循環器トライアルデータベース

MagnaSafe Registry

目的 心臓ペースメーカー/ICD植込み例におけるMRIの実施は長い間禁忌であったが,この20年間にMRI関連リスクを低減するデバイスが登場し,特定の条件下で危険がみられないものをFDAは“MRI対応”と認めている。一方, “MRI非対応”とされているデバイスの使用者は米国内で200万人,全世界で600万人と推定され,少なくともその半数ではMRI検査が必要となる可能性がある。
MRI非対応のデバイス植込み例において,磁場強度1.5T(tesla)の胸部以外のMRI関連リスクを評価した。

一次エンドポイントはMRI検査中・終了時の死亡,ペーシング依存患者のペーシング不全,ジェネレータ・リード不全,不整脈の誘発,ジェネレータの電気的リセット。
コメント 強力な磁場を発生するMRIは,ペースメーカー/ICD植込み例には禁忌とされてきた。最近ではMRI対応ペースメーカーの登場により,ペースメーカー植込み患者にもMRIが安心して行われるようになってきた。一方で,MRI非対応のデバイスにおいて,MRIは必ずしも有害な作用をペースメーカーに及ぼさないことも,少数例を対象にした検討で報告されている。
今回の研究では,胸部以外の部位のMRI(大部分は脳,脊椎)では,検査前に一定のプログラム設定を行い,検査後に確認すれば重大な有害事象を起こすことはなく検査が可能であることを示した。この結果は,MRI非対応デバイスを植込まれた患者にとって朗報と言える。本研究で除外された例,たとえば胸部MRI,CRT(心臓再同期治療),ペーシング依存のICD植込みには本研究の結果をあてはめることができないことに留意する必要がある。(井上
デザイン 登録研究,多施設(米国19施設)。
期間 追跡期間は6か月。
MRI実施は2009年4月~'14年4月。
対象 1,246例:ペースメーカー植込み818例(MRI実施1,000回),ICD植込み428例(500回)。18歳以上で,2001年以降にMRI非対応の永久ペースメーカーまたはICDを植込み,1.5Tの胸部以外のMRI検査が臨床的に適応と担当医が判断したもの。
除外基準:interrogate不能な使用されなくなったリード,ペースメーカー/ICD以外のデバイスの植込み,MRI対応のデバイス,胸部以外のデバイス植込み,電池寿命終了間近のデバイス,ICD植込み例でペーシング依存のもの。
■患者背景:平均年齢(ペースメーカー例72.5歳,ICD例65.1歳),女性(42.0%, 30.7%),BMI(27.8, 29.1kg/m²),冠動脈疾患(31.2%, 57.3%),糖尿病(18.6%, 36.3%),機械弁(両群とも3.7%),抗不整脈治療(10.2%, 16.4%)。
調査方法 MRI実施前に標準化プロトコルに基づくデバイスのinterrogationを行い,ペーシング非依存か否かに応じて再プログラミング*。MRI実施後にベースライン時の設定の回復,interrogation,エンドポイントを評価した。
二次エンドポイント**に達しなかった患者では,MRI後3~6か月以内に再度interrogation,達した患者ではMRI後7日以内,3か月,6か月にinterrogationを行い必要に応じて再プログラミングした。
* ペーシング非依存(無症候性で内因性心拍数≧40拍/分):ペースメーカー例では非ペーシングモード(ODOまたはOVO)にプログラムし,ICD例では頻脈/徐脈の感知および治療機能を全てinactive modeにプログラムした。
ペーシング依存(症候性[失神前状態/浮遊感の症状]または内因性心拍数<40拍/分):ペースメーカー例では非同期ペーシングモード(DOOまたはVOO)にプログラム,ICD例は除外。
** MRI直後のデバイス設定変更(電池電圧低下≧0.04V;ペーシング閾値上昇≧0.5V;P波振幅低下≧50%;R波振幅低下≧25%および≧50%;リードインピーダンス変化≧50 ohms;ショックリードインピーダンス変化≧3 ohms。
結果 6か月後のデータは1,395回(93%)。
MRI検査の75%は脳,脊椎で,磁場内滞在時間は44分であった。
[一次エンドポイント]
MRI検査中の死亡,即時の交換を要するリード不全,ペーシング不全は発生しなかった。
ICD植込みの1例でMRI前のプログラムが不適切で,MRI後のinterrogationが不能であったため即時のジェネレータ交換が必要となった。
MRI検査中・直後の心房細動は4例,心房粗動は2例。心室性不整脈の発生はなかった。
MRI検査の5.7~9.7年前にペースメーカーを植込んだ5例(6件)で部分的電気的リセットが発生した。
[二次エンドポイント]
ペースメーカー例11%,ICD例26%。
リードインピーダンス変化≧50 ohms:3.3%, 4.2%,ペーシング閾値上昇≧0.5V:0.7%, 0.8%,電圧低下≧0.04V:0.4%, 7.2%,P波振幅低下≧50%: 0.9%, 0.3%,R波振幅低下≧25%, 3.9%, 1.6%,R波振幅低下≧50%:0%, 0.2%。
[MRI実施回数]
ペースメーカー例で最大11回,ICD例で最大7回。
MRI実施回数とエンドポイントの関連は認められなかった。
★結論★MRI非対応のペースメーカー/ICDの植込み例で,適切なスクリーニングと所定のプロトコルに基づくデバイスの再プログラミングを受けた患者では,1.5Tの胸部以外のMRI実施によるデバイス/リード不全は発生しなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00907361
文献
  • [main]
  • Russo RJ et al: Assessing the risks associated with MRI in patients with a pacemaker or defibrillator. N Engl J Med. 2017; 376: 755-64. PubMed

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収載年月2017.06