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PROACT
Prospective Randomized On-X Anticoagulation Clinical Trial

目的 大動脈弁置換術(AVR)においては外科的置換術(SAVR)が依然として主流である。機械弁の耐久性も向上しているものの,機械弁置換術(mAVR)後には抗凝固療法が必要となるため生体弁使用が増加傾向にあるが,mAVR後の抗凝固療法による負担軽減のためのさまざまなアプローチも検討されている。
PROACT試験は,FDAのIDE(investigational device exemption:医療機器適用免除)の下,On-X弁(On-X Life Technologies社)を使用して実施。mAVR後の抗血栓療法[血栓塞栓症(TE)高リスク患者での低用量warfarin(+aspirin)治療,低リスク患者での抗血小板薬2剤併用(DAPT:aspirin+clopidogrel)治療]のTEおよび出血性合併症に対する安全性をwarfarin標準治療と比較して検証する非劣性試験。                                                  

一次エンドポイントは,大・小出血,TEイベント,弁血栓の複合エンドポイント。
コメント warfarinは個別最適化が可能,かつ液相のみならず細胞上での凝固系活性化を効率的に阻害する優れた薬剤である。warfarinのコントロールの難しい症例も少数いるが,warfarinに慣れた医師によれば出血と血栓の個別最適化を期待できる。しかし,投与量の調節など初心者には難しい。一律介入可能な抗血小板薬,出血を回避するためにちょっと弱めにコントロールしたwarfarinを使用したいニーズがあることは理解できる。しかし,本試験は,機械弁置換後の症例にはwarfarinが必須であることを再度確認させた。
 抗血小板薬が効きそうな低リスク群であってもwarfarinは血栓イベント予防に必須であった。高リスク群ではINR 1.5~2.0のwarfarinではINR 2~3のwarfarinよりも血栓イベントが多そうな傾向であった。筆者は日本人では機械弁であってもINR 2前後のwarfarin治療にて十分と理解しているが,欧米人は血栓性が高いのかもしれない。
 リスクの高い機械弁の症例もランダム化比較試験の対象にしてしまう欧米人の発想にも驚く。(後藤
デザイン 無作為割付け,非盲検,多施設(米国,カナダの41施設),intention-to-treat解析。
期間 《低リスク群》追跡期間中央値:DAPT群2.9年,warfarin標準治療群:3.4年。
登録期間は2006年6月~2014年1月。
《高リスク群》追跡期間中央値: warfarin低用量群5.1年,warfarin標準治療群5.7年。
登録期間は2006年6月~2009年10月。
対象患者 576例。≧18歳のmAVR施行予定患者。
ランダム化前に抗血小板薬反応性試験を行い,TE危険因子(慢性心房細動,EF <30%,左房径>50 mm,心エコーでのもやもやエコー,重要な血管疾患,1年以内の神経学的イベント,凝固亢進,左室瘤または右室瘤,エストロゲン補充療法中の女性)の有無でリスクを層別: 《低リスク群(201例)》 抗血小板薬反応性が良好で,上記危険因子非保有患者,《高リスク群(375例)》 抗血小板薬不応性で,上記リスク因子を1つ以上保有する患者。
■患者背景:《低リスク群》平均年齢:DAPT群53.5歳,標準治療群 52.5歳,病因:石灰化(64%, 61%);先天性(58%, 52%),病変:狭窄(56%, 55%);逆流(20%, 23%);混合(両群とも23%)。
《高リスク群》warfarin低用量群 54.1歳,標準治療群55.8歳。病因:石灰化(65%, 68%);先天性(37%, 38%),病変:狭窄(52%, 51%);逆流(25%, 18%);混合(21%, 28%),心房細動患者19例。
治療法 手技後3か月間,全例にwarfarin(目標INR:2.0~3.0)+aspirin 81 mg/日を投与し,その後ランダム化。
《低リスク群》DAPT群(99例):[clopidogrel(300 mgローディング,その後は75 mg/日投与)+aspirin(325 mg/日)],標準治療群(102例):[warfarin(目標INR:2.0~3.0)+aspirin 81 mg/日]。
[高リスク群]warfarin低用量群:185例[warfarin(目標INR:1.5~2.0)+aspirin(81 mg/日)],標準治療群:190例[warfarin(目標INR:2.0~3.0)+aspirin 81 mg/日]。
warfarin治療を受けた全患者には,ホームモニタリングによるINR管理を1週間ごとに実施。維持量の調整は,各医療機関が行った。
結果 中間報告(J Thorac Cardiovasc Surg. 2014; 147: 1202-10. PubMed)で,mAVR後の高リスク患者における低用量warfarin治療の安全性が示された。
[一次エンドポイント]
《低リスク群》DAPT群29(288.1患者・年;10.07%/患者・年)vs. 13(343.5患者・年;3.78%/患者・年),率比2.66(95%信頼区間 1.38~5.12, P =0.003)。
大出血:2.08 vs. 2.62%/患者・年(P =0.70),小出血:1.74 vs. 0.87%/患者・年(P =0.30),イベント発生は全TEおよび脳TEイベントがDAPT群で増加(全TE:4.86 vs. 0.29%/患者・年;P =0.007,脳TE:3.12 vs. 0.29/患者・年;P =0.02),弁血栓はDAPT群でのみ(1.39%/患者・年)。5年時点の出血イベント回避率に群間差は示されなかったが(81.3 vs. 85.4%/患者・年,P =0.90),TEイベント回避率はDAPT群で有意に低かった(80.5 vs. 99.0%/患者・年,P <0.001)。
《高リスク群》
warfarin低用量群52(945.2患者・年;5.50%/患者・年)vs. 102(1,090.0患者・年;9.35%/患者・年),率比 0.59(0.42~0.82, P =0.002)。
出血イベント発生率は,warfarin低用量群で低かった[大出血:1.59 vs. 3.94%/患者・年;P =0.002,小出血:1.27 vs. 3.49%/患者・年;P =0.002,全出血:2.86 vs. 7.43%/患者・年,P <0.001]。弁血栓,脳卒中,一過性脳虚血発作(TIA),末梢TEイベント発生率における有意差は示されなかった。5年時点の出血イベントは,warfarin低用量群のほうが少なかったが,TEイベントに群間差は示されなかった。
[二次エンドポイント]
《低リスク群》人工弁心内膜炎および弁周囲漏出(PVL)の発生は,ともにDAPT群0.35%/患者・年 vs. 標準治療群0%/患者・年。弁再手術は,2.08 vs. 0%/患者・年。溶血性イベントは両群ともに発生しなかった。
《高リスク群》人工弁心内膜炎(warfarin低用量群0.63% vs. 標準治療群0.37%/患者・年,P =0.40),PVL(0.11 vs. 0.28%/患者・年,P =0.41),弁再手術(0.74 vs. 0.37%/患者・年,P =0.26)は,いずれも群間に有意差は示されなかった。溶血性イベントは両群ともに発生しなかった。
[高リスク群におけるホームモニタリングによるINR管理]
報告率:warfarin低用量群 97% vs.標準治療群 96%。INR平均値:1.90±0.49(目標INR1.5~2.0)vs. 2.50±0.63(目標INR2.0~3.0)。TTR(time in therapeutic range):55.3% vs. 66.4%。INR治療域は,出血とは正の相関関係が,TEイベントとは負の相関関係が示された。
★結論★On-X弁によるmAVR後の抗血栓療法において,低リスク患者では,warfarin標準治療群にくらべDAPT群で血栓塞栓症および弁血栓リスクが増加したが,出血イベントに有意差は示されなかった。一方,高リスク患者では,大・小出血イベントはwarfarin標準治療にくらべwarfarin低用量群(INR1.5~2.0)で大幅に減少した一方,脳卒中,TIAおよび血栓塞栓症,全死亡について両群に有意差は認められなかった。
文献
  • [main]
  • Puskas JD, et al for the PROACT Investigators: Anticoagulation and antiplatelet strategies after On-X mechanical aortic valve replacement. J Am Coll Cardiol. 2018; 71: 2717-26. PubMed

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収載年月2018.09