循環器トライアルデータベース

COMMANDER HF
A Study to Assess the Effectiveness and Safety of Rivaroxaban in Reducing the Risk of Death, Myocardial Infarction, or Stroke in Participants with Heart Failure and Coronary Artery Disease Following an Episode of Decompensated Heart Failure

目的 慢性心不全増悪後の,特に最初の数か月は再入院率および死亡率が高い。心不全の増悪にはトロンビン産生に関わる凝固系活性の関連が考えられるが,左室駆出率が低下した心不全患者におけるwarfarinの効果はこれまでに示されていない。急性増悪から間もない,冠動脈疾患(CAD)を有する非心房細動(AF)の左室駆出率が低下した慢性心不全患者において,トロンビン産生抑制作用をもつ経口直接Xa阻害薬rivaroxaban低用量を標準治療に追加した場合の死亡および心血管リスク低減効果を検証する。

有効性の一次エンドポイントは,全死亡,心筋梗塞(MI),脳卒中の複合項目。
安全性の一次エンドポイントは,致死性出血および不可逆的な障害につながる可能性のある重要部位での出血。
コメント 心房細動の認められない虚血性心不全患者(LVEF≦40%)を対象に,少量のDOAC(rivaroxaban 2.5mg×2回/日)の効果をみた試験であるが,一次エンドポイント(全死亡,心筋梗塞,脳卒中の複合)にプラセボと差がなかった。これまでの報告では,ワルファリンの有効性はみられていないが,ATLAS ACS 2-TIMI 51 試験やCOMPASS試験のサブ解析で,心不全合併例に少量のDOACの有効性が示唆されていた。今回の結果では,期待された有効性は認められず,虚血性心不全において,トロンビン誘発性の炎症や血管内皮障害が主役を果たしているとの仮説は否定されたと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(32か国,628施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値は,21.1か月。
登録期間は,2013年9月~2017年10月。
対象患者 5,022例。慢性心不全罹病期間3か月以上,LVEF≦40%,直近21日以内に急性増悪により治療を受けた,CADを有する非AFの慢性心不全患者。途中,プロトコールの修正により基準を追加[ランダム化前の血中BNPが ≧200 pg/mLまたはNT-proBNP が≧800 pg/mL。1,155例(23.0%)組み入れ後に適用]。
除外基準:出血高リスク,AFまたは抗凝固薬の長期服用が必要な症例(急性MI,外科的治療または経皮的冠動脈インターベンション施行),eGFR<20 mL/分/1.73 m²,最近の脳卒中または頭蓋内出血既往,CAD以外の原因による心不全。
■患者背景:平均年齢:rivaroxaban群66.5歳vs. プラセボ群66.3歳,女性:22.0% vs. 23.8%,白人: 82.3% vs. 82.1%,BMI:27.6 kg/m² vs. 27.8 kg/m²,EF:35% vs. 34%。
NYHA分類:Ⅱ度(44.8% vs. 43.6%),Ⅲ度(48.2% vs. 49.9%)。
既往:MI(76.2% vs. 75.2%),脳卒中(8.3% vs. 9.7%),糖尿病(40.8% vs. 40.9%),高血圧(75.7% vs. 75.0%)。
心不全治療状況:利尿薬(99.5%),ACE阻害薬またはARB(92.8%),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(76.5%),β遮断薬(92.4%)。
抗血小板薬使用状況:aspirin(93.1%),2剤併用療法(34.8%)。
参加地域:東欧(64.2%),北米(3.0%),アジア太平洋(14.6%),南米(9.1%),西欧または南アフリカ(9.1% vs. 9.2%)。
治療法 ベースライン時点で全患者は担当医より診療ガイドラインに基づく心不全治療,CAD治療を受けており,その標準治療に rivaroxaban 2.5mg×2回/日またはプラセボを追加する群にランダム化(rivaroxaban群2,507例 vs. プラセボ群2,515例)。ランダム化後,4週目,12週目,その後は12週ごとに安全性評価を実施し,イベント発生の有無を確認。
結果 [有効性の一次エンドポイント:全死亡+MI+脳卒中の複合]
両群間に有意差は示されなかった[rivaroxaban群626例(25.0%)vs. プラセボ群658例(26.2%),ハザード比(HR)0.94; 95%信頼区間 0.84~1.05, P =0.27]。
項目ごとの発生率:全死亡 21.8% vs. 22.1%(HR 0.98; 0.87~1.10),非致死性MI 3.9% vs. 4.7%(HR 0.83; 0.63~1.08),非致死性脳卒中 2.0% vs. 3.0%(HR 0.66; 0.47~0.95)。
[有効性の二次エンドポイント]
①心血管死+心不全増悪による再入院の複合
rivaroxaban群932例(37.2%)vs. 929例(36.9%), HR 0.99; 0.91~1.09。
②全死亡+心不全増悪による再入院の複合
993例(39.6%)vs. 973例(38.7%), HR 1.01; 0.92~1.10。
[安全性]
両群間に有意差は示されなかった[rivaroxaban群18例(0.7%)vs. プラセボ群23例(0.9%), HR 0.80; 0.43~1.49, P =0.48]。
不可逆的な障害につながる可能性のある重要部位での出血発生[rivaroxaban群13例(0.5%)vs. プラセボ群20例(0.8%), HR 0.67; 0.33~1.34, P =0.25 ]。
ISTH(International Society on Thrombosis and Haemostasis)基準による大出血リスク[rivaroxaban群3.3% vs. プラセボ群2.0%, HR 1.68; 1.18~2.39, P =0.003]。
入院が必要となる出血イベント[rivaroxaban群2.4% vs. プラセボ群1.9%, HR 1.30; 0.89~1.90, P =0.17]。
重篤な有害事象は,rivaroxaban群381例(15.2%) vs. プラセボ群358例(14.3%)。
★結論★直近で慢性心不全が増悪したCADを有する非AFの左室駆出率低下例において,ガイドラインに基づいた標準治療への低用量rivaroxaban追加は,プラセボにくらべ,全死亡,MI,脳卒中のリスク低減との関連を示さず,心不全増悪による再入院についても影響を与えなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT01877915.
文献
  • [main]
  • Zannad F, et al for the COMMANDER HF Investigators: Rivaroxaban in Patients with Heart Failure, Sinus Rhythm, and Coronary Disease. N Engl J Med. 2018 Aug 27. [Epub ahead of print] PubMed

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収載年月2018.09