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PREDIMED
Prevención con Dieta Mediterránea ●この論文は撤回後に発表された改訂版です

目的 地中海食はオリーブ油,フルーツ,ナッツ,野菜,穀類を多めに,魚,鶏肉を程よくとり,乳製品,赤身肉,加工肉,甘い食べ物を控えめにし,食事時にワインを飲むことが特徴である。この地中海食のアドヒアランスと心血管リスクは負の関係にあることが,観察研究や二次予防試験で示されている。
心血管疾患高リスク者において,地中海食にエキストラバージンオリーブ油(EVOO)またはナッツ類を追加する食生活の一次予防効果を検証する。


一次エンドポイントは,主要心血管イベント(心筋梗塞, 脳卒中, 心血管死の複合エンドポイント)。


2013年に本試験の一次エンドポイントの結果を報告した(N Engl J Med. 2013; 368: 1279-90.)が,その後ランダム化に関するプロトコル逸脱例*が確認されたため論文を撤回し,新たに推定効果を解析した。本報は,試験の全登録患者がランダム化されているという前提によらない解析に基づいたものである。
* 参加者の家族のうち登録済みの家族とランダム化されずに同じ試験群に割り付けされていた例,参加11施設中1施設の一部患者がランダム化されずに同一群に割り付けられていた例,他施設におけるランダム表の一貫性のない使用例など。
コメント 食事療法による心血管疾患の予防効果については十分な有効性が示しえないでいた。本試験は,オリーブ油や魚介類を中心とした地中海食と低脂肪食との比較と考えていいものと思われるが,地中海食により心血管疾患が約30%抑制されたという。スタチンによる効果とほぼ同等である。中間解析で,有効性が示されたということから,5年の計画を3年で中止することになったということも効果の強さを示すものといえよう。もちろん,地中海食でオリーブ油の効果もあるかもしれないが,魚介類,ナッツなどn-3系多価不飽和脂肪酸の多い食品が含まれているのであり,このような食事の複合的な効果が示されたものと考えてよいであろう。一方で,n-3系多価不飽和脂肪酸1.0g/dayを投与したという大規模臨床試験では,心血管疾患の発症予防が示せなかったという最近の報告(N Engl J Med. 2013; 368: 1800-8. PubMed)があり,投与量の問題か,地中海食のほかの要因が効いているのか興味のあるところである。日本動脈硬化学会では日本食を勧めているが,このような大規模臨床試験を組んでみることも必要なのかもしれない。生涯リスクという観点から,食のエビデンスは極めて重要である。(寺本
デザイン 無作為割り付け,多施設(スペイン),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.8年(中央値)。
登録期間は2003年10月~2009年6月。
対象患者 7,447例。55~80歳の男性,60~80歳の女性で,心血管リスクは高いが登録時に心血管疾患の既往がなく,2型糖尿病または下記のうち3因子以上を保有するもの(喫煙,高血圧,高LDL-C,低HDL-C,過体重/肥満,早発性冠動脈疾患[CAD]の家族歴)。
■患者背景:平均年齢**(EVOO群67.0歳,ナッツ群66.7歳,対照群67.3歳),白人97%,女性**(58.7%, 54.0%, 59.7%),非喫煙者(61.8%, 59.7%, 62.3%),平均BMI**(29.9, 29.7, 30.2 kg/m²),高血圧(82.1%, 82.5%, 83.7%),2型糖尿病**(50.4%, 46.6%, 48.5%),ウエスト・身長比** 0.63,脂質異常症(71.6%, 73.3%, 72.0%),早発性CADの家族歴(22.7%, 21.7%, 22.9%)。
服薬状況:ACE阻害薬(48.6%, 49.8%, 49.6%),利尿薬**(21.0%, 19.4%, 22.9%),その他降圧薬(28.5%, 28.9%, 30.9%),スタチン(40.9%, 39.3%, 40.1%),経口血糖降下薬**(30.2%, 27.7%, 30.9%),抗血小板薬(18.7%, 20.0%, 20.9%)。** P <0.05
治療法 EVOO群(2,543例):地中海食+EVOO(約1L/週/世帯, 推奨量:約大さじ≧4/日/人)。
ナッツ群(2,454例):地中海食+ミックスナッツ30g/日(クルミ15g,ヘーゼルナッツ7.5g,アーモンド7.5g)。
対照群(2,450例):低脂肪食に関するアドバイスのみ。
地中海食は, オリーブ油,ナッツ,果物,野菜,魚介,豆,ソフリート(オリーブ油ベースのソース),白身肉,ワイン+食事を一定量以上摂取し,炭酸飲料,焼き菓子,マーガリンなどのスプレッド,赤身/加工肉の摂取を制限。
低脂肪食は,低脂肪乳製品,パン/イモ/パスタ/米,果物,野菜,脂肪の少ない魚介類を一定量以上摂取し,植物性油,焼き菓子,ナッツ,スナック菓子,赤身/加工肉,脂肪の多い魚介,スプレッド,ソフリートの摂取を制限。
EVOOとミックスナッツは無料で配布,対照群には食品以外の粗品を配布した。
地中海食群は, 年4回,栄養士による個人/グループでの食事指導を実施。試験食のアドヒアランスを14項目の質問票により評価(スコア0~14, <10=アドヒアランス不良),個別アドバイスを実施。対照群は当初,年1回のパンフレット配布のみだったが,定期受診率の低さからサポート不足が懸念されたため2006年にプロトコルを改訂。3年後から地中海食群と同程度の個別の食事指導と9項目の質問票によるアドヒアランスを評価。
結果 中間解析の結果をうけ,本試験は早期に中止された。
210例(2.8%)が初回以降受診せず,カルテのみで評価。試験中断率(最終コンタクトから>2年経過)は,地中海食群(EVOO群+ナッツ群)4.9%,対照群11.3%。
[アドヒアランス]
追跡期間中に地中海食群(EVOO群およびナッツ群)のスコアが増加し,12/14項目で対照群を有意に上回った。
[一次エンドポイント]
一次エンドポイントの発生は288例(EVOO群96例,ナッツ群83例,対照群109例)。
地中海食群では対照群にくらべリスクが有意に低かった(ベースライン背景とプロペンシティスコアで補正後の調整ハザード比:EVOO群0.69;95%信頼区間0.53~0.91,ナッツ群:0.72;0.54~0.95,EVOO+ナッツ群:0.70;0.55~0.89)。この結果は,ランダム化に関するプロトコル逸脱またはその疑いのある1,588例を除外後の解析と同様であった。
対照群におけるプロトコル改訂の影響はみられなかった(異質性 P =0.21)。また,新たに行った感度解析およびサブグループ解析の結果は,2013年の報告と一致していた。
中間解析の結果にプロトコル逸脱は考慮されていない。
[その他]
食事に関連する有害事象は報告されなかった。
身体活動量に3群間の有意差はみられなかった。
★結論★心血管高リスク者において, 地中海食へのEVOOまたはナッツの追加により, 心血管イベントリスクは低脂肪食に関するアドバイスのみにくらべ,低下した。
文献
  • [main]
  • 【republication】 Estruch R, et al for the PREDIMED study Investigators: Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet supplemented with extra-virgin olive oil or nuts. N Engl J Med. 2018; 378: e34. PubMed
  • 【retracted article】 Estruch R, et al for the PREDIMED study investigators: Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet. N Engl J Med. 2013; 368: 1279-90. PubMed

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収載年月2018.08