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DANAMI 3-DEFER

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,梗塞責任血管の血流が安定し,末梢塞栓のリスクが減じるまでステント留置を遅らせるdeferredステント留置は,標準的なprimary PCIにくらべ心筋血流の低下を抑制し,臨床転帰を改善するかを検証する。

一次エンドポイントは,2年以内の全死亡,心不全による入院,心筋梗塞(MI)再発,予定外の標的血管再血行再建術(TVR)の複合エンドポイント。
本試験はデンマークの4施設が参加したDANAMI 3プログラム(Am Heart J 2015; 169: 613-21. PubMed)の一つで,ほかに責任血管のみへのprimary PCIとFractional Flow Reserveガイドによる完全血行再建を比較するDANAMI 3-PRIMULTI,虚血性ポストコンディショニングを評価するDANAMI 3—POSTCONが行われている。
コメント STEMIに対するprimary PCI(primary stenting)に際して, 5-10%の頻度で出現する血栓・プラークによる遠位塞栓・no flow/slow flowは,予後に重大な影響を与える最も懸念すべき合併症である。DANAMI 3-DEFERはいくつかの少数例でのpositive dataを背景に,発症時には小径バルーンや血栓吸引で血流を確保し,2日後にステント留置して局所治療を完了する戦略(deferred stent)の是非を検討したランダム化試験である。
結果としては,現在標準治療として行われているprimary stentingの牙城は崩せなかった。ステント留置へのクロスオーバーは 22%もあり,さらに血流を温存するのが目的のはずのdefered群で, PCI後のTIMI flowに差をつけられなかった時点で勝敗は決したように思われる。
結局,「現行の標準治療であるprimary stentingの治療方針に変更の必要なし」というのがメッセージである。
以下に私見を述べる。
しかしこれでは依然として 5-10%の遠位塞栓・no flow/slow flowを許容することになってしまう。
これまでも同じ志で描かれた血栓吸引・distal protectionがランダム化試験でことごとく否定されてきた。しかし実臨床では「リスクが高い」と思われる病変に対して,依然としてこれらのデバイスが併用されている。
血栓吸引・distal protectionは,急性期に局所の血栓量を減らすあるいは水際で捕捉することでPCI(stenting)による塞栓予防・no flow/slow flow回避を目的とする。またdeferred stentはある程度の血流を確保して時間を稼ぎながら,その冠血流によって血栓の溶解・容積減少を期待するstrategyである。しかし,STEMIにおいて局所にできた血栓は症例ごとに異なるため,これらの strategyを検討するのにall-comer試験はそぐわないように思う。なぜなら血栓量の少ない病変も含む検討では,その効果が薄まってしまう。末梢に飛散する(かも知れない)プラークについてもまたしかりである。
要するに「リスクが高い」と思われる病変をどう層別化するか,という科学的視点が必要であり,こうした strategyは「リスクが高い」病変のみを対象に検討してこそ,その真価が明確となるはずである。また同時に,いかなる病変なら再閉塞することなくステント留置を先送りできるか,の検証も必要である。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(デンマークの4施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値は42か月。
登録期間は2011年3月1日~’14年2月28日。
対象患者 1,215例。>18歳,胸痛発現後12時間未満,連続2誘導以上で≧0.1mVのST上昇・新規左脚ブロックを認める患者。非梗塞関連動脈≧1枝に冠動脈造影上の≧50%狭窄を認める患者はDANAMI-3-PRIMULTI試験にも参加。
除外基準:造影剤・抗凝固薬・抗血小板薬不忍容,意識不明・心原性ショック,ステント血栓症,急性CABG適応,出血リスク上昇例など。
■患者背景:年齢中央値(deferredステント群61歳,標準PCI群62歳),男性(76%, 74%),糖尿病(両群とも9%),高血圧(両群とも41%),現喫煙(54%, 51%),梗塞部位(前壁:42%, 47%,下壁:53%, 48%,左脚ブロック:両群とも<1%)。
・手技背景:ステント非留置*(15%, 3%),橈骨アクセス(6%, 4%),治療枝数*(両群とも中央値1枝),留置ステント数*(両群とも1),ステント径(両群とも中央値3.5mm),総ステント長*(中央値18mm, 22mm),GP IIb/IIIa阻害薬使用*(35%, 16%),血栓吸引(63%, 58%),TIMI flow(PCI前0:33%, 34%, 1:5%, 4%, 2:25%, 26%, 3:38%, 37%;PCI後0:両群とも<1%, 1:1%, <1%, 2:両群とも3%, 3:両群とも96%)。
・退院時背景:KillipクラスII~IV(両群とも7%),EF(両群とも中央値50%),aspirin(両群とも98%),clopidogrel(両群とも20%),prasugrel(両群とも58%),ticagrelor(両群とも21%),スタチン(両群とも98%),β遮断薬(92%, 90%),ACE阻害薬/ARB(41%, 44%)。 * p<0.0001
治療法 病院到着時の冠動脈造影で責任血管のTIMI flow 0~1の場合,必要であれば血栓除去とアンダーサイズでのバルーン拡張を実施し,TIMI flow 2~3を確保。TIMI flow 2~3の患者については医師に一任した。
deferredステント群(603例):病変の安定を確認してからシースを除去し,GP IIb/IIIa拮抗薬またはbivalirudinを4時間以上静注。初回造影から約48時間後に2回目の造影を実施。血流が安定している(残存狭窄<30%,重大な血栓なし,目視で解離なし)場合はステントを留置せず,さらに3か月後の冠動脈造影を推奨した。
標準PCI群(612例):primary PCIを実施。薬剤溶出性ステントの留置を推奨。
結果 [治療]
deferred ステント群での2回目の冠動脈造影実施は中央値3日後で,責任病変が基準を満たし安定していたためステントを留置しなかったのは85例(14%)。
急性期のクロスオーバーはdeferred ステント群131例(22%),標準PCI群9例(1%)。
[一次エンドポイント]
両群間に有意差はなかった(deferred ステント群105例[17%] vs 標準PCI群109例[18%]:ハザード比0.99;95%信頼区間0.76~1.29, p=0.92)。
全死亡(7% vs 9%),心不全による入院(4% vs 5%),非致死的MI再発(両群とも7%)に有意差はなかったが,予定外のTVRはdeferred ステント群のほうが多かった(7% vs 4%:1.70;1.04~2.92, p=0.0342)。
per-protocol, as-treated解析の結果も変わらなかった。
[その他]
心臓死(両群とも4%),PCIによるTVR(5% vs 3%),CABGによるTVR(1% vs <1%)に有意差はなかった。
中央値18か月後の心エコー実施は64%で,平均EFはdeferred ステント群のほうが高かった(54.8% vs 53.5%, p=0.0431)。
DANAMI 3-PRIMULTIの試験治療(完全血行再建術)との交互作用は認められなかった。
[有害事象]
手技関連合併症は27例(4%)vs 28例(5%)で,MI(両群とも<1%),輸血・手術を要する出血(2% vs 1%),造影剤腎症(両群とも2%),脳卒中(両群とも1%)に差はなかった。
★考察★STEMI患者において,ルーチンのdeferredステント留置による標準PCIとくらべた死亡,心不全,MI再発,再血行再建術の低下は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No:NCT01435408
文献
  • [main]
  • Kelbæk H et al: Deferred versus conventional stent implantation in patients with ST-segment elevation myocardial infarction (DANAMI 3-DEFER): an open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2016; 387: 2199-206. PubMed

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収載年月2016.10