循環器トライアルデータベース

VANISH
Ventricular Tachycardia Ablation versus Escalated Antiarrhythmic Drug Therapy in Ischemic Heart Disease

目的 死亡リスクを高める心筋梗塞(MI)後の瘢痕による心室頻拍(VT)は,植込み型除細動器(ICD)により効果的に停止できる。しかし,不整脈再発やICDショック治療はQOL低下や予後の悪化につながるため,抗不整脈薬(AAD)治療が行われることが多い。AAD治療にもかかわらずVTを再発した場合の治療選択肢はアブレーションかAAD治療の強化であるが,もっとも効果的なアプローチは明らかでない。
ICD植込み後AAD治療下でVTを発現した虚血性心筋症患者において,カテーテルアブレーションとAAD治療強化を比較する。

一次エンドポイントは,死亡,30日間治療後のVTストーム(≧3回/24時間のVT発現),適切なICDショックの複合エンドポイント。
コメント 心筋梗塞(MI)後のVTの治療には抗不整脈薬(AAD),ICDあるいは両者の併用が選択される。併用によってもVTを再発する例に対する有効な治療は必ずしも明らかになっているとはいえない。これまでの研究(VTACH[Lancet. 2010; 375: 31-40. PubMed.],SMASH-VT)では,アブレーションの有効性は示されているが,対照群は追加治療なしとされたもので,アブレーションの有効性をAADと比較したものではなかった。
本研究の結果は,MI後のAAD投与下にVTが生じた例において,アブレーションのほうがAAD強化治療にくらべて予後が良かったとするものであるが,その効果は主にVTストームとICD作動の減少による。死亡については両群では同等の結果であった。MI後のVTでAADが無効な例ではアブレーションが治療の選択肢となるが,本研究ではアミオダロン以外のAADが使用されていた例では,アミオダロンに変更することによってアブレーションと同等の効果が得られていることを忘れてはならない。また,ICD作動を減らすプログラミング(例えば,MADIT-RITで採用されているもの)が本研究では採用されていない点にも考慮が必要であろう。(井上
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded endpoints),多施設(カナダ,米国,欧州,オーストラリアの22施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は27.9か月。
登録期間は2009年7月~’14年11月,追跡は’15年11月まで。
対象患者 259例(うち250例がカナダ)。MI後にICDを植込み,6か月間にamiodaroneまたはその他のI・III群AAD治療下でVTを1回発現した患者。VTは単形性,レート<250拍/分で,次のいずれかに該当するものと定義:抗頻拍ペーシング(ATP)で治療したVT≧3回で,うち≧1回が症候性;適切なショック≧1回;≧3回/24時間のVT発現;設定検出レートを下回るレートでの持続性VT。
除外基準:急性冠症候群,クレアチニンクリアランス<15mL/分,NYHA心機能分類IV度あるいはCCS class IVの狭心症,ST上昇型MI発症後<1か月,CABG後<3か月,PCI後<1か月など。
■患者背景:平均年齢(アブレーション群67.0歳,AAD強化群70.3歳),男性(93.2%, 92.9%),直近のMI後の経過時間(両群とも15.7年),PCI歴(37.9%, 48.8%),CABG歴(47.7%, 43.3%),糖尿病(28.0%, 31.5%),高血圧(69.7%, 69.3%),腎機能不全(17.4%, 20.5%),心房細動・粗動(39.4%, 37.0%),NYHA(II度:52.3%, 53.5%;III度:22.7%, 24.4%),EF(31.1%, 31.2%),二腔ICD(45.5%, 48.0%),CRT(22.0%, 17.3%),NT-proBNP(1,010.3, 937.3pg/mL)。
VT発現時の服用薬:amiodarone(64.4%, 66.1%),sotalol(34.8%, 33.9%),β遮断薬(93.9%, 96.1%),ACE阻害薬(64.4%, 65.4%),ARB(23.5%, 22.0%),利尿薬(68.2%, 70.1%), digoxin(20.5%, 19.7%), aspirin(83.9%, 75.9%), warfarin(39.5%, 37.5%)。
治療法 アブレーション群(132例):ランダム化後14日以内に,すべての誘発VTを標的としたカテーテルアブレーションを施行。ベースライン時のAADは継続。
AAD強化群(127例):VT発現時amiodarone<300mg/日投与例はamiodarone増量(400mg 2回/日2週間,400mg/日1週間,以後300mg/日),≧300mg/日投与例はIb群薬のmexiletineを追加(200mg 3回/日)。VT発現時amiodarone以外のAAD投与例はamiodaroneを投与(400mg 2回/日2週間,400mg/日4週間,以後200mg/日)。
結果 アブレーション群の手技非施行は3例,脱落4例,心臓移植3例,AAD強化群は全例が治療を実施,脱落は4例。クロスオーバーはアブレーション群4例,AAD群11例。
[一次エンドポイント]
アブレーション群のほうが有意に少なかった(78例[59.1%]vs AAD強化群87例[68.5%]:ハザード比0.72;95%信頼区間0.53~0.98, p=0.04)。
同群は適切なICDショック(37.9% vs 42.5%, 0.77;0.53~1.14),VTストーム(24.2% vs 33.1%, 0.66;0.42~1.05)が少ない傾向であったが,死亡はAAD強化群と同等で(36例[27.3%]vs 35例[27.6%]),心血管死は24例,26例で,うっ血性心不全による死亡が多かった(17例,18例)。
[その他]
検出レートを下回るレートの持続性VTはアブレーション群のほうが少なかった(全期間:3.0% vs 10.2%, p=0.02)。
30日治療後の適切なATPは両群ともに半数以上が実施(58.3% vs 61.4%),不適切なICDショック(9.8% vs 8.7%),心疾患による入院(25.0% vs 30.7%)に群間差はみられなかった。
[サブ解析]
VT発現時amiodarone非投与例では一次エンドポイントに群間差はみられなかったが,amiodarone投与例ではアブレーション群のほうが有意に少なかった(p=0.001;交互作用p=0.03)。施設の登録症例数など,他のサブグループでは有意な交互作用を認めなかった。また,死亡リスクにamiodarone投与例と非投与例の差はなかった。
[有害事象]
治療関連有害事象はAAD強化群のほうが多かった(39例・51件 vs 20例・22件)。
AAD強化群では,AAD関連死が3例(肺毒性2例,肝機能不全1例),非致死的肝機能不全,振戦・運動失調,副作用による治療変更が多かった(いずれも0例 vs 6例)。大出血(3例 vs 1例),血管損傷(3例 vs 0例),心穿孔(2例 vs 1例),房室ブロック(1例 vs 0例)などの手技合併症はアブレーション群のほうが多かった。
★結論★ICD植込み後のAAD治療下でVTを発現した虚血性心筋症患者において,死亡,VTストーム,適切なICDショックはアブレーション追加群のほうがAAD強化群より有意に少なかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00905853
文献
  • [main]
  • Sapp JL et al: Ventricular tachycardia ablation versus escalation of antiarrhythmic drugs. N Engl J Med. 2016; 375: 111-21. PubMed
    Cain ME and Curtis AB: Recurrent ventricular tachycardia--more drugs or bring out the catheter? N Engl J Med. 2016; 375: 173-4. PubMed

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収載年月2016.09