循環器トライアルデータベース

BASKET-SMALL 2
Basel Kosten Effektivitäts Trial-Drug-Coated Balloons versus Drug-eluting Stents in Small Vessel Interventions 2

目的 薬剤コーティングバルーン(DCB)は,PCI施行後のステント内再狭窄に対する治療法として確立されている一方,血管径の細い小冠動脈(small coronary artery)に対するPCIの有望な治療法としても注目を集めている。しかし,DCBの安全性および有効性を,現在の治療の主流である薬剤溶出ステント(DES)と比較した大規模臨床試験は少ない。
BASKET-SMALL 2は,参照血管径 <3 mmの固有冠動脈(native coronary artery)に新規病変を生じたPCI施行予定患者における,DCBのDESに対する非劣性を検証した多施設共同ランダム化試験。

一次エンドポイントは,12か月後の主要有害心イベント[MACE:心臓死,非致死的心筋梗塞(MI),標的血管再血行再建の複合]。
コメント 局所に永久に残存するステント(DES)留置には,たとえ薬剤やステントデザイン,ポリマーが進化したとしてもぬぐい去れない,いくつかの問題がつきまとう。ステント血栓症しかり,多剤抗血小板薬併用による出血の問題しかり,さらには超遠隔期に炎症・neoatherosclerosis・malappositionなどによるlate stent failureの可能性が指摘され,経験もする。一方,バルーンによる(前)拡張の結果はひとえにプラークの性状に依存し,拡張不良・大きな冠動脈解離・リコイルが生じる病変にステントは欠かせない。ましてや獲得径が少ない小径冠動脈の病変に対しては,どうしてもDESに頼ってしまう。
一方,DCB(drug-coating balloon)でもDESに近い再狭窄抑制作用が報告されてきた。さらに軽症解離の修復効果,陽性リモデリング(拡張直後より内腔が拡がる),短いDAPT期間等の利点も示され,小径冠動脈新規病変に対するDCB治療は日本でも保険診療として認可されている。しかし,臨床試験はこれまで拍子抜けするほど少なかった。
BASKET-SMALL 2 試験は,<3 mmのsmall vesselをDCB vs. DESで割り付けたall comer試験である。これまでで最大の無作為試験であることのほかに,対象として第二世代DES (Xience stent)が多く含まれているのも注目に値する。結果としては,1年間のMACE(心臓死・非致死性心筋梗塞・TVR)に関してDESに対するDCBの非劣性が示された。また,症例数が少ないために有意差がついていないが,心臓死はDES群で,非致死的心筋梗塞・大出血はDCB群で少ない傾向にあった。バルーンによる前拡張の段階で14%の症例が除外されたが,これまでの小規模研究でもbail-out stent率は5~36%であった。
我々の前に小径冠動脈病変への2つ目のオプションが示されたが,DCBにはまだまだ懐疑的にならざるを得ない。なぜなら固有冠動脈病変への長期成績がほとんど存在しないからである。実際,DESのステント内再狭窄に対しては,late catch-upも報告されている。また,同じpaclitaxel-coatingでも製品による成績のばらつきが大きいこと,最近ではsirolimus-coating balloonが検討されていることなどにも注意が必要である。
もし長期的な安全性・有効性が示されたら,加えて適切な病変選択が明確になれば…。DESにつきまとう宿命を払拭し,DCBはこの領域のパラダイムシフトになるかもしれない。さらに個人的には,≧3 mmの冠動脈にも適応が広がらないものか,とも思う。(中野
デザイン 無作為割付け,非盲検,多施設。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は,2012年4月~2017年2月。
対象患者 758例。急性冠症候群(ACS),安定狭心症,または無症候性の虚血症状を呈し,血管造影所見で<2~3 mmの固有冠動脈に新規病変を認めるPCI適応患者を対象とし,良好な前拡張(NHLBI grade C~Fの重度解離がない,TIMI II以下の血流遅延がない,残存狭窄≦30 %)が得られた時点で登録とした。
おもな除外基準:同一冠動脈で参照血管径≧3 mmの病変に同時PCIを施行する場合,ステント内再狭窄など。
■患者背景:平均年齢 DCB群67.2歳vs. DES群68.4歳,男性 77 % vs. 70 %,現喫煙 22 % vs. 20 %,BMI 28.4 kg/m² vs. 28.2 kg/m²
既往:高血圧症 85% vs. 89%,高コレステロール血症 69% vs. 70%,糖尿病 32% vs. 35%,心筋梗塞 42% vs. 35%,PCI歴:62% vs. 64%。
現病:安定狭心症 70% vs. 73%,ST上昇型心筋梗塞(STEMI)3% vs. 1%,非STEMI 14% vs. 15%。
血管造影所見:多枝病変 82% vs. 76%,分岐部病変 6% vs. 8%,平均手技成功率 96% vs. 98%,平均DCB数1.68,平均ステント数 1.26。
治療法 全例にPCI施行前に抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を実施。
DCB群(382例):paclitaxel+造影剤iopromideコーティングバルーン(SeQuent Please)による血管形成術。
DES群(376例):第2世代DESによるステント留置[当初はpaclitaxel溶出ステント(Taxus Element)を用いたが,途中よりeverolimus溶出ステント(Xience)に変更]。
PCI後,現行のガイドラインに準じ,安定患者を対象にDAPTをDCB群4週間,DES群6か月間(ACS患者は12か月間)実施。
非劣性はper-protocol集団を対象とし,Wilsonスコア(連続修正)法で評価[非劣性マージンは,MACE絶対リスク差の両側95%信頼区間(CI)の上限 <4 %(0.04)とした]。
結果 [非劣性]
per-protocol集団におけるMACE絶対リスク差の95% CI上限値が非劣性マージンを下回ったことより,DCBのDESに対する非劣性が示された[一次エンドポイントの発生数:DCB群27/359例(8 %)vs. DES群28/370例(8 %),絶対リスク差:0.0005[95% CI -0.038~0.039, P =0.0217]。
[一次エンドポイント]
full-analysis集団を対象とした12か月後のMACE累積発生率: 7.3% vs. 7.5%[ハザード比(HR)0.97; 95% CI 0.58~1.64, P =0.9180]。
[その他]
一次エンドポイントの項目別発生率には群間差は示されなかった:心臓死[12例(3.1%)vs. 5例(1.3%),HR 2.33; 95% CI 0.82~6.61, P =0.1131],非致死的MI(1.6% vs. 3.5%, HR 0.46; 95% CI 0.17~1.20, P =0.1123),標的血管再血行再建(3.4% vs. 4.5%, HR 0.75; 95% CI 0.36~1.55, P =0.4375)。
また,ARC定義に基づくdefinite/probableステント血栓症(DCB群においても,主に冠血管の別の部位にステントが留置された)にも有意差は示されず(0.79 % vs. 1.60 %, HR 0.73; 0.16~3.26),BARC出血基準3~5の大出血の発生率はともに低かった(1.1% vs. 2.4%, HR 0.45; 95% CI 0.14~1.46)。
DCB,DESの正味の臨床上のベネフィット(net clinical benefit)は類似していた(7.9 % vs. 9.6 %, HR 0.81; 95% CI 0.50~1.32)。いずれのサブグループ解析においても群間に大きな効果の違いは示されなかった。
★結論★良好な前拡張が得られた<3mmの小径冠動脈の新規病変に対するPCIにおいて,施行12か月後の主要有害心イベントに関しては DCBのDESに対する非劣性が示された。
ClinicalTrials.gov No: NCT01574534.
文献
  • [main]
  • Jeger RV, et al for the BASKET-SMALL 2 Investigators: Drug-coated balloons for small coronary disease (BASKET-SMALL 2): an open-label randomised non-inferiority trial. Lancet. 2018; 392: 849-56. PubMed

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収載年月2018.10