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RACE 3
Routine versus Aggressive risk factor driven upstream rhythm Control for prevention of Early atrial fibrillation in heart failure

目的 高血圧,心不全(HF),冠動脈疾患などは心房細動(AF)の誘因となる。早期AF患者において,これら基礎疾患に対する治療をリズムコントロール(洞調律維持)へ追加することにより,AF管理上重要な心血管リスクの低減のみならず,AF発生や再発予防,心房の構造的リモデリング抑制にもよい影響をもたらす可能性がある。
RACE 3試験では,HFを合併した早期の持続性AF患者において,基礎疾患に対する包括的な標的治療をリズムコントロールに追加することにより洞調律維持が改善されるという仮説を検証する。

一次エンドポイントは,1年後に実施する7日間のホルター心電図での洞調律維持。
コメント 心房細動発生には不応期短縮,伝導遅延が必要であり,抗不整脈薬によってこれらの電気生理学的性質を修飾して心房細動を抑制するというのが,downstream治療である。一方,これらの電気生理学的性質の基盤となる液性因子,炎症,線維化などを修飾して心房細動を抑制するのがupstream治療である。ACE阻害薬やARBによる高血圧治療試験の事後解析で,RAS系抑制薬は心房細動の発生を抑制することが期待され,前向きの無作為比較試験がいくつか行われたが,否定的な結果に終始した。一方で,運動療法は,心房細動を抑制することが次第に明らかにされてきている。RACE 3では,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,スタチン,ACE阻害薬/ARB,心臓リハビリテーション(運動処方など)を包括した上乗せ治療群は,標準的なリズムコントロール群に比べて,①血圧,脂質,体重,BNPの低下,および②1年後の洞調律例が多いという結果を示した。心不全を合併した心房細動例では,ACE阻害薬/ARBは心房細動を抑制することが示されており,軽度~中等度の心不全を伴う例において心房細動を抑制した結果は予想されるところである。4つの追加治療のうちのどれが洞調律維持に有効であったのかに関しては本研究では明らかにされていない(一つ一つでは無効で,併用が有効であった可能性もある)。1年後の洞調律維持率は75% 対 63%と,上乗せ治療の効果はそれほど強いものではなく,この効果が将来長期間にわたって持続するのか否かに関しては情報がない。また,心不全を伴わない心房細動例でも4つの追加治療が洞調律維持に有効であるのかに関しては今後の課題である。いずれにしても,否定されたかの感があったupstream治療ではあるが,併用することにより心房細動抑制に有効である可能性が示された点は興味深い。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(オランダおよび英国の17施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間は,1年。
登録期間は,2009年5月~2015年11月。
対象患者 245例。早期の有症候性持続性AF(AF罹病歴5年未満;AF持続が7日超~6か月未満;カルディオバージョン施行歴1回以下)かつ早期の心不全(罹病歴1年未満,HFpEF* またはHFrEF**)合併患者。
* LVEF ≧45%,NYHA心機能分類II~III度,心エコーパラメータおよび/またはNT-proBNP値上昇。
** LVEF <45%,NYHA心機能分類I~III度。
除外基準:LVEF <25%,NYHA心機能分類Ⅳ度,左房径 >50 mm,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)服用,術後または急性疾患に伴うAF。
■患者背景:平均年齢(標的治療追加群64歳 vs. 標準リズムコントロール群65歳),男性(両群とも79%),BMI中央値(29 kg/m² vs. 28 kg/m²),AF罹病歴の中央値(3か月 vs. 2か月),AF持続中央値(ともに2か月),心不全罹病期間中央値(ともに2か月),LVEF<45%(ともに29%),安静時心拍数の中央値(87拍/分 vs. 88拍/分),NYHA心機能分類 I度(24% vs. 19%)/II度(67% vs. 68%)/III度(9% vs. 13%),NT-proBNP中央値(1,057 vs. 1,039 pg/mL)。
現行ガイドラインに準じた治療(AF:カルディオバージョンおよび抗不整脈薬,HF:症状に応じた薬物療法)と6週間ごとの心電図検査
おもな症状:動悸(39% vs. 44%),呼吸困難(76% vs. 81%),易疲労感(62% vs. 57%)。
併存疾患:高血圧症(55% vs. 62%),糖尿病(8% vs. 13%),冠動脈疾患(16% vs. 11%),虚血性血栓塞栓症(5% vs. 3%),慢性閉塞性肺疾患(8% vs. 9%)。
登録時治療状況:β遮断薬(両群とも86%),ジゴキシン(27% vs. 25%),ACE阻害薬(32% vs. 38%),ARB(20% vs. 22%),MRA(1% vs. 2%),スタチン(34% vs. 33%),利尿薬(43% vs. 38%),抗凝固薬(97% vs. 98%)。
治療法 標的治療追加群(119例)と標準リズムコントロール群(126例)にランダム化。
両群ともAFおよびHFに対する原因治療を受け,ランダム化3週間後にカルディオバージョンを予定。
標的治療追加群:上記に加え,以下の(i)~(iv)から成る包括的治療を開始。さらに,初回カルディオバージョン後3か月ごとの受診,6週間ごとの心電図検査を実施。
(i)MRA,(ii)スタチン,(iii)ACE阻害薬および/またはARB,(iv)心臓リハビリテーション(運動処方,食事制限,服薬アドヒアランスや運動継続,食事に関する6週間ごとのカウンセリング実施)。
1年後に,ホルター心電図検査(7日間),24時間蓄尿検査,心エコー検査,運動テスト,QOL評価を実施。
結果 標的治療の4項目すべてを継続した患者は58%。
[一次エンドポイント]
1年後に洞調律が確認されたのは,標的治療追加群89例/119例(75%)vs. 標準リズムコントロール群79例/126例(63%)であった[オッズ比(OR)1.765,95%信頼区間(CI)1.021~3.051,両側P =0.042]。
[AF危険因子の1年後変化率]
収縮期血圧(標的治療追加群-3.28% vs. 標準リズムコントロール群2.05%),拡張期血圧(-8.95% vs. -2.31%),BMI(0.12% vs. 1.37%),体重(-0.13% vs. 1.35%),NT-proBNP値(-67.25% vs. -37.26%),総コレステロール(-13.21% vs. 1.65%),LDL-C値(-18.37% vs. 0.40%)。
AFの危険因子である血圧,NT-proBNP値,体重,および脂質プロファイルは,標準リズムコントロール群にくらべ,標的治療追加群で有意に改善された。
[その他]
MRAおよびスタチン使用率は標的治療追加群で高かった(MRA:85% vs. 4%,スタチン:93% vs. 48%; P <0.001)一方,ACE阻害薬およびARB使用率に差は認められなかった(87% vs. 76%,P =0.094)。
★結論★軽度~中等度の心不全を合併した早期の持続性AF患者において,基礎疾患に対する包括的標的治療の追加は,標準リズムコントロール単独にくらべ洞調律維持を改善する。
ClinicalTrials.gov No: NCT00877643
文献
  • [main]
  • Rienstra M,et al for the RACE 3 Investigators: Targeted therapy of underlying conditions improves sinus rhythm maintenance in patients with persistent atrial fibrillation: results of the RACE 3 trial. Eur Heart J. 2018; 39: 2987-96. PubMed

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収載年月2018.11