循環器トライアルデータベース

FOURIER
Further Cardiovascular Outcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk

目的 PCSK9阻害薬evolocumabはLDL-Cをおよそ60%低下させることが示されているが,心血管イベントを抑制するかはまだ明らかにはなっていない。
中強度~高強度のスタチン治療を行っているアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者において,evolocumab追加の臨床的有効性,安全性を検証した。

有効性の一次エンドポイントは,主要心血管イベント(心血管死,心筋梗塞[MI],脳卒中,不安定狭心症による入院,冠動脈血行再建術の複合エンドポイント)。
コメント Lancet. 2017 Aug 25. へのコメント
FOURIER studyでLDL-Cの低下による心血管イベント抑制効果は,ほぼスタチンで示された効果の延長線上にあることが報告され,心血管イベントという視点ではLDL-Cはlower is betterという仮説は証明されたといってよいように思われる。本論文は,安全性に関する報告であり,特に10%(2669例)の患者がLDL-C<20mg/dLと著明な低値を示しており,その患者たちについての安全性を報告しているが,特に注目している副作用については増加することはないという結果であった。しかし,本論文のlimitationにも記載されているように,安全性を見るにはあまりにも短い期間であり,副作用の頻度も低いことを考慮すると,結論を出すのは早計といったほうが良かろう。特に,新規の糖尿病発症の問題や,悪性腫瘍,神経認知機能や,わが国で問題としているような脳出血についてはこのような短期間で結論が出せるものではなく,今後の延長してみるオープン試験などで気長に見ていく必要はあるかと思われる。しかし,直近の肝機能障害や筋肉障害については問題なく,特に急性冠症候群のような直近のイベント再発などが問題となるようなケースであれば,安全性と有効性というバランスの上で,LDL-C 20mg/dLまではlower is betterが証明されたといってよいものと思われる。(寺本

N Engl J Med. 2017; 376: 1713-22. へのコメント
PCSK9阻害薬(evolocumab)による初めての大規模予防試験である。予想通りの有意な抑制効果を示し,改めてLDL-C低下療法の意義を確認した。本試験は,治療期間ではなくイベント数依存型の試験であったため,期間は通常より短い2.2年で終了した。これは,研究者たちが予測したほどスタチン治療の強度が高くなかったため,イベント数が予想(2%)より高かった(約4%)ためとしている。したがって,若干イベントの抑制割合も低いように見受けられるが,これまでのCTTCグループのメタ解析の2.2年と調整するとほぼ同等の有効性ということが証明されており,CTTCの仮説をさらに低いところまで証明したという意味でランドマーク的試験といえる。
重要なポイントをいくつか挙げると,二次予防という高リスクであれば,LDL-C:80mg/dL未満でもより下げることの意義があること,また,LDL-C:30mg/dLまで低下させることに安全性において問題を生じていないこと,さらには高リスクの二次予防では,患者背景のもつ因子にかかわらず,LDL-C低下療法が有効であることを証明したことになることであろう。ただし,2.2年という短期間の試験にならざるを得なかったという点では,長期的な安全性の問題は棚上げにされたことは否めない。LDL-C:25mg/dL未満の患者も1,000名くらいいることから,今後これらの患者の安全性についての議論を提示することになるであろう。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(日本を含む49か国1,242施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値は26か月(2.2年)。
ランダム化期間は2013年2月~’15年6月。
対象患者 27,564例。40~85歳の高リスクASCVD(MI・非出血性脳卒中・症候性末梢動脈疾患[PAD]既往)患者で,至適脂質低下治療下(高強度スタチンが望ましいが,少なくともatorvastatin 20mg/日相当の治療と定義;ezetimibe併用の有無は問わない)の空腹時LDL-C≧70mg/dLあるいはnon-HDL-C≧100mg/dLのもの。
■患者背景:平均年齢63歳,女性24.6%,既往:MI 81.1%(発症後の期間中央値はevolocumab群3.4年,プラセボ群3.3年);非出血性脳卒中19.4%(3.2年,3.3年);症候性PAD 13.2%,地域:北米16.6%,欧州62.9%,アジア太平洋/南アフリカ13.9%。
ACC/ AHAガイドライン定義の高強度スタチン治療69.3%,中強度スタチン治療30.4%,ezetimibe投与5.2%,試験期間中の脂質低下薬変更は9.8%のみ。
二次予防治療:抗血小板薬92.3%,β遮断薬75.6%,ACE阻害薬/ARB/アルドステロン受容体拮抗薬・それらの併用78.2%,
治療法 evolocumab群(13,784例):患者の嗜好性により,140mg 1回/2週皮下注あるいは420mg 1回/月皮下注。
プラセボ群(13,780例)。
結果 試験薬を≧1回投与したものは27,525例(99.9%),脱落は12.5%(5.7%/年)
[脂質値の変化]
evolocumab群におけるLDL-Cの変化は,ベースライン中央値92mg/dL→ 48週後30mg/dL。プラセボ群にくらべLDL-C最小二乗平均低下率は59%(p<0.001),平均絶対低下は56mg/dLであった。LDL-Cの低下は追跡期間中持続した。また,LDL-C≦70mg/dL低下例は87%,≦40mg/dL低下例は67%,≦25mg/dL低下例は42%で,いずれもプラセボ群(それぞれ18%, 0.5%, <0.1%)より多かった(全p<0.001)。
evolocumab群ではnon-HDL-Cが52%,アポリポ蛋白Bが49%低下した(いずれもp<0.001)。
[一次エンドポイント]
evolocumab群はプラセボ群にくらべ有意に複合エンドポイントのリスクが低かった(1,344例[9.8%] vs 1,563例[11.3%]:ハザード比0.85;95%信頼区間0.79~0.92, p<0.001)。
個別のイベントでは,心血管死(1.8% vs 1.7%),不安定狭心症による入院(両群とも1.7%)の有意差はみられなかったが,MI(3.4% vs 4.6%),血行再建術(5.5% vs 7.0%:いずれもp<0.001),脳卒中(1.5% vs 1.9%, p=0.01)のリスクはevolocumab群のほうが低かった。
また,リスクの低下は時間とともに増大する傾向が示された(1年後:12%,1年後以降:19%)。
[主要二次エンドポイント]
心血管死,MI,脳卒中の複合エンドポイントのリスクもevolocumab群のほうが有意に低かった(816例[5.9%]vs 1,013例[7.4%]:0.80;0.73~0.88, p<0.001)。リスク低下は1年後16%,それ以降25%。
一次エンドポイント,主要二次エンドポイントの結果は,ベースラインLDL-C値が最も低かった第4四分位(中央値74mg/dL)例も含めたサブグループ解析でも一貫していた。
[有害事象]
全有害事象は両群とも77.4%,重篤な有害事象はevolocumab群24.8%,プラセボ群24.7%,試験薬関連と考えられ投与を中止したものは1.6%, 1.5%。
注射部位反応はevolocumab群のほうが多かったが(2.1% vs 1.6%;90%が軽度),糖尿病新規発症(8.1% vs 7.7%),神経認知イベント(1.6% vs 1.5%),アレルギー反応(3.1% vs 2.9%),筋関連イベント(5.0% vs 4.8%),白内障(1.7% vs 1.8%),アミノトランスフェラーゼの正常上限>3倍の上昇(両群とも1.8%),クレアチンキナーゼの正常上限>5倍の上昇(両群とも0.7%)は両群同等であった。
[その他]
虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(1.7% vs 2.1%, p=0.003),CTTC(Cholesterol Treatment Trialists Collaboration)複合エンドポイント(冠動脈疾患死,非致死的MI,脳卒中,血行再建術:9.2% vs 11.0%, p<0.001)はevolocumab群のほうが有意に少なかった。
evolocumab結合抗体の発現は43例(0.3%),中和抗体の発現は認められなかった。
★結論★スタチン治療へのPCSK9阻害薬evolocumabの追加によりLDL-Cは30mg/dL(中央値)まで低下し,心血管イベントリスクも低下した。ASCVD患者における現行LDL-C低下目標値の引き下げによるベネフィットが示された。
ClinicalTrials.gov No:NCT01764633
文献
  • [main]
  • Sabatine MS et al for the FOURIER steering committee and investigators: Evolocumab and clinical outcomes in patients with cardiovascular disease. N Engl J Med. 2017; 376: 1713-22. Epub 2017 Mar 17. PubMed
    Dullaart RP: PCSK9 inhibition to reduce cardiovascular events. N Engl J Med. 2017; 376: 1790-1. Epub 2017 Mar 17. PubMed
  • [substudy]
  • PAD患者はCVイベントの高リスクであるが,evorocumab群はプラセボ群よりCVリスクが有意に低下し,さらに同群でのLDL-C低下により主要有害肢イベントリスクも低下した。
    evorocumab群における末梢動脈疾患(PAD*)患者での有効性,安全性および主要な有害肢イベント(MALE)を評価した。* 間欠性跛行,足関節上腕血圧比(ABI)<0.85,末梢血行再建術および血管由来の切断既往。
    症候性の下肢PAD患者は3,642例(13.2%):ABI<0.85,症候性間欠性跛行は2,518例(69.3%),末梢血行再建術既往例が2,067例(56.8%),血管由来の切断歴が126例(3.5%),抗血小板薬投与例89%,スタチン治療:高強度69%;中強度30%,ezetimibe投与例は6.6%,心筋梗塞(MI)既往は1,812例(49.8%),脳卒中既往545例(15.0%),いずれかの既往を有するPAD例は2,137例,いずれの既往もないPAD例は1,505例(41%)。
    PAD例は非PAD例よりも高齢(64歳 vs 63歳)で女性が多く(28.2% vs 24.0%),危険因子(高血圧:84.9% vs 79.4%,現喫煙:36.4% vs 27.0%,腎機能障害:9.3% vs 5.5%,糖尿病:43.4% vs 35.5%)の既往,保有が多かった。一方,MI既往(85.9% vs 49.8%),PCI歴(58.7% vs 39.7%),脳卒中/一過性脳虚血発作既往(21.3% vs 18.8%)は非PAD例で多かった。プラセボ群のPAD患者は非PAD患者にくらべ,心血管イベントの高リスクだった(ハザード比:一次エンドポイント1.57[95%信頼区間1.36~1.80];主要二次エンドポイント1.81[1.53~2.14],いずれもp<0.001)。
    PAD患者のLDL-Cは,ベースライン94mg/dLから31mg/dLに低下した(中央値)。
    一次エンドポイントは,PAD患者(Kaplan-Meier 2.5年推定13.3% vs 16.8%:0.79;0.66~0.94, p=0.0098),非PAD患者(0.86;0.80~0.93, p=0.0003)のいずれでもevorocumab群でプラセボ群より有意に少なかった(交互作用p=0.40)。また,主要二次エンドポイントリスクも同様にPAD既往の有無を問わずevorocumab群のほうが低かった(交互作用p=0.41)。また同群ではMALEのリスクも42%低下し(0.27% vs 0.45%:0.58;0.38~0.88, p=0.0093),この低下はスタチン治療の強度によらず,相対リスクの低下はPAD患者(0.63;0.39~1.03),非PAD患者(0.37;0.16~0.88)でもみられた(交互作用p=0.29)。MI,脳卒中既往のないPAD患者でも同群でリスクが低かった(0.43;0.19~0.99, p=0.042)。さらに,達成LDL-C低値(10mg/dLまで)とMALEリスク低下に関係がみられた:Circulation. 2018; 137: 338-50. PubMed
  • evolocumab群での4週後のLDL-C超低値(<20mg/dL)達成例は10%で,<10mg/dLまではLDL-C低値と主要心血管リスクの低下に強い関連がみられ,2.2年(中央値)後の安全性に対する懸念は示されなかった。
    4週間後のLDL-C値を有し,一次エンドポイント非発生(4週後の発生例2%)の25,982例(94%:evolocumab群13,013例,プラセボ群12,969例)において,4週後のLDL-C値漸減と有効性,安全性の関係を評価した結果。
    LDL-C達成値は,<20mg/dL:2,669例(10%),20~<50mg/dL:8,003例(31%),50~<70mg/dL:3,444例(13%),70~<100mg/dL:7,471例(29%),≧100mg/dL:4,395例(17%)。
    達成LDL-C低値は有効性(一次・二次エンドポイントのリスク低下)と有意に関連した(LDL-C<10mg/dL低下までのβ係数は,一次エンドポイント:p=0.0012,二次エンドポイント:p=0.0001)。一次エンドポイントのリスクは達成LDL-Cが低値なほど低く,Kaplan-Meier 3年推定はLDL-C低値から順(<20~≧100mg/dL)に,10.3%, 12.4%, 13.6%, 13.7%, 15.5%(傾向p<0.0001),≧100mg/dL群を対照とした調整ハザード比(HR)はそれぞれ0.76, 0.85, 0.94, 0.97。
    一方で,4週後の重篤な有害事象は6,106件(24%)で,LDL-C低値との有意な関連はみられず,達成LDL-C値による違いもなかった(達成低値から順に,23%[調整オッズ比0.97],24%[1.01], 24%[1.01], 23%[0.93], 23%[対照])。また, LDL-C超低値群での投与中止に至る有害事象(4%, 4%, 4%, 3%, 3%)も増加しなかった。また標準上限>5倍のクレアチンキナーゼ上昇(全群1%),新規糖尿病発症(8%, 8%, 9%, 8%, 8%),肝機能などの安全性評価項目にもevolocumab群での増加はみられなかった。
    <post hoc解析>LDL-C最低値達成例(<15mg/dL:5%,<10mg/dL[中央値7mg/dL]:2%)でも心血管イベントリスクは低下し(<10mg/dL例の調整HRは一次エンドポイント0.69,二次エンドポイント0.59),投与中止に至る重篤な有害イベント,有害イベントの対照群とくらべた増加はなかった:Lancet. 2017; 390: 1962-71. Epub 2017 Aug 28. PubMed

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収載年月2017.03
更新年月2018.02