循環器トライアルデータベース

ILLUMENATE

目的 症候性の末梢血管疾患(PAD;浅大腿動脈[SFA],膝窩動脈)に対する薬剤コーティングバルーン(drug-coated balloon:DCB)の転帰が良好である報告は多いが,非DCBと比較すると試験により結果が異なり,高用量DCBのほうが良好とされている。
次世代低用量DCBの安全性,有効性を検証した。

安全性の一次エンドポイントは,30日後のデバイス・手技関連死の回避,12か月後の標的肢大切断および臨床理由による標的病変再血行再建術(CD-TLR)回避の複合エンドポイント。
有効性の一次エンドポイントは,12か月後の一次開存率(標的病変の再狭窄がない)。
コメント 欧米では80歳以上の15-20%がPADに罹患している。日本でもPAD患者数は非常に多く,中でもSFAは人間の最も長い動脈でメカニカルストレスがかかりやすく狭窄頻度が高い。通常バルーンによるPTA 1年後の開存率は55%以下で,ステントを用いると80%に上昇する。しかし,用いるステントサイズは冠動脈と違って大きく,植え込む部位を考慮するとstent-in-stentを避けることが望ましく,一般には暫定的な(必要時のみ)ステント使用が行われている。パクリタキセル溶出ステントもBMSより安全性・有用性が既に報告されているが,ステントを用いないパクリタキセルDCBが最近注目されている。
今回,ポリエチレングリコール基剤に低用量パクリタキセルを含有したStellarex DCBは,SFA/POPA病変例に対して糖尿病の有無や性別にかかわらずPTAより安全性・有用性が有意に勝っていた。
今回の結果として89%の1年後開存率はPADとしては非常に高く,パクリタキセル用量が2倍近く多いIN.PACT Admiral DCBを用いたIN.PACT SFA trialと同様の結果である。薬剤用量が多いとDCB操作中に末梢動脈への薬剤塞栓が多くなる可能性が実験的に示されており,少ない用量の方が望ましいかもしれない。パクリタキセル低用量のLutonix DCBを用い病変長が6cmと少し短いLEVANT 2 trialでは1年後開存率は73.5%と少し低い。さらに,2年後の臨床的有用性がLEVANT 2 trialでは消失しているので,今回の研究でも2-5年後の結果やall-comer studyが重要である。
DCBは薬剤の種類だけではなく形態や薬物動態・生体利用効率,添加剤,バルーン材質などが安全性・有用性に大きく寄与する。これからもより良くデザインされたDCBが登場する可能性があり,膝下動脈(BK)病変に対して有用性を示す臨床研究が切望されている。(星田
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(ドイツ,オーストリアの18施設)。
期間 追跡期間は5年の予定,本報は1年後。
ランダム化期間は,2012年12月~’15年4月。
対象患者 294例。≧18歳で,中等度~重症の間欠性跛行の報告,あるいは安静時虚血疼痛(Rutherford分類2~4)で,SFA,膝窩動脈に血管造影上>70%の狭窄を有す1~2のde novoあるいは再狭窄病変,病変長3~20cm,標的参照血管径4~6mm,開存(狭窄<50%)流入動脈,≧1本の開存(狭窄<50%)脛腓骨run-off血管。
除外基準:標的血管,腸骨動脈,膝窩動脈の動脈瘤,3か月以内の出血性脳卒中,標的病変の血管外科術既往など。
■患者背景:平均年齢(DCB群67歳,PTA群69歳),男性(72%, 68%),BMI(27, 28kg/m²),Rutherford分類2(15%, 21%);3(83%, 77%),足関節上腕血圧比(0.72, 0.69),既往:喫煙(89%, 83%);高血圧(78%, 83%);高脂血症(62%, 68%);糖尿病(37%, 36%);肥満(25%, 26%);脳血管疾患(17%, 21%);慢性閉塞性肺疾患(16%, 8%);心筋梗塞(13%, 17%),腎不全(9%, 8%),血行再建術歴:全下肢(45%, 46%);治療肢(22%, 26%);冠動脈(21%, 22%)。
・病変背景:de novo(92%, 90%),再狭窄(8%, 10%),近位SFA(15%, 14%),中間SFA(39%, 38%),遠位SFA(両群とも35%),近位膝窩動脈(8%, 6%),病変長(7.2cm, 7.1cm),参照血管径(5.0mm, 4.8mm[p=0.01]),狭窄率(79%, 81%),完全閉塞(両群とも19.0%),石灰化:なし/軽度(56%, 59%);中等度(31%, 30%);高度(13%, 10%),開存runoff血管:0(10%, 5%);1(18%, 15%);2(30%, 45%);3(41%, 35%)。
・手技背景:手技時間(66分,63分),X線透視時間(9.8分,9.2分),拡張時間(2.4分,2.2分),後拡張:PTA(33%, 34%);DCB(17%, -),bailoutステント(15%, 11%)。
治療法 カテーテルを病変クロス,前拡張後に3:1でDCB群と経皮的血管形成術(PTA)群にランダム化。前拡張不成功例は暫定的ステント(provisional stent)を留置し,ランダム化試験に含めない。
DCB群(222例・254病変):低用量(paclitaxel 塗布量2μg/表面積[mm²])DCBを施行。デバイス径は4, 5, 6mm,長さ40, 80, 120mm。後拡張実施の場合は,DCBまたはPTA。
PTA群(72例・79病変):非コーティングバルーンPTAを施行。後拡張実施の場合は,非コーティングバルーンのみ。バルーンは前拡張バルーン長より≧10mm長いもの,拡張時間は≧1分とした。
試験デバイス治療後の残余狭窄率>30%あるいはflow-limiting dissection例は後拡張を実施。
手技前は施設の標準治療に従い抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を実施し,手技後は試験期間中aspirinを投与とし,さらに30日間(ステントの場合は90日間)clopidogrel併用投与を推奨。後拡張不成功の場合は暫定的ステント(bailout stent)を留置した。
結果 12か月の追跡完了例はDCB群89%,PTA群85%。
flow-limiting dissection (0.4% vs 0%), provisional stent (15% vs 11%),手技後狭窄率(24% vs 23%),成功率(技術:99.2% vs 100%,臨床:99.1% vs 100%,病変:99.6% vs 100%,手技:99.5% vs 100%)は両群同等であった。
[一次エンドポイント]
安全性でDCB群のPTA群に対する非劣性,優越性が示された(94.1% vs 83.3%:両群差10.8%;95%信頼区間0.9~23.0%)。
Kaplan-Meier推定によるCD-TLR回避率は94.8% vs 85.3%(p=0.010)。
有効性でもDCB群の優越性が確認された(395日後:83.9% vs 60.6%:23.3%;10.6~36.1%, p<0.001)。
[その他]
手技に関する主要有害イベント(心血管[CV]死,標的肢切断,CD-TLR)は,6.8% vs 18.0%(p=0.008),CV死は1.0% vs 1.6%,CD-TLRは5.9% vs 16.7%(p=0.014),標的肢切断は0.5% vs 0%(大切断はなし)。
DCB群では,Kaplan-Meier推定の365日一次開存においても優っており(89.0% vs 65.0%, p<0.001),性別(男性90.4%,女性85.3%),糖尿病の有無(糖尿病89.2%,非糖尿病88.8%)による有意差はみられなかった。
[provisional stent留置例(33例;平均66歳,男性75.8%,慢性完全閉塞(CTO)54.5%,病変長8.8cm)]
全例にステント留置後,DCBを施行,非ランダム化コホート:12か月後の一次開存例は78.8%,CD-TLRは12.1%。
本試験(ランダム化)でのDCB群でのbailoutステント例は38例(CTO 40.5%,病変長8.4cm),一次開存例は75.0%。DCB群でステント非留置例(181例;14.9%, 6.9cm)の一次開存例は85.9%。DCB群のbailoutステント留置有無による一次開存率に有意差はなかった。
★結論★症候性のPAD(浅大腿動脈,大腿膝窩動脈)に対する介入において,低用量DCBは安全性,有効性でPTAを上回ることが示された。
ClinicalTrials. Gov No: NCT01858363
文献
  • [main]
  • Schroeder H et al for the ILLUMENATE EU RCT investigators: Low-dose paclitaxel-coated versus uncoated percutaneous transluminal balloon angioplasty for femoropopliteal peripheral artery disease: one-year results of the ILLUMENATE European randomized clinical trial (randomized trial of a novel paclitaxel-coated percutaneous angioplasty balloon). Circulation. 2017; 135: 2227-36. PubMed

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収載年月2017.10