循環器トライアルデータベース

MOMENTUM 3
Multicenter Study of MagLev Technology in Patients Undergoing Mechanical Circulatory Support Therapy with HeartMate 3

目的 連続流型左心補助人工心臓(LVAS)により重度心不全患者の生存率は向上するが,ポンプ血栓症発生のリスクを伴う。血栓症によるポンプの交換による合併症やコストの増大に対する懸念は,この治療法の発展の妨げとなっている。
ポンプ血栓症防止設計の新規植込み型LVASである完全磁気浮上型遠心連続流ポンプHeartMate 3の,現在市販されている軸流ポンプHeartMate IIに対する非劣性試験を行った。

一次エンドポイントは,植込み後6か月の後遺障害を残す脳卒中(modified Rankin score>3)回避生存率,デバイス交換/除去の再手術回避生存率。
コメント 左室補助循環装置(LVAD)は第一世代の拍動流型ポンプから,第二世代の連続流型ポンプに進歩してきたが,このポンプ型式の変化により,装置の小型化に成功し耐久性も飛躍的に伸びた。しかし,その反面,装置内血栓形成や出血頻度の増加が問題となっている。連続流型ポンプでもHeartMate IIのような軸流ポンプからHeartMate IIIのような遠心ポンプが開発されてきた。わが国でもDuraHeart が磁気浮上型遠心ポンプを採用している。今回の報告では,血栓塞栓による脳卒中は,HeartMate IIとほとんど差がなかったが,ポンプ交換が必要な装置の不具合は明らかにHeartMate IIより少なかった。今後第三世代LVADとして恒久治療(destination therapy)の目的で普及するものと期待される。(
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(米国69施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。
登録期間は2014年9月~'15年10月。
対象患者 294例。標準的な薬物治療無効の重症心不全患者。ポンプ補助の目的(心移植までの橋渡し,または恒久治療は不問とした。
主な除外基準:両心室補助の予定,不可逆的な末期臓器障害,活動性感染。
■患者背景:平均年齢(遠心流ポンプ群60.3歳,軸流ポンプ群58.9歳),男性(79.6%, 80.3%),白人(68.4%, 75.4%),虚血性心不全(44.7%, 50.7%),脳卒中既往(7.9%, 9.9%),EF(17.1%, 17.3%),INTERMACS profile 2(32.9%, 31.0%);3(50.0%, 48.6%);4(14.5%, 16.2%)。
・治療背景:強心薬静注(86.8%, 85.2%),利尿薬(88.2%, 95.8%),ACE阻害薬(24.3%, 26.8%),ARB(6.6%, 12.7%),β遮断薬(59.9%, 55.6%),CRT(38.8%, 35.9%),ICD(66.4%, 70.4%),動脈内バルーンポンプ(11.8%, 14.8%)。ポンプ補助の目的:移植までの橋渡し治療(27.0%, 26.1%),bridge to candidacy for transplantation(17.8%, 19.0%),恒久治療(55.3%, 54.9%)。
治療法 遠心流ポンプ群(152例):HeartMate 3を植込んだ,軸流ポンプ群(142例):HeartMate IIを植込んだ。
推奨抗血栓療法は,aspirin(81~100mg/日),warfarin(目標INR 2.0~3.0)。
結果 ポンプを植込んだ状態で退院した患者は,遠心流ポンプ群140例(92.7%),軸流ポンプ群126例(91.3%)。
[一次エンドポイント]
遠心流ポンプ群131例(86.2%) vs 軸流ポンプ群109例(76.8%)。遠心流ポンプの軸流ポンプに対する非劣性(絶対差9.4%ポイント;95%信頼区間下限-2.1,非劣性p<0.001),優越性(ハザード比[HR]0.55;95%信頼区間0.32~0.95;優越性p=0.04)ともに認められた。
死亡,後遺障害を残す脳卒中の発生率に有意な群間差はなかったが,ポンプの不具合による再手術率は遠心流ポンプ群のほうが軸流ポンプ群より低かった(1例[0.7%] vs 11例[7.7%]:HR 0.08;0.01~0.60, p=0.002)。
[二次エンドポイント(per-protocol解析:遠心流ポンプ群151例,軸流ポンプ群138例)]
NYHA心機能分類,6分間歩行距離,QOLは両群で改善し,群間に有意差はなかった。
ポンプ血栓症(suspected/ confirmed)は遠心流ポンプ群が有意に少なかった(0例 vs 14例[10.1%], p<0.001)。出血(33.1% vs 39.1%);手術を要する出血(9.9% vs 13.8%);消化管出血(15.9% vs 15.2%),ドライブラインの感染(11.9% vs 6.5%),右心不全(29.8% vs 24.0%),呼吸不全(21.9% vs 17.4%),腎不全(11.3% vs 8.7%),肝機能異常(4.6% vs 2.2%)などに有意な群間差はみられなかった。
★結論★重症心不全患者において,遠心流ポンプは軸流ポンプにくらべ植込み後のポンプ不具合による再手術の施行率が低く,6か月後の転帰が良好であった。
文献
  • [main]
  • Mehra MR et al for the MOMENTUM 3 investigators: A Fully Magnetically Levitated Circulatory Pump for Advanced Heart Failure. N Engl J Med. 2017; 376: 440-50. PubMed
  • [substudy]
  • 2年後の後遺障害を伴う脳卒中および再手術回避の生存率に対する,遠心流ポンプ群の軸流ポンプ群にくらべた非劣性,優越性ともに示された。
    2年後の一次エンドポイント(交換のための再手術あるいはデバイス不具合による除去回避の生存率,および後遺障害を伴う脳卒中*回避の生存の複合エンドポイント)の結果。* modified Rankinスコア(0~6で高値ほど重症)>3
    366例(遠心流ポンプ群190例,軸流ポンプ群176例),登録期間は2014年9月~'15年11月。ポンプを植込んだ状態で退院したのは,それぞれ177例(93.7%),160例(93.0%)。
    一次エンドポイントは遠心流ポンプ群の軸流ポンプ群に対する非劣性,優越性ともに認められた(151例[79.5%] vs 106例[60.2%]:絶対差19.2ポイント;95%信頼下限9.8%[非劣性p<0.001],ハザード比[HR]0.46;95%信頼区間0.31~0.69[優越性p<0.001])。
    ポンプ不具合による再手術は遠心流ポンプ群のほうが有意に少なかった(3例[1.6%]vs 30例[17.0%]:HR 0.08;0.03~0.27, p<0.001)。死亡および後遺障害を伴う脳卒中は両群同等だったが,全脳卒中発症率は遠心流ポンプ群のほうが低かった(10.1% vs 19.2%:0.47;0.27~0.84, p=0.02)。Kaplan–Meier推定による一次エンドポイント(actuarial event-free survival)も,遠心流ポンプ群のほうが有意に高かった(77.9% vs 56.4%, p<0.001)。ポンプ血栓症(suspected)は同群で少なかった(2例[1.1%] vs 27例[15.7%]・33件:0.06;0.01~0.26, p<0.001)。死亡は30例,36例で最も多かった死因は両群とも右室不全,脳卒中,感染:N Engl J Med. 2018; 378: 1386-95. Epub 2018 Mar 11. PubMed

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収載年月2017.06
更新年月2018.03