にくらべ高いことが知られている。VTEによるQOL低下,がん治療や余命への影響等を考えると,抗血栓薬によるVTE予防は有効と考えられる。
がん患者におけるDOACの血栓症予防効果をみた先行の小規模研究では,安全性および有効性が示唆された。
AVERT試験は,VTEリスクが中等度~高度の外来がん患者における,血栓症予防としてのapixaban投与の効果を検証する。

有効性の一次エンドポイントは,ランダム化後180日間に客観的に確認されたVTE(近位部深部静脈血栓症または肺塞栓症)。
主要な安全性エンドポイントは,大出血エピソード(ISTH基準)。
コメント 抗凝固薬は,出血合併症リスクを増加させる。DOACはコストが高い。安全性,経済性の欠点以上の有効性メリットのある症例群のみを投与対象とすべきである。悪性腫瘍は出血性疾患である。一度,出血した症例の生命予後は非出血例よりも不良である。また,悪性腫瘍における静脈血栓症予防の標準治療も確立されていない。本試験には静脈血栓リスクの高い欧米人には探索的意味があるかもしれないが,一般に,血栓リスクの低い日本人の血栓予防の参考にはならない。
大規模国際共同前向き観察研究を施行すると,長寿な日本人の死亡,血栓イベントは一貫して世界標準よりも低い(動脈硬化・血栓性疾患のREACH registry,非弁膜症心房細動のGARFIELD-AF registryなど)。ランダム化比較試験による「標準治療」は,抗血栓薬の領域では日本には及ばないことが確認された試験であった。(後藤
デザイン 無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照,多施設(カナダ国内の13施設) modified intention-to-treat(mITT)解析。
期間 追跡期間中央値183日間。
登録期間は,2014年2月~2018年4月。
対象患者 574例(mITT解析対象563例:apixaban群288例 vs. プラセボ群275例)。18歳以上で3か月以上の化学療法を開始予定の,新規がん患者または完全寛解または部分寛解後に既知のがんが進行した患者で,Khoranaスコア* ≧2の者。
* がん患者における血栓塞栓症リスクの評価法。がんの部位,血小板数などでスコアを加算。≧3点;高リスク,1~2点;中等度リスク,0点;低リスク。
除外基準:出血高リスク,血液凝固障害に関連する肝疾患,基底細胞がんまたは扁平上皮がん,急性白血病,骨髄増殖性腫瘍,幹細胞移植予定,余命6か月未満,糸球体濾過値量<30 mL/分/1.73m²,血小板数<50,000/mm³など。
■患者背景:平均年齢61歳,女性58.2%。
登録時のおもな原発がん:婦人科がん(25.8%),リンパ腫(25.3%),膵臓がん(13.6%)。
登録時の抗血小板薬または非ステロイド抗炎症薬使用率:22.8%。
治療法 apixaban群(2.5 mg×2回/日)またはプラセボ群に1:1の割合でランダム化。
結果 治療遵守率:apixaban群83.6% vs. プラセボ群84.1%。
治療期間中央値:157日間 vs. 155日間。
[有効性の一次エンドポイント]
apixaban群では,プラセボ群にくらべ有意に抑制された[apixaban群12例(4.2%)vs. プラセボ群28例(10.2%);ハザード比(HR)0.41; 95%信頼区間(CI)0.26~0.65; P <0.001)。
治療期間中も,発生率はプラセボ群にくらべapixaban群で低下した[3例(1.0%)vs. 20例(7.3%);HR 0.14; 95%CI 0.05~0.42]。

[主要な安全性エンドポイント]
プラセボ群にくらべapixaban群で有意に高かった[apixaban群10例(3.5%)vs. プラセボ群5例(1.8%);HR 2.00; 95%CI 1.01~3.95; P =0.046]が,治療期間中は有意差は示されなかった[6例(2.1%)vs. 3例(1.1%);HR 1.89; 95%CI 0.39~9.24]。

[その他]
・有害事象の発生:apixaban群131例 vs. プラセボ群127例(うちapixaban群1例,プラセボ群2例が試
験関連)。
・死亡:apixaban群35例(12.2%)vs. プラセボ群27例(9.8%)。このうち54例(87%)は,がんまたはがんの進行に関連。全死亡は,群間で有意差は示されなかった。
★結論★中等度~高度のVTEリスクを有し,化学療法を開始した外来がん患者において,apixaban投与はプラセボにくらべVTEの発生を有意に抑制した。一方,大出血エピソード発生率は,プラセボにくらべapixaban投与で増加した。ClinicalTrials.gov No: NCT02048865.
文献
  • [main]
  • Carrier M,et al for the AVERT Investigators: Apixaban to prevent venous thromboembolism in patients with cancer. N Engl J Med. 2018 Dec 4. [Epub ahead of print] PubMed

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収載年月2019.01