循環器トライアルデータベース

KPNC cohort study
Kaiser Permanente Northern California cohort study

目的 現行の脳卒中ガイドラインでは,アテローム血栓性脳梗塞後の二次予防としてスタチン治療を支持しているが,心房細動(AF)が原因の脳梗塞の二次予防としてスタチン治療を行うべきかについては言及していない。
Kaiser Permanente Northern California(KPNC)*の電子医療記録を使用して,院外でのスタチン治療のアドヒアランスと脳梗塞再発リスクの関係を,脳梗塞の原因がAFか否か別に検証した。
* 保険会社カイザーパーマネンテのintegrated healthcare delivery system(統合ヘルスケア提供システム)。加入者は>350万人で,グループ内の病院で受診,治療を行い,入院・外来などの情報を電子医療記録で管理。さらにグループ内薬局で薬剤を処方。KPNC内部ガイドラインでは本研究期間の数年前から,脳梗塞初回入院時に全例になるべく早期のスタチン使用を推奨している。
コメント スタチンが高リスク例(高血圧,糖尿病あるいは冠動脈疾患合併例)の脳卒中を抑制することが報告されている。しかし,心房細動例の脳梗塞二次予防にはスタチンは無効という報告がある(Stroke 2014; 45: 1849. PubMed, Int J Cardiol. 2014; 177: 129. PubMed)。
本研究は米国の医療保険のデータベースを用いて,脳梗塞の二次予防とスタチン服薬アドヒアランスを検討した。アドヒアランスが良好な例で脳梗塞再発率が有意に低く,これは心房細動合併の有無にかかわらず認められた。ことに,心房細動を合併しワルファリンを服用している例では,TTR(ワルファリン管理状況の指標)で補正しても上記の関係は認められた。
医療保険のデータを用いた研究のため様々な限界があるが,スタチン服薬のアドヒアランスの高い例ではLDLコレステロール低下の度合いが高いことが示されており,本研究で使用されたアドヒアランスの指標は信頼性が高いといえる。今回の研究で検討されなかった交絡因子の影響がどの程度関与しているかは不明であるが,最近ワルファリンとスタチンの併用がワルファリン単独に比べ,糖尿病を合併した心房細動例の血栓塞栓症発症を抑制する可能性が日本人で示されている(Am J Cardiol. 2017; 120: 230. PubMed)。スタチンが心房細動例の塞栓症を抑制する機序については明らかではない。(井上
デザイン 後ろ向きコホート研究,多施設(21施設)。
期間 追跡期間は初発30日後から最長3年間。
登録期間は2008~’12年。
対象 6,116例。登録期間中に脳梗塞でKPNC関連病院に入院した18歳以上のKPNC加入者。合併症やイベントが明確で,退院の90日以内にスタチン処方を受けていたもの(入院前,入院中の服用開始のいずれも)。
除外基準:退院後の高度看護施設あるいはホスピス入所者。
調査方法 スタチンのアドヒアランスは,percentage days covered(PDC:処方された日数に対する服用日数の割合)で評価した。
結果 [PDCによるベースライン患者背景]
PDCは,平均85,中央値95(79~100)と高く,低アドヒアランス(PDC<85)例は1,853例,高アドヒアランス(≧85)例は4,263例。
PDC≧85例は<85例よりも高齢で,糖尿病が少なく,AF,冠動脈疾患(CAD),うっ血性心不全(CHF)が多かった。初回脳梗塞退院時に確認されたAFは1,446例(23.6%)。
平均年齢69.1歳(PDC<85例:66.3歳,≧85例:70.4歳**),女性48.6%(49.3%, 48.3%),高血圧66.2%(67.8%, 65.5%),糖尿病32.3%(35.1%, 31.0%[p=0.002]),AF 23.6%(16.6%, 26.7%**),CAD 18.4%(16.1%, 19.3%[p=0.003]),CHF 11.2%(9.6%, 11.9%),高脂血症66.6%(67.6%, 66.2%),脳卒中既往5.8%(5.3%, 6.1%),白人55.6%(48.5%, 58.6%**),黒人12.4%(17.9%,
10.0%**),アジア12.4%(13.0%, 12.1%),ヒスパニック12.2%(13.8%, 11.5%)。** p<0.001
[PDCとLDL-Cの関係:脳梗塞発症前にスタチンを使用していなかった1,509例]
高PDCと追跡期間中のLDL-Cの低下に相関関係がみられた(係数-0.417;95%信頼区間-0.486~-0.348;R²=0.086)。年齢,性,合併症,人種,脳卒中既往,施設,LDL-Cで調整後もPDCとLDL-Cの変化の関係に変化はなかった。
[PDCレベルによる脳梗塞回避生存]
3年間の脳梗塞回避生存率は,PDC≧85が<85より良好だった。この関係はAF合併例,非合併例のいずれでもみられた。
warfarinを投与しているAF(1,010例)では,INRが治療域内にある期間(TTR)で評価したwarfarinの効果で調整すると,アドヒアランスと再発予防の関係は強くなった。出血性脳卒中の発生は非常に少なく,PDCによる違いはなかった(PDC<85例:0.49% vs ≧85例:0.64%)。
[脳梗塞回避生存と全PDC]
多変量解析後,AF合併を問わずPDCは3年間の脳梗塞減少と有意に関連した(AF非合併例[4,669例]:ハザード比0.78;95%信頼区間0.63~0.97, p=0.023,合併例[1,446例]:0.59;0.43~0.81, p=0.001)。
warfarin治療のAF例でもTTR調整後のPDCと再発リスク低下に同様の関係がみられた(0.61;0.41~0.90, p=0.012)。TTRは脳梗塞再発リスク低下と強く関連した(0.05;0.02~0.20, p<0.001)が,PDCと脳梗塞リスクの関係とは独立していた。
★結論★スタチン服薬アドヒアランス良好例での脳梗塞再発リスク低下は,AFの合併にかかわらずみられた。AFを脳梗塞二次予防としてのスタチン治療から除外する理由とするべきではない。
文献
  • [main]
  • Flint AC et al: Statin adherence is associated with reduced recurrent stroke risk in patients with or without atrial fibrillation. Stroke. 2017; 48: 1788-94. PubMed

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収載年月2017.08