循環器トライアルデータベース

AKDN
Alberta Kidney Disease Network

目的 入院患者は急性腎障害(AKI)を合併することが多く長期転帰が不良である。通常,AKIは可逆的であるが,腎機能が完全には回復しない症例があり,腎機能が加速的に失われていき,慢性腎障害(CKD)が増加することが2008~’17年に報告された。現行ガイドラインで,AKI発症から3か月以内のCKD発症の評価,治療開始の特定タイミングを推奨しているにもかかわらず,評価,適切な治療を受けず,介入および長期予後改善の機会を失う患者は多い。しかし,AKIの全例がCKDに進展するわけではないため,CKD高リスク例を同定しスクリーニングできればAKI入院患者の予後を改善できる。
AKI退院後の高リスク例を同定するため,カナダ・アルバータ州の住民ベース腎疾患ネットワークAKDNのデータベースを使用し,AKI入院後の重度CKDリスク予測モデルを作成して検証する。
主要評価項目は,退院30日後~1年後における重度CKDまたは退院1年後の慢性透析導入。
退院後の1年に,≧3か月間隔で測定した≧2回の外来推算糸球体濾過量(eGFR)が<30mL/分/1.73m²。
コメント 入院中にAKIを生じ退院後に重度CKDへ移行するハイリスク例を層別化できる予測モデルをカナダ・アルバータ州の住民データを用いて作成し,地理的に異なるオンタリオ州住民データを用いて検証した研究である。年齢・性別・入院前と退院時の血清クレアチニン値・アルブミン尿・AKIステージの6因子が重要で,退院時のクレアチニン値が最も影響力が大きい。一般に,予測モデルのC統計量が0.7以上で臨床的に有用とされ,0.8以上ではより確固たるモデルと考えられている。本予測モデルは0.86であり臨床的に期待されるが,血圧やAKIの原因は因子に含まれていないこと,世界の他地域でも有用な予測モデルかが今後の課題である。因子数を減らすと予測モデルとしては見劣りするが,アルブミン尿を省いてもC統計量は0.85であり,より実際的かもしれない。予測モデルスコア20以上はAKIの2.6%が含まれ,重度CKDへの陽性的中率は30.5%である。入院中にAKIを認めた例では退院時にリスクスコアを算出し,退院後にfollowする地域医療施設がリスク度を把握し,適切に重度CKD予防のためのリスク管理をして初めて役に立つ予測モデルである。(星田
デザイン コホート観察研究。
期間 追跡期間は1年(2015年3月まで)。
登録期間は2004年4月1日~’14年3月31日。
参加者 18歳以上,入院7~365日前のeGFR>45mL/分/1.73m²,AKI(入院中の血清クレアチニン[SCr]>0.3mg/dL上昇あるいは入院前よりも>50%上昇)による入院患者,入院前7~365日に≧1回のeGFR値を有するもの。
■患者背景:平均年齢(抽出コホート65.7歳,外部検証コホート69.2歳),女性(42.7%, 40.1%),SCr(1.0mg/dL[入院前中央値66日],1.0mg/dL[44日]);退院時(<1.0mg/dL:34.0%, 38.3%, 1.0~<1.3mg/dL:32.2%, 33.0%, 1.3~<1.6mg/dL:19.7%, 19.3%, 1.6~<1.9mg/dL:8.0%, 5.5%, ≧1.9mg/dL:6.1%, 3.9%),eGFR(76, 73mL/分/1.73m²);退院時(62, 59 mL/分/1.73m²),アルブミン尿(正常:37.8%, 28.9%,軽度:13.8%, 5.0%,非測定:43.4%, 64.1%),AKIステージ(1:77.1%, 78.4%, 2:13.6%, 12.9%, 3:9.3%, 8.7%)。
合併症:糖尿病(9.2%, 39.0%),がん(26.4%, 41.6%),うっ血性心不全(24.3%, 19.7%),心筋梗塞(18.0%, 11.1%),末梢血管疾患(10.8%, 8.0%),高血圧(17.4%, 24.5%)。
調査方法 期間中の入院患者データからリスクモデル作成のための抽出コホート(9,973例);内部検証コホート(4,985例),外部検証コホート(2,761例)を抽出。外部検証コホートは,オンタリオ州のInstitute for Clinical Evaluative Sciences Kidney, Dialysis, and Transplantation Programのデータ(2004年6月1日~’12年3月31日)を使用した。
リスクモデルに組み込む予測因子を同定し因子数により5つのモデルを作成し,抽出コホートの変数は多重ロジスティック回帰モデルに共変量として含んだ。
結果 重度CKD(初回[退院後中央値75日]および最終回[中央値267日]のeGFR<30 mL/分/1.73m²)進展例は,抽出コホート272例+内部検証コホート136例=408例(2.7%),外部検証コホート62例(2.2%)。
[抽出コホートの重度CKD予測]
6つの変数(年齢,性,AKIステージ,アルブミン尿,ベースライン・退院時SCr)を組入れた多重モデルにおいて,高齢,女性,重症AKI,ベースライン・退院時SCr高値,アルブミン尿と高リスクは関連し,C統計量が最も高かった(0.86)。
このモデルに基づく重度CKD進展リスクの分布は,<1%:5,228例(52.4%), 1~<5%:3,512例(35.2%), 5~<10%:626例(6.2%), 10~<20%:360例(3.6%), ≧20%:247例(2.5%)。
アルブミン尿,ベースライン・退院時SCr値を除外すると識別能が下がり,C統計量が最も低かった(0.71)のは,年齢,性,AKIステージのみを組入れたモデルだった。
[リスクモデルの内部検証コホートにおける予測能]
6変数から成る多重モデルが,因子数の少ないモデルよりも較正の精度,C統計量が高く(0.87),IDI(integrated discrimination improvement);NRI(net reclassification improvement)なども良好であった。
[リスクモデルの外部検証コホートにおける予測能]
6変数から成る多重モデルが較正の精度が高く,C統計量は0.81だった。さらに,IDI,NRIも,少ない変数から成るモデルより改善した(年齢,性,退院時SCr使用のモデルとくらべIDIが2.6%,NRIが13.5%,年齢,性,AKIステージ使用モデルとくらべ,それぞれ8.0%, 79.9%改善)。
[予測モデルの臨床的有用性]
6変数をポイント化し,重度CKD進展予測リスクを算出(年齢:<50歳;0~≧90歳;3,性:男性;0,女性;3,ベースラインSCr:<0.6mg/dL;0~≧1.3mg/dL;5,アルブミン尿:正常;0~重度;3,AKIステージ:1;0~3;3,退院時SCr:<1.0mg/dL;0~≧1.9 mg/dL;11)。リスク1~8スコアの重度CKD進展予測リスクは<1%(抽出コホートの44.0%,外部検証コホートの45.0%),9~14は1~<5%(43.6%,43.8%),15~17は5~<10%(7.2%, 7.1%),18~19は10~<20%(2.5%, 2.1%),≧20は≧20%(2.7%, 2.0%)。
6変数から成る多重モデルの臨床上の有用性の可能性は,重度CKD進展予測リスクの閾値幅に基づくと,≧9スコア(予測リスク>1%)例の閾値を超える患者の割合は48%,≧15スコア(>5%)例は13.2%,≧18スコア(>10%)例は6.2%,≧20スコア(>20%)例は2.6%,陽性的中率はそれぞれ5.2%, 14.4%, 21.2%, 30.5%。
★結論★急性腎障害入院患者において,ルーチンの検査値を使用した多重予測モデルにより退院後の重度CKDを予測できる。

[主な結果]
  • James MT et al: Derivation and external validation of prediction models for advanced chronic kidney disease following acute kidney injury. JAMA. 2017; 318: 1787-97. PubMed

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収載年月2018.05