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3V FFR-FRIENDS
Three-vessel Fractional Flow Reserve for the Assessment of Total Physiologic Atherosclerotic Burden and Its Clinical Impact in Patients with Coronary Artery Disease

目的 冠血流予備量比(FFR)は狭窄病変の機能的有意性の標準侵襲的評価法で,冠動脈造影ガイド下治療よりも臨床転帰は良好であるが,FFR高値例におけるFFRガイド下治療でもイベントが発生する。
PROSPECT試験(Am J Cardiol. 2015; 116: 1672-7. PubMed)は非責任病変の侵襲的画像検査により3枝のプラーク性状と負荷が心血管イベントの予測に,またRIPCORD試験(Circ Cardiovasc Interv. 2014; 7: 248-55. PubMed)は全冠動脈のルーチンFFR測定が治療選択の決断に有用な可能性を発表した。しかし,生理的に評価された動脈硬化burdenの指標である3枝のFFR値の合計(3V-FFR)による予後予測はまだ検討されていない。
3枝病変患者において,3V-FFRの臨床的意義を検証する。

一次エンドポイントは,2年後の主要有害心イベント(MACE:心臓死,非致死的心筋梗塞[MI],虚血による再血行再建術の複合エンドポイント)。
狭心症再発,非侵襲性検査陽性,侵襲性の生理学的検査陽性のうち≧1つが該当する場合
コメント 3V FFR-FRIENDS研究は,3枝全てに目視での内径狭窄率>30%の病変を有する冠動脈疾患患者1136例を対象に,3枝のFFRを測定し予後との関連を探索した前向き研究で,日本の施設も参加した多施設国際研究である。3枝のFFRの合計(3V-FFR) の中央値2.72で2群に分けてMACE (心臓死,非致死的心筋梗塞,虚血による再血行再建術の複合イベント) の発生率を比較している。3V-FFR低値群は高値群に比べ2年のMACE発生率が有意に高かった(7.1% vs. 3.8%, P=0.011)。多変量解析で補正しても3V-FFR低値はMACE発生の独立した予知因子であった。FFRにより生理的に評価された冠動脈硬化Burdenは冠動脈疾患患者の予後指標として有用であると結論されている。
心筋虚血の無い病変枝も含めてFFRという生理学的指標を用いて冠動脈全体の動脈硬化Burdenを評価し予後との関連を見るという研究デザインは斬新であり,研究結果は極めて妥当であろうと思われる。
ただ問題は3V-FFRを予後指標として診療で用いることの臨床的妥当性であろうか。3V-FFR低値群と高値群のMACE発生率の差はほぼ再血行再建術の発生率の差に拠っており(6.2% vs. 2.7%, P=0.008),心臓死や心筋梗塞の発生率には差がなかった。再血行再建術以外のイベント発生率に差が無いという結果からすると,3V-FFRの結果を用いてリスクを層別化し予防介入強度を変えることは考えにくい。3V-FFRを施行するための時間,造影剤量や放射線量の増加,合併症発生の可能性などを考えると,3V-FFRを予後指標として診療で用いることに現時点での臨床的妥当性はないと思われる。
心臓死や心筋梗塞の発生率に差がなかった原因の一つとして追跡期間が2年と短かったことが挙げられる。この研究に登録された患者を長期にフォローして心臓死や心筋梗塞の発生率に差が出るかどうかは興味深い。(木村
デザイン 前向き観察研究,多施設(日本,中国,韓国の12施設)。
期間 追跡期間は2年。
登録期間は2011年11月~’14年3月。
対象 1,136例・3,298枝(PCI施行572枝[17.3%])。≧18歳,主要心外膜冠動脈に目視内径狭窄>30%の3枝病変を有し,3枝のFFR測定が成功したもの。
除外基準:EF<35%,72時間以内のST上昇型MI,CABG既往,慢性腎臓病,TIMI flow<3,診断冠動脈造影後のCABG予定例。
■患者背景:3V-FFR高値(≧2.72)群555例(48.9%),低値(<2.72)群581例(51.1%)。
平均年齢61.9歳,男性(高値群69.9%,低値群76.9%[p=0.007]),高血圧(56.9%, 64.2%[p=0.012]),糖尿病(29.0%, 34.8%[p=0.037]),高コレステロール血症(51.4%, 53.7%),既往:MI(8.6%, 9.0%);PCI(26.5%, 36.7%*)。
臨床症状:安定狭心症(56.2%, 64.0%),不安定狭心症(両群とも16.4%),MI(6.3%, 5.7%)。
病変背景:参照血管径(3.1mm, 2.9mm*),最小血管径(1.9mm, 1.5mm*),狭窄率(38.7%, 48.9%*),病変長(9.9mm, 12.3mm*),各枝FFR(ステント留置の場合はPCI後の値)(0.93, 0.86*;中央値0.95, 0.87*)。* p<0.001
退院時薬物治療:aspirin(75.5%, 82.8%[p=0.005]),P2Y12阻害薬(58.2%, 66.4%[p=0.002]),ACE阻害薬/ARB(33.2%, 39.9%[p=0.001]),スタチン(85.9%, 89.7%)。
調査方法 診断冠動脈造影後にFFRを測定。右冠動脈,左回旋枝が灌流域の小さい血管だった100例はFFRの測定は行わず,3V-FFRは2枝の平均FFR値を3倍した。3V-FFRの中央値2.72で2群に分けて比較検討した。
PCI適応の場合は第二世代薬剤溶出性ステントを使用することとし,PCIの施行は手技者に一任したが,FFR≦0.80の有意病変は現行ガイドラインによる施行を推奨した。PCI施行例は施行後のFFR値を測定し3V-FFRを算出した。
結果 [PCI施行572枝]
FFR≦0.80でPCI defer例は314枝(11.5%)。その理由は,冠動脈造影上の非有意病変(185枝[58.9%]),びまん病変(48枝[15.3%]),前回の造影から造影上の進展がなかった(31枝[9.9%]),非侵襲的虚血検査で陰性(17枝[5.4%]),心筋灌流域が小さい15枝[4.8%])。
[各枝FFRと狭窄率]
各枝のFFRと狭窄率に有意な負の相関がみられた(r=-0.350, p<0.001)。冠動脈造影上の非有意(狭窄率<50%)枝は2,600枝(79.8%),機能的非有意であるFFR>0.80は2,891枝(87.7%)。
[一次エンドポイント]
治療によらず,3V-FFRと推定2年後MACEに有意な逆相関がみられた(0.1増加ごとのハザード比[HR]0.736;95%信頼区間[CI]0.627~0.864, p<0.001)。
FFR低値群のほうが高値群にくらべリスクが有意に高かった(7.1% vs 3.8%:HR 2.205;95%CI 1.201~4.048, p=0.011)。低値群でのリスク上昇はおもに虚血による再血行再建術の増加によるものだった(6.2% vs 2.7%:2.568;1.283~5.140, p=0.008)。虚血による再血行再建術は25例(62.5%)が急性冠症候群(ACS),9例は狭窄が進行する狭心症増悪,残りは非侵襲性検査陽性。
多変量解析の結果,3V-FFR低値は2年後のMACEの独立した予測因子だった(HR 2.031;1.078~3.830, p=0.029)。
2年後MACEを予測する3V-FFRのベストカットオフ値(BCV:2.59)で2群に分けた場合も,3V-FFR低値群のほうがリスクが高かった(10.7% vs 4.2%:3.171;1.800~5.584, p<0.001)。このリスク差は3枝すべてがFFR>0.8だった789例でも同様だった(12.6% vs 3.7%:3.920;1.161~12.231, p<0.001)。
FFR≦0.80ながらdefer病変(314例)でのMACE発生は12枝(ACS 9枝,非侵襲的検査陽性で進行の客観的証拠のあるもの3枝)。
[その他]
FFR測定関連の重大な合併症は3例発生した(冠動脈スパズム,血栓形成,冠動脈解離)。
各枝FFR低値も狭窄率調整後のMACEリスク上昇と有意な関係がみられた。
FFR<0.75の薬物治療例で2年後のMACEが急激に上昇したが,PCI前FFR>0.75のステント留置枝のMACEリスクは薬物治療より高かった。
★結論★3V-FFRにより生理的に評価された動脈硬化のburdenが大きい冠動脈疾患患者は小さい患者にくらべ2年後のMACEのリスクが高かった。リスクは有意病変か否かに関係なく,おもに虚血による再血行再建術の増加によるものだった。3V-FFRは予後指標として有用な可能性が示された。
ClinicalTrials gov No: NCT01621438
文献
  • [main]
  • Lee JM et al: Clinical implications of three-vessel fractional flow reserve measurement in patients with coronary artery disease. Eur Heart J. 2018; 39: 945-51. Epub 2017 Aug 19. PubMed

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収載年月2018.03