循環器トライアルデータベース

NAMCS and NHAMCS
National Ambulatory Medical Care Survey and National Hospital Ambulatory Medical Care Survey

目的 末梢動脈疾患(PAD)は有病率の高さや不良な予後,また冠動脈疾患(CAD)と危険因子が共通することから,危険因子の改善や心血管イベントの予防のために治療が必要であり,ガイドラインでは心保護薬の使用や生活習慣のカウンセリングが推奨されている。しかし,米国におけるPAD患者に対する投薬パターン,生活習慣のカウンセリングに関してはほとんど分かっていない。
全米の標本調査のデータを使用して,PAD患者における薬物治療と生活習慣のカウンセリング動向を評価し,人口動態/臨床危険因子/医療供給者の変化の影響,性別や人種による差異を検証した。
コメント NAMCS and NHAMCSでは,末梢動脈性疾患患者に適切な予防の措置や生活習慣の修正のためのカウンセリングが行われているかが検討された。
末梢動脈性疾患では,進展を抑制することが重要と考えられ,抗血小板薬,スタチン,ACE阻害薬/ARB,cilostazolなどの薬剤や減量,禁煙などの生活習慣の修正に効果があることは明らかにされているが,実際に行われているのかは検証されるべき点である。加えて管理の状況について性別や人種による差異を検討することで,よりきめ細やかな対策が立てられるものと考えられる。
予想されるように,推奨される介入の実施は予想を大幅に下回る結果となった。末梢動脈性疾患が生活習慣に深く根付いた病気であることを改めて認識させられるものである。日本においても同様な状況であることが想像されるが,患者のアドヒアランスを高めるアプローチがいっそう求められるものと考える。
禁煙から食事指導に至るまで,生活習慣の修正も多面的な専門性で編成されるチームによって対応することが必要である。(中村中野永井
デザイン 登録研究。
期間 2006~’13年。
参加者 1,982例。18歳以上の診療所/病院/救急外来に関する全米外来医療調査(National Ambulatory Medical Care Survey:NAMCS)および全米病院外来医療調査(National Hospital Ambulatory Medical Care Survey:NHAMCS)から抽出された対象期間中のPAD診断患者のデータ。
調査方法 抽出したPAD例のデータから,薬物治療(抗血小板薬,スタチン,ACE阻害薬/ARB,cilostazol),生活習慣のカウンセリング(食事,減量,運動)および禁煙治療(カウンセリング,禁煙補助薬)の傾向を検証。有害心血管イベントの危険因子(高血圧,脂質代謝異常,喫煙,肥満,糖尿病,慢性腎臓病,慢性閉塞性肺疾患,CAD,脳卒中),人口統計学的特徴(年齢,性別,人種,保険,地域,都市部/地方),医師の専門(心臓専門医/プライマリケア医)に関する情報を抽出。要約統計量を使用し,ロジスティック回帰モデルで診断および治療の傾向との関連,PADとCAD合併患者とPADのみの患者の治療の違いを推定した。
結果 PADによる外来は8年間で平均378万1,624件/年で,患者背景は平均年齢69.2歳(<65歳;33%, 65~79歳;43%, ≧80歳;24%),女性49.6%,非ヒスパニック系白人56.2%,CAD併発例24.1%。患者の年齢,人種,地域,保険,医師の専門の割合・分布に経時的な有意な変化はなかった。
[薬物治療]
抗血小板薬37.8%(2006~’07年;36.3%→’12~’13年;39.7%),スタチン35.0%(30.5%→ 38.8%),ACE阻害薬/ARB 31.1%(32.9%→ 29.7%),cilostazol 5.0%。いずれの薬剤の使用も有意な経時的変化はなかった。CAD非併発例で抗血小板薬治療(33.8%→ 37.6%),aspirin治療(21%→ 29.5%),スタチン治療(23.6%→ 35.7%)が経時的に増加の傾向がみられたが,併発例では変化はなかった。心臓専門医外来にも変化はみられなかった(06年:22%,’13年:21%)。
[生活習慣のカウンセリング]
食事・運動のカウンセリング20.1%(18%→ 12.7%),禁煙治療36.3%(36.8%→ 38.7%)で,いずれも経時的に有意な変化はみられなかった。
[薬物治療,カウンセリングの予測因子]
抗血小板薬治療と有意に関連したのは,CAD併発(オッズ比2.3;95%信頼区間1.6~3.4)のみ,スタチン治療は脂質異常症(3.3;2.2~5.1),CAD併発(1.6;1.0~2.4),ACE阻害薬/ARB治療は脂質異常症(1.6;1.1~2.5),糖尿病(1.6;1.1~2.4),高血圧(1.9;1.2~3.0)。
食事・運動のカウンセリングと関連したのは肥満(3.5;2.1~6.1),高血圧(1.6;0.9~2.7),禁煙治療は≧65歳(0.3;0.1~0.7),非白人(0.3;0.1~0.9)で少なく,CAD併発例で多かった(3.5;1.6~7.4)。これらの治療,カウンセリングは心臓専門医外来で多かった(全p<0.05)。多変量解析後,抗血小板治療は心臓専門医外来例で有意に多かった(1.8;1.1~2.9)。
★結論★PAD患者におけるガイドライン推奨治療の実施は予想を大幅に下回っており,治療の質に改善の余地があることが示された。

[主な結果]
  • Berger JS et al: Underuse of prevention and lifestyle counseling in patients with peripheral artery disease. J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 2293-300. PubMed
    Hiatt WR and Rogers RK: The treatment gap in peripheral artery disease. J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 2301-3. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2018.02