循環器トライアルデータベース

TIM-HF2
Telemedical Interventional Management in Heart Failure II

目的 慢性心不全(CHF)患者は遠隔患者管理アプローチによる恩恵を受ける可能性が高いものの,先行研究による検証では,対象患者集団や介入期間,通信環境などが試験ごとに異なることから見解の一致をみていない。
外来CHF患者に対する遠隔医療の効果を検証したTIM-HF試験のサブグループ解析では,遠隔患者管理は特定の心不全(HF)患者集団において有効である可能性が示唆された。このことから,TIM-HF2試験では,対象とする患者集団を明確に定義し,体系化された遠隔管理による包括的なアプローチの効果を検証する。

一次エンドポイントは,追跡期間中の心血管(CV)要因による予想外の入院または全死亡による喪失日数の割合。
コメント TIM-HF2試験は,同研究グループ(ドイツ)が2009年に実施した遠隔医療による心不全患者のアウトカム試験(TIM-HF試験)を参考にして実施された大規模RCT試験である。TIM-HF試験のサブ解析結果を参考に,登録する患者の左室駆出率の制約条件を緩和する一方で,うつ状態(大うつ,PHQ-9スコア >9),血液透析患者を除外して実施された。患者は毎日,体重,血圧,SpO2,心電図を携帯端末から遠隔医療センターに送信し,あらかじめ設定されたアルゴリズムに沿ってリスク評価をして患者に医療アドバイスが返信されるシステムであり,24時間体制で専門ナース・専任医師が患者の相談にも対応する。また,3か月ごとにかかりつけ医でのバイオマーカー(NT-proBNP,MR-proADM)の結果も転送され,相互介入がなされる。今回の試験では,遠隔医療による全死亡率の抑制と心血管イベント入院に基づく喪失期間の減少が得られ,遠隔医療の有用性が示された。また,サブ解析から,①HFrEF患者およびNT-proBNP高値患者に遠隔医療の有用性が示唆される一方で,②都市部と地方で差がないこと,③患者のQOL(MLHFQ global score)には有意な差がみられなかったことは,今後の遠隔医療のメリットを考える上で,大いに参考になる点である。今回の試験結果から,遠隔医療の有用性を示すためには,医療者側と患者側のかなり濃厚な相互連携が必要であることがうかがえる。(
デザイン 無作為割付け,非盲検(ランダム化は非通知),並行群間,多施設(ドイツ内の大学病院,地域病院,心臓専門施設,一般診療所など200施設),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間は,最長393日。
登録期間は,2013年8月~2017年5月。
対象患者 1,571例。ランダム化前12か月以内の心不全(HF)による入院歴,NYHA心機能分類II~III度,LVEF ≦45%(またはLVEF >45%で経口利尿薬が処方されている患者)。
おもな除外基準:大うつ病(PHQ-9 スコア >9),血液透析,ランダム化前7日以内の入院歴など。
■患者背景:平均年齢 70歳,男性 70%,NYHA心機能分類II度(遠隔管理群 52% vs. 標準治療群 51%)/III(両群とも47%),BMI(両群とも30 kg/m²),NT-proBNP中央値(1,407 vs. 1,488 pg/mL)。
HFの主因:虚血(39% vs. 42%),高血圧(17% vs. 19%),拡張型心筋症(23% vs. 22%)。
CV危険因子の保有:現喫煙(10% vs. 7%),脂質異常症(55% vs. 54%),糖尿病(45% vs. 46%)
治療状況:ACE阻害薬またはARB(82% vs. 83%),β遮断薬(両群とも92%),抗アルドステロン薬(58% vs. 52%),ループ利尿薬(94% vs. 93%),脂質低下薬(60% vs. 59%)。
治療法 遠隔管理群(遠隔管理+現行ガイドラインに準じたHF標準治療:796例)と標準治療単独群(775例)にランダム化。
遠隔管理群:患者に医療用タブレット端末(Physio-GatePG 1000),緊急時連絡用の携帯電話,心電計,血圧計,体重計,酸素分圧測定器を支給。これらの機器で測定したデータおよび自己評価による健康状態のデータをタブレットで収集,携帯電話網を利用して遠隔医療センターに毎日送信。支給時に看護師が使用法の説明と心不全教育を実施。
送信されたデータを基に患者個々の状態に応じた医師主導の医療支援および管理を24時間体制で実施し,月1回の電話調査で患者の状態や臨床兆候,アドヒアランスを評価し,心不全教育を実施。問題があればセンターの看護師と患者間での話し合いがもたれた。また,遠隔医療解析ソフトにより,スタッフ-患者-主治医-循環器専門医の連携による管理が可能となった。
患者は,追跡期間中,3か月ごとに主治医または地域の心臓専門医を定期的に受診。
結果 遠隔管理群のデータ送信遵守率:97%(743例)。
一次および二次エンドポイントの解析対象は,遠隔管理群765例 vs. 標準治療群773例。
[一次エンドポイント]
喪失日数の割合の重み付け平均値:遠隔管理群4.88%[95%信頼区間(CI)4.55~5.23]vs. 標準治療群6.64%(95%CI 6.19~7.13),重み付け平均値の比0.80(95%CI 0.65~1.00,P =0.0460)。
年間喪失日数の重み付け平均値: 17.8日/年(95%CI 16.6~19.1) vs. 24.2日/年(22.6~26.0)。
[主要二次エンドポイント:追跡期間中の全死亡およびCV死]
全死亡率:7.86/100人・年(95%CI 6.14~10.10)vs. 11.34/人・年(9.21~13.95),ハザード比(HR)0.70(95%CI 0.50~0.96); P =0.0280。
CV死:両群に有意差は示されなかった[39例(5%)vs. 59例(8%),HR 0.67,95%CI 0.45~1.01; P =0.0560)。
[その他]
事前に設定された一次エンドポイントのサブグループ解析において,標準治療群に対する遠隔管理群の優位性に都市部,郊外の居住地域による差は示されなかった[重み付け平均値:〈都市部〉遠隔管理群5.06% vs. 標準治療群7.05%,〈郊外〉4.76% vs. 6.35%]。
また,患者QOLの指標としたミネソタ心不全質問票(MLHFQ global score)に有意差は示されなかった。
★結論★明確に定義された心不全患者集団に対する,体系化された包括的遠隔患者管理は,標準治療にくらべ心血管要因による入院,全死亡による喪失日数を低減しうる。
ClinicalTrials.gov No: NCT01878630
文献
  • [main]
  • Koehler F, et al: Efficacy of telemedical interventional ,management in patients with heart failure(TIM-HF2): a randomised, controlled, parallel-group, unmasked trial. Lancet. 2018; 392: 1047-57. PubMed

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収載年月2018.11