循環器トライアルデータベース

REAL-CAD
Randomized Evaluation of Aggressive or Moderate Lipid Lowering Therapy with Pitavastatin in Coronary Artery Disease

目的 高強度スタチン治療と中等度治療を比較した試験結果を受け,現行ACC/AHAガイドラインでは心血管(CV)疾患患者での高強度治療を推奨しているが,アジア人においては強度の異なるスタチン治療の比較検討による明確なエビデンスはない。
日本人安定冠動脈疾患(CAD)患者において,強度の高いスタチン治療が低い治療よりもCVリスクを低下できることを検証する(優越性試験)。

一次エンドポイントは,CV死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的虚血性脳卒中,緊急入院を要する不安定狭心症の複合エンドポイント。
コメント 日本の循環器科専門家が総力をあげて取り組んだ試験が終了し論文化されたことにまずは祝意を表したい。
冠動脈疾患高リスク例では,積極的なコレステロール低下が心血管イベントおよび心血管死を防ぐことが海外からのいくつかの臨床試験で明らかになってきたが,これが日本人にも適応できるか否かは明らかではなかった。REAL-CAD試験において,日本人でも厳格なコレステロール管理が心血管イベントの予防に有用であることが示された点では意義のある試験である。
本試験はピタバスタチン(「リバロ」)の最小用量である1mgと,認可されている最大用量である4mgの心血管合併症抑制効果を比較するというプロトコルである。しかし,なぜ1mgと2mgあるいは1mgと3mgとの比較ではなかったのかという問題は残る。2mgあるいは3mgでも1mgよりも心血管イベントは抑制でき,筋痛あるいは脱落などはより少なかった可能性は否定できない。
LDL-C値を87.7mg/dLから76.6mg/dLまで約11mg/dL下げ,心血管イベントをわずか1.1%(約100人に1人)多く抑制するのにいきなり最大用量処方が必要なのであろうかという疑問も残る。すでに後発品が市場にでているが,先発品でいえば1mgは58.7円,4mgは207.6円で価格は3.5倍である。
本試験では,4mgでは脱力,筋肉症状が1mgの2.7倍認められ,途中中断例も多い。強力スタチンのように筋痛,脱力などの重大な副作用を有する薬剤の最大用量と最小用量を比較するのであれば,まず安全性を一次エンドポイントとした非劣性試験を組み,その中で二次エンドポイントして心血管イベントを比較するべきではなかったかと思う。
近年,新規抗凝固薬,糖尿病治療薬などのように有用性も高いが有害事象も懸念される薬剤,使い方によっては薬にもなり毒にもなる薬剤が登場しているが,米国ではFDAの指導により,このような薬剤のランダム化比較試験では安全性の担保を最優先として,まず安全性に関する非劣性試験が行われるのが一般的である。(桑島
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(日本の733施設)。
期間 追跡期間は3.9年(中央値)。
登録期間は2010年1月31日~’13年3月31日。
対象患者 12,413例。20~80歳の安定CAD(急性冠症候群[ACS]あるいは冠血行再建術から>3か月,またはAHAの定義による冠動脈造影上の≧75%狭窄の記録があるもの)。
除外基準:スタチン治療非実施でLCL-C<100mg/dLのもの,run-in後のLDL-C≧120mg/dL,run-in期間中の試験薬pitavastatinアドヒアランス不良例,一次エンドポイント発症例,試験継続ができない有害イベント発症例。
■患者背景:平均年齢68歳,男性83%,高血圧76%,糖尿病40%,MI既往51%,血行再建術既往*90%;PCI既往(83.2~83.7%),血圧(128/73mmHg)。
* 血行再建術施行からランダム化まで3.9年,ランダム化前1年以内の施行例27.7%。
薬物治療(高用量群5,690例,低用量群5,759例):抗血小板薬(aspirin: 92.5%, 92.4%,チエノピリジン系薬剤:両群とも47.2%);2剤併用(44.6%, 43.9%),β遮断薬(42.4%, 41.5%),ACE阻害薬/ARB(67.6%, 67.3%),run-in前のスタチン治療(91.0%, 90.7%)。
治療法 run-in(pitavastatin** 1mg/日を≧1か月投与)後にランダム化。
** 日本人でLDL-Cを1mg/日は33.6%,4mg/日は47.2%低下することが示されている。
高強度(高用量群[6,199例]):pitavastatin 4mg/日。日本で承認されている最大用量で,LDL-C低下およびIVUS評価によるプラーク退縮効果はatorvastatin 20mgに相当。
低用量群(6,214例):pitavastatin 1mg/日。atorvastatin 5mg相当用量。
結果 目標イベント数(1,033例)達成後に終了するevent-driven試験であったが,イベントが予測より少なかったものの試験延長に多くの参加施設の同意が得られなかったこともあり,2015年10月27日に運営員会は試験の非延長を決定した。
[アドヒアランス]
1年追跡終了例は高用量群97.0%,低用量群96.9%,2016年1月以降の最終追跡データ入手例は83.4%,83.2%。試験薬に対するアドヒアランスは両群とも高かったが,高用量群のほうが有意に低かった(6か月後:97.1%, 98.7%,4年後:74.8%, 76.8%;p=0.02)。また投与中止例は高用量群のほうが有意に多かった(9.8% vs 8.1%, p<0.001)。
[脂質値,hs-CRP]
LDL-Cは,高用量群:run-in後のベースライン87.7→ 6か月後73.7→ 3年後76.6mg/dL,低用量群:88.1→ 89.4→ 91.0mg/dLと,高用量群のほうが14.7mg/dL有意に低かった(p<0.001)。
HDL-C(両群とも50.7→ 3年後52.3, 51.7mg/dL),トリグリセライド(127.1→ 114.5mg/dL, 125.4→ 121.5mg/dL)。
hs-CRPは,0.57→ 6か月後0.49mg/L, 0.59→ 0.59mg/L。
[一次エンドポイント]
高用量群は低用量群よりも有意にリスクが低下した(266例[4.3%]vs 334例[5.4%]:ハザード比0.81;95%信頼区間0.69~0.95, p=0.01)。
累積4年推定も高用量群のほうが有意に低かった(4.6% vs 5.6%, p=0.01)。
5年間のpitavastatin治療による一次エンドポイント1例予防のためのNNTは63。
[二次エンドポイント]
一次エンドポイント+血行再建術(7.9% vs 9.7%),全死亡(3.3% vs 4.2%),MI(0.6% vs 1.2%)なども高用量群のほうが少なかったが,脳卒中(虚血性:1.4% vs 1.3%,出血性:0.7% vs 0.5%),標的病変血行再建術(4.5% vs 5.1%)などは有意な両群間差はなかった。
[サブグループ,その他]
ベースラインLDL-C<95mg/dLなど事前に規定していた全サブグループの結果も一貫しており,高用量群の確認された有効性と有意な交互作用のみられたサブグループはなかった。
横紋筋融解症(2例 vs 1例),新規2型糖尿病(285例 vs 279例)など重篤な有害イベントに有意差はなかったが,筋肉障害(muscle complaints)は高用量群のほうが有意に多かった(121例 vs 45例,p<0.001)。
★結論★日本人安定CAD患者において,pitavastatin高用量治療は低用量治療にくらべCVイベントが有意に少なかった。
ClinicalTrial gov No: CT01042730
文献
  • [main]
  • Taguchi I et al: High-Dose Versus Low-Dose Pitavastatin in Japanese Patients With Stable Coronary Artery Disease (REAL-CAD): A Randomized Superiority Trial. Circulation. 2018; 137: 1997-2009. PubMed

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収載年月2018.06