循環器トライアルデータベース

EINSTEIN CHOICE
Reduced-dosed Rivaroxaban in the Long-term Prevention of Recurrent Symptomatic Venous Thromboembolism

目的 静脈血栓塞栓症(VTE)は,欧米では心筋梗塞,脳卒中に次ぐ3番目の血管死因である。主な治療は抗凝固療法で,再発,出血リスクを考慮しながら3か月以上実施しているが,6~12か月を超える実施には非常に慎重になる。患者の多くは長期治療が必要となるが,通常用量あるいは低用量の抗凝固薬投与,あるいはaspirin投与のいずれが有効なのかは明らかではない。
抗凝固療法を6~12か月実施した症候性VTE患者において,rivaroxaban 2用量,aspirinの1年投与の安全性,有効性を比較した。

有効性の一次エンドポイントは症候性の致死的・非致死的VTEの再発,安全性の主要評価は重大な出血(顕在性出血:Hb≧2g/dL,赤血球≧2単位の輸血,重要部位の出血あるいは死亡した出血)。
コメント 静脈血栓塞栓症は幸いにして日本では少ない。入院して動かなくなると血栓ができる欧米人に比較して,畳の上に長時間座っても静脈血栓症にならない日本人は恵まれている。しかし,日本人でも静脈血栓塞栓症はゼロではない。安静などにより血栓ができてしまうわけではないので,日本の静脈血栓塞栓症では血栓素因を合併している症例が多い。数は少ないが,見つけた静脈血栓塞栓症の再発率が高いのが日本の特徴である。
高価な新薬のプロモーションが始まる前にも,筆者のところには静脈血栓塞栓症が多く集まっていた。血栓素因としてプロテインSの機能低下などが見つかる場合もあり,Lupus Anticoagulantのように原因を特定できない疑い症例も多かった。経験に基づいてワルファリンの開始は丁寧に行い,一度開始したワルファリンを中止する発想はなかった。アスピリンにより静脈血栓の再発予防効果が論文としては報告されていたが,血栓素因が多い患者集団にアスピリンを使用することもなかった。
世界には不均一性がある。経済はグローバル化して国境を越えるが,遺伝因子,生活習慣などの地域差は乗り越えられない。静脈血栓塞栓症は日本と欧米世界の相違がもっとも大きな領域である。本論文に基づいて米国,欧州の診療ガイドラインには長期間の抗凝固療法を勧める記述が追加されると想定される。診療ガイドラインはエビデンスに基づいて作られるので,NEJMに掲載された科学的に質の高いエビデンスが診療ガイドラインに反映されるべきとも言える。試験に用いられた薬剤はリバーロキサバンなので,「静脈血栓塞栓症後の長期リバーロキサバン治療はアスピリンよりも有用である」と記載されるかもしれない。本試験に登録された患者集団にて検証された仮説が,日本の目の前の患者に適応できるか否かは分からない。無限に仮説検証試験を繰り返しても,個別症例に対する最適解を得ることができないのはEBMの限界である。エビデンスと目の前の患者の特徴から個別症例にベストの選択をできる医師の育成は難しい。(後藤
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(31か国244施設),intention-to-treat解析。
期間 治療期間中央値351日。
登録期間は2014年3月~’16年3月。
対象患者 3,365例。18歳以上の症候性近位深部静脈血栓症あるいは肺塞栓症が客観的に確認できるもので,6~12か月間の抗凝固薬(ビタミンK拮抗薬,直接経口抗凝固薬)を投与し,ランダム化前の7日以内の治療非中断例。直接経口抗凝固薬最終投与から≧24時間例あるいはビタミンK拮抗薬投与の場合はINR≦2.5例。
除外基準:継続抗凝固療法禁忌例あるいは治療用量,抗血小板薬による継続抗凝固療法が必要なもの,クレアチニンクリアランス計算値<30mL/分,凝固障害関連肝疾患など。
■患者背景:平均年齢(rivaroxaban 20mg群57.9歳,10mg群58.8歳,aspirin群58.8歳),男性(54.4%, 55.0%, 56.9%),BMI≧30kg/m²(35.6%, 33.4%, 33.2%),クレアチニンクリアランス≧80mL/分(71.1%, 68.7%, 69.8%),発症イベント:深部静脈血栓症のみ(51.0%, 50.1%, 51.0%);肺塞栓症のみ(34.4%, 33.8%, 32.4%);両方(14.0%, 15.9%, 16.0%);誘発性(60.2%, 57.4%, 58.6%),VTE既往(17.9%, 17.5%, 17.2%),血栓性素因(7.1%, 6.6%, 6.2%),がん(2.3%, 2.4%, 3.3%)。
治療法 rivaroxaban 20mg群(1,107例),rivaroxaban 10mg群(1,127例),aspirin 100mg群(1,131例)。
結果 投与期間(中央値)は,rivaroxaban 20mg群349日,10mg群353日,aspirin群350日。
[有効性の一次エンドポイント]
rivaroxaban 群はaspirin群よりVTE再発リスクが有意に低かった。
rivaroxaban 20mg群17例(1.5%),10mg群13例(1.2%) vs aspirin群50例(4.4%)。aspirin群とくらべたハザード比:rivaroxaban 20mg群0.34;95%信頼区間0.20~0.59,10mg群:0.26;0.14~0.47[全p<0.001]。
致死的VTEはrivaroxaban 20mg群で2例,aspirin群で2例。
[安全性]
大出血リスクに有意な群間差はみられなかった。
rivaroxaban 20mg群0.5%,10mg群0.4%,aspirin群0.3%。
重大ではないが臨床的に重要な小出血はそれぞれ2.7%, 2.0%, 1.8%。
[その他]
全死亡は0.7%, 0.2%, 0.6%,心筋梗塞・脳卒中・全身性塞栓症は3例,5例,7例,有害事象は3群同等であった。
試験終了後の30日間のVTE再発例は2例,4例,6例。
★結論★抗凝固療法の持続適応の静脈血栓塞栓症患者において,rivaroxabanの治療用量(20mg)群,予防用量(10mg)群はaspirin群とくらべ,出血リスクが有意に上昇することなく再発リスクが有意に低かった。
ClinicalTrials.gov No: NCT02064439
文献
  • [main]
  • Weitz JI et al for the EINSTEIN CHOICE investigators: Rivaroxaban or aspirin for extended treatment of venous thromboembolism. N Engl J Med. 2017; 376: 1211-22. PubMed
    Crowther MA et al: Reduced-intensity rivaroxaban for the prevention of recurrent venous thromboembolism. N Engl J Med. 2017; 376: 1279-80. PubMed

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収載年月2017.05