循環器トライアルデータベース

EXCEL
Evaluation of XIENCE versus Coronary Artery Bypass Surgery for Effectiveness of Left Main Revascularization

目的 欧米のガイドラインは左主幹部病変に対する血行再建治療としてCABGを推奨しているが,症例によっては薬剤溶出性ステントによるPCIが代替治療となり得ることがランダム化比較試験で示されている。
解剖学的複雑度が低度~中等度の非保護左主幹部病変患者において,everolimus溶出ステント(EES)使用のPCIがCABGに対し非劣性であることを検証する。

一次エンドポイントは,3年後の全死亡,脳卒中,心筋梗塞(MI)の複合エンドポイント。
コメント N Engl J Med. 2016; 375: 2223-35. へのコメント
EXCEL試験はSYNTAX score 32以下の非保護左主幹部疾患患者において,everolimus-eluting stentを用いたPCIのCABGに対する非劣性を検証する試験である。試験のデザインはSYNTAX試験からの教訓を上手に取入れている。一次エンドポイントは,冠動脈血行再建を含まない3年の死亡/心筋梗塞/脳卒中の複合エンドポイントで,冠動脈の解剖学的条件が複雑なSYNTAX score 33以上の患者は除外し,使用するステントはSYNTAX試験で用いられたTAXUS stentよりも明らかに優れた成績が報告されているbest-in-classの薬剤溶出性ステントeverolimus-eluting stentが選ばれている。
結果としては,3年の死亡/心筋梗塞/脳卒中の発生率は,PCI 15.4%,CABG 14.7%と,PCIのCABGに対する非劣性が示され,3年の死亡率もPCI 8.2%,CABG 5.9%と差を認めなかった。虚血に基づく冠動脈血行再建は12.6%,7.5%とPCI群でやや高かった。本試験において特筆すべきことは,これまでに施行されたPCI vs CABG trialsでは評価されてこなかった周術期の主要合併症にフォーカスを当てたことである。30日以内の心筋梗塞,大出血,輸血,不整脈,予定外の手術処置,腎不全,胸骨離開,感染,長期挿管などの合併症は,CABG群でPCI群よりも遥かに高率にみられた。冠動脈の治療にあたって患者が真に避けたいものは,これらの周術期合併症である。3年の生存率が同等であれば,全身麻酔,胸骨正中切開を要するCABGよりも,意識下の橈骨動脈穿刺により1時間程度で終了し,手技直後から歩行可能なPCIを選択することは当然であろう。EXCEL試験の結果を受けて,PCIにより十分満足のいく血行再建が達成できる見通しのある非保護左主幹部疾患患者に対するPCIは, Class 1と位置づけられる。(木村
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(17か国126施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3年(中央値)。
登録期間は2010年9月29日~’14年3月6日。
対象患者 1,905例。18歳以上,非保護左主幹部に血管造影上の目視による≧70%狭窄を有する患者,または狭窄率50~<70%で左主幹部の血行動態不安定による虚血の非侵襲的根拠・IVUS評価の最小血管面積≦6.0mm²・冠血流予備比(FFR)≦0.80のいずれか1つ以上に該当する患者,あるいは左主幹部病変に相当する疾患のある患者で,施設評価の解剖学的複雑度が低度~中等度(SYNTAXスコア≦32),PCI・CABGの適応に関しインターベンション医と心臓外科医から成るハートチームの合意がえられたもの。
除外基準:左主幹部のPCI既往,1年以内の左主幹部以外の病変に対するPCI,CABG既往,左主幹部狭窄率<50%で左主幹部病変相当疾患がないもの,目視による推定血管径<2.25mmまたは>4.25mmなど。
■患者背景:平均年齢(PCI群66.0歳,CABG群65.9歳),男性(76.2%, 77.5%),糖尿病(30.2%, 28.0%),高血圧治療例(74.5%, 73.9%),高脂血症治療例(71.5%, 69.3%),現喫煙(24.1%, 20.8%),既往(MI:18.1%, 16.9%,PCI:18.4%, 15.9%,脳卒中・一過性脳虚血発作:5.5%, 7.0%),末梢動脈疾患(10.3%, 8.8%),BMI(28.6, 28.8kg/m²),腎機能障害(17.6%, 15.4%),貧血(26.9%, 22.6%)。
臨床所見:発症後7日以内の亜急性MI(15.0%, 14.8%;非ST上昇型:13.2%, 12.9%),不安定狭心症(24.2%, 24.6%),安定狭心症(53.1%, 53.2%)。
解剖学的複雑度:施設評価(低度[SYNTAXスコア≦22]:59.2%, 61.8%,中等度[23~32]:40.8%, 38.2%),中央評価(914例,957例)(低度:32.2%, 39.3%,中等度:42.8%, 37.3%,高度[≧33];25.1%, 23.4%),遠位左主幹部分岐部病変80.5%,2~3枝病変51.3%。
治療法 PCI群(948例):フッ素ポリマー使用コバルトクロム製EES留置による全虚血領域の完全血行再建を目指した。IVUSガイド下での施行を強く推奨。周術期のheparin,bivalirudinの使用は許可したが,GP IIb/IIIa受容体拮抗薬は推奨しなかった。抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)をPCI前に開始し,手技後≧1年継続。
CABG群(957例):オンポンプ・オフポンプは問わず,狭窄率≧50%、血管径≧1.5mmの全血管の解剖学的完全血行再建を目指した。動脈グラフトの使用を強く推奨。上行大動脈,心室・弁機能の評価に経大動脈壁エコー,経食道心エコーを推奨した。
目視による推定狭窄率≧50%の左主幹部病変でその他の登録基準を満たさなかったスクリーニング開始からの連続症例1,000例(CABG 648例,PCI 331例,非施行21例)を,登録コホートとした。
結果 [手技成績]
PCI群での血行再建術施行例は942例,うちPCIを最初に施行したのは935例。治療病変数1.9/患者,使用ステント数2.4/患者,総ステント長49.1mm。EES留置例は99.2%。治療血管は,左主幹部100%,左前下行枝28.3%,左回旋枝16.6%,右冠動脈26.7%で,77.2%がIVUSガイド使用。
CABG群での血行再建術施行例は940例,うちCABGを最初に施行したのは923例。使用グラフト数は2.6/患者(動脈1.4,静脈1.2),内胸動脈グラフト使用98.8%,オフポンプCABG 29.4%。バイパス作成血管は,左前下行枝98.8%,左回旋枝88.2%,右冠動脈37.8%。
ランダム化から手技までの時間はPCI群3.3日,CABG群6.7日,手技時間はそれぞれ83分,243分,手技後入院期間は5.4日,12.7日。
[一次エンドポイント]
PCI群のCABG群に対する非劣性が認められた(15.4% vs 14.7%;群間差0.7%;97.5%信頼区間上限4.0%;非劣性マージン4.2%, p=0.02) 。
年齢,性別,糖尿病の有無,腎機能などのサブグループでも結果は一貫していた。
[二次エンドポイント]
3年後のPCI群のCABG群に対する優越性は認められなかった(ハザード比1.00[HR];95%信頼区間0.79~1.26,優越性p=0.98)。
30日後の全死亡,脳卒中,MIの複合エンドポイント(4.9% vs 7.9%),3年後の複合エンドポイント+虚血による再血行再建術(23.1% vs 19.1%)についても,PCI群のCABG群に対する非劣性が示された(それぞれ非劣性p<0.001, p=0.01,優越性p=0.008, p=0.10)。
一次エンドポイントの構成イベントには有意な両群間差はなかったが(死亡:8.2% vs 5.9%,心血管死:4.4% vs 3.7%,脳卒中:2.3% vs 2.9%,MI:8.0% vs 8.3%),周術期MI(3.8% vs 6.0%, p=0.03),ST上昇型MI(1.3% vs 2.8%, p=0.02)はCABG群のほうが有意に多く,自然発症MIはPCI群に多かった(4.3% vs 2.7%, p=0.07)。
30日~3年後のpost hoc landmark解析では,一次エンドポイントはPCI群のほうが多かった(11.5% vs 7.9%, p=0.02)。
虚血による再血行再建術はPCI群のほうが多かったが(12.6% vs 7.5%*),同群のdefiniteステント血栓症はCABG群の症候性グラフト閉塞にくらべ有意に少なかった(0.7% vs 5.4%)。
TIMI基準の大・小出血もPCI群のほうが少なかった(3.7% vs 9.0%*)。
30日以内の主要周術期有害イベントはPCI群のほうが少なく(8.1% vs 23.0%*),これは主に重大な不整脈(2.1% vs 16.1%*),抗菌薬が必要な感染症(2.5% vs 13.9%*),2単位以上の輸血(4.0% vs 17.0%*)が同群で少なかったためであった。* p<0.001
★結論★施設評価によるSYNTAXスコアが低度~中程度の左主幹部病変患者において,3年後の死亡,脳卒中,心筋梗塞の複合エンドポイントでのEESを用いたPCI群のCABG群に対する非劣性が示された。
ClinicalTrials.gov No: NCT01205776
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the EXCEL trial investigators: Everolimus-eluting stents or bypass surgery for left main coronary artery disease. N Engl J Med. 2016; 375: 2223-35. PubMed
  • [substudy]
  • 施行から3年後の新規発症心房細動(NOAF)はCABG群では約20%だったが,PCI群では1例のみだった。NOAFはCABG群でその後の死亡,脳卒中と強く関連した。
    PCI,CABG施行から3年後のNOAFの頻度の予後への影響を検討した。
    ベースライン時の非AF例(1,812例)のうち血行再建術施行から2.7日後のNOAF発症は,PCI群(1/919例[0.1%])のほうがCABG群(161/893例[18.0%])より有意に少なかった(p<0.0001)。NOAF例は非NOAF例より有意に高齢(69.0 vs 65.4歳)だった。
    CABG群におけるNOAFの独立した予測因子は,高齢,高BMI,低EF。
    退院までにNOAF例の85.8%が緩解し,うち電気的除細動は20例。入院期間はNOAF例のほうが有意に長く(14.3日 vs 8.3日,p<0.0001),退院時の抗凝固薬・抗不整脈薬・利尿薬治療例が多かった。
    入院中のNOAF例は30日後のTIMI基準大・小出血リスクは非NOAF例より有意に高く(14.2% vs 5.5%, p<0.0001),多変量解析後の死亡+心筋梗塞(MI)+脳卒中複合リスクもNOAF例のほうが高かった。
    さらに,大・小出血に加えNOAFは3年後の全死亡,心血管(CV)死,脳卒中および複合(死亡+MI+脳卒中)エンドポイントリスクの上昇と関連した。CABG後のNOAFは3年後の脳卒中(6.6% vs 2.4%:調整ハザード比[HR]4.19;95%信頼区間1.74~10.11, p=0.001),全死亡(11.4% vs 4.3%:3.02;1.60~5.70, p=0.0006),複合エンドポイント(22.6% vs 12.8%:2.13;1.39~3.25, p=0.0004)の独立した予測因子だった。非NOAF例にくらべたNOAF例の3年後のCV死リスクの上昇は,脳卒中死(2.6% vs 0.6%)および心不全関連死(1.9% vs 0.4%)リスクの有意な上昇によるものだった。入院中のNOAF例で追跡中に脳卒中を発症した10例のうち5例は抗凝固療法(warfarinあるいは新規経口抗凝固薬)非実施例だった。NOAF例において3年後の複合エンドポイントはPCI群のほうがCABG群より有意に少なく(CABG群のPCI群にくらべたHR:1.79;1.21~2.65, p=0.004),一方でNOAF非発症例では両群間に有意差はなかった(0.91;0.07~1.22, p=0.54):J Am Coll Cardiol. 2018; 71: 739-48. PubMed
  • 1か月後のQOLはPCI群(第二世代everolimus溶出ステント)のほうがCABG群よりも有意に良好だったが,36か月後は両群同等だった。
    血行再建術によるQOLの改善を検証するサブスタディ(1,788例:PCI群892例,CABG群896例)。
    1・12・36か月後のQOL改善におけるPCI群とCABG群の差をSeattle Angina Questionnaire (SAQ), the 12-Item Short Form Health Survey (SF-12), Rose Dyspnea Scale (RDS), Patient Health Questionnaire-8 (PHQ-8), EQ-5Dを使用して,長期ランダム効果成長曲線モデル(longitudinal random-effect growth curve models)で評価した。
    狭心症(/日,週)はおよそ40%,中等度以上の呼吸困難(RDS≧2)は47%,全般的な健康の指標SF-12(physical component summary)はおよそ38(国の平均より約1 SD低値),また有意な抑うつ症(PHQ-8≧10)が21%。
    両群とも1か月後のSAQ-AF(angina frequency)がベースラインより>20ポイント増加し,PCI群ではQOL(狭心症の症状および精神状態を含む全般的健康)が有意に改善し,この改善は12・36か月後も持続してみられた。一方,CABG群では1か月後の改善は小さい,あるいは健康状態の悪化がみられたものの12・36か月後は有意に改善し,12か月後にはPCI群のCABG群にくらべた有意な優越性はほとんど消滅し,36か月後のQOLに有意な両群間差はみられなかった。36か月後の心血管死,全死亡,心筋梗塞,脳卒中に有意な両群間差はなかったが,虚血による再血行再建術リスクはPCI群のほうが有意に高かった(12.6% vs CABG群7.2%, p<0.01)。
    結論●3年後の臨床転帰の結果を合わせると,左主幹部病変患者におけるPCIとCABGは同等であることが示唆された:J Am Coll Cardiol 2017; 70: 3113–22. PubMed

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収載年月2017.01
更新年月2018.03