循環器トライアルデータベース

CAMELLIA-TIMI 61
Cardiovascular and Metabolic Effects of Lorcaserin in Overweight and Obese Patients –Thrombolysis in Myocardial Infarction 61

目的 lorcaserinは,選択的なセロトニン2C受容体への刺激により食欲を抑制,満腹感を促す作用をもつ。同薬剤は食事および運動療法の補助薬剤としてFDAに承認され,米国をはじめとする数か国で上市されている。しかし,肥満症および過体重の体重管理における有効性は認められているものの,心血管(CV)に対する安全性および有効性の評価は確定されていない。
CAMELLIA-TIMI 61試験は,肥満症または過体重の心血管疾患(CVD)およびその高リスク集団を対象としてlorcaserinを用いてCVイベントを安全性という観点から検証したのち,有効性を検証した多施設共同大規模ランダム化試験である。

安全性の一次エンドポイントは,主要有害CVイベント[MACE:CV死,心筋梗塞(MI),脳卒中の複合]。
有効性の一次エンドポイント(extended MACE)は,MACE,不安定狭心症または心不全による入院,冠血行再建の複合。
コメント メタボリックシンドロームが動脈硬化性疾患の危険因子であり,動脈硬化性疾患予防のために肥満対策は重要なポイントとなる。しかし,これまでに肥満症の治療により動脈硬化性疾患が予防できたとする大規模臨床試験はほとんどない。大きな理由として,安全性が十分に確保された肥満症の治療薬がないということが挙げられる。これまでに,肥満症治療薬であるセロトニンアゴニストでは,肺高血圧症や心臓弁膜症などの副作用のため,長期的な治療薬には用いることができていない。今回のlorcaserinは,これまでの中規模な臨床試験で体重減少効果は認められたが,大きな安全性の問題は生じないことが確認されていた。今回の試験は,本剤を用いて,動脈硬化の高リスク群を対象とした心血管病に焦点を絞った12,000例という大規模臨床試験である。体重の減少は持続的に認められたが,我々が期待する心血管病に関する有効性は十分には示せなかった。しかし,肺高血圧症や弁膜症などの悪化は認められず,他の大きな副作用も認められなかった。本試験の問題点は,心血管病予防に関しては,非劣性試験に当たるものであり,優越性を示す試験としてはもう少し長期の試験が組まれるべきであったように思われる点である。
少なくとも,lorcaserinの安全性はほぼ示されているので,今後,本剤が体重のコントロール薬として広く使われるようになると,体重減少に伴うメタボリックシンドロームに関する危険因子(糖尿病,脂質異常症,高血圧など)に対する影響や,長期間の使用での心血管病に対する効果もみることができるものと期待したい。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照,多施設(8か国,473施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間中央値は3.3年。
登録期間は,2014年1月~2015年11月。
対象患者 12,000例。肥満症(BMI ≧30 kg/m²)またはBMI ≧27 kg/m²の過体重で,アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)または複数のCVリスク因子を有する者。
■患者背景:平均年齢:64歳,男性:64.2%,体重中央値:102.0 kg,BMI中央値:35 kg/m²。
心血管病態:複数のCV危険因子保有(lorcaserin群25.2% vs. プラセボ群25.5%),CVD既往(74.8% vs. 74.5%),冠動脈疾患(68.3% vs. 67.6%),MI(39.6% vs. 40.0%),冠血行再建(61.0% vs. 60.6%),末梢動脈疾患(5.7% vs. 5.3%),脳血管疾患(9.1% vs. 9.7%)。
併存疾患:糖尿病(56.8%),高血圧症(90.4%),脂質異常症(93.6%),慢性腎臓病(19.0%)。
治療状況:セロトニン作動性薬剤(22.5% vs. 23.0%),aspirin(75.5% vs. 75.3%),β遮断薬(63.4% vs. 62.4%),ACE阻害薬またはARB(74.6% vs. 75.5%),スタチン(85.4% vs. 85.5%),ezetimibe(7.9% vs. 7.8%)。
参加地域:北米(81.4 vs. 81.8%),欧州(8.3 vs. 8.1%),中米および南米(3.0 vs. 3.2%),アジア太平洋(7.3 vs. 6.9%)。
治療法 CVD罹病または複数のCV危険因子保有のみのいずれかに患者を層別し,1:1の割合で,lorcaserin群(10mg×2回/日)またはプラセボ群にランダム化。食事,運動を含む行動療法による体重管理プログラムへの参加を全患者に推奨,また,登録栄養士による無制限の電話相談を設けた。
サブ解析として,心エコー検査による肺高血圧症またはFDA定義*による弁膜症の評価を事前に設定。
* 軽度の大動脈弁逆流または増悪/中等度の僧帽弁逆流または増悪。
結果 [安全性の一次エンドポイント]
MACE発生:lorcaserin群364例(6.1%,年率2.0%)vs. プラセボ群369例(6.2%,年率2.1%)。
ハザード比(HR)0.99; 95%信頼区間(CI)0.85~1.14,非劣性P <0.001。
[有効性の一次エンドポイント]
extended MACE発生:lorcaserin群707(11.8%,年率4.1%)vs. プラセボ群727(12.1%,年率4.2%)。
HR 0.97; 95%CI 0.87~1.07,優越性P =0.55。
[有効性の二次エンドポイント]
ベースライン時に糖尿病前症であった者の糖尿病発症率:lorcaserin群8.5%(年率3.1%) vs. 10.3%(年率3.8%)。
[体重に対する効果]
最小二乗法によるベースライン~1年後の体重変化量の平均:lorcaserin群-4.2kg vs. プラセボ群-1.4kg(群間差2.8 kg,P <0.001)。
5%以上の体重減少:38.7% vs. 17.4%[オッズ比(OR)3.01; 95%CI 2.74~3.30,P <0.001]。10%以上の体重減少:14.6% vs. 4.8%(OR 3.40; 95%CI 2.92~3.95,P <0.001)。群間差は1年前後を最大とし,40か月後も有意に維持された。
[その他のCV危険因子に対する効果]
1年後のCVおよび代謝疾患危険因子(血圧,脂質,心拍,血糖)は,プラセボ群にくらべlorcaserin群でわずかに改善した。
[lorcaserin群における有害事象発生率]
めまい(1.33%),易疲労感(1.12%),頭痛(0.62%),悪心(0.60%) ,下痢(0.45%)。
[その他:サブ解析]
対象は,ベースラインおよび1年後に心エコー所見のデータが入手できた3,270例。
FDA定義に基づく弁膜症の新規発症または増悪:lorcaserin群1.8% vs.プラセボ群1.3%(P =0.24)。
肺高血圧症の新規発症または増悪:1.6% vs. 1.0%(P =0.26)。
★結論★過体重または肥満症のCVイベント高リスク集団において,食事療法や運動療法など生活習慣介入へのlorcaserinの追加は,プラセボにくらべ,主要なCVイベントの増加を伴わず持続的な体重減少をもたらした。
ClinicalTrials.gov No: NCT02019264
文献
  • [main]
  • Bohula EA, et al for the CAMELLIA-TIMI 61 Steering Committee and Investigators: Cardiovascular Safety of Lorcaserin in Overweight or Obese Patients. N Engl J Med. 2018; 379: 1107-17. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2018.11