循環器トライアルデータベース

OCTAVIA

目的 弾性ストッキング(ECS)による圧迫療法は深部静脈血栓症(DVT)患者において,発症後に抗凝固療法を実施しても2~3人に1人は発症する血栓後症候群(PTS)予防に使用されているが,至適な治療期間は明らかになっていない。現行ガイドラインは24か月の使用としているが,最近の研究はそれに疑問を呈し,より短い使用期間が示唆されている。
ECS治療を12か月実施している近位部DVT患者において,12か月中止がPTS予防において24か月の継続治療に対し非劣性であるという仮説を検証する。

一次エンドポイントは,追跡終了時(診断から2年目)のVillaltaスケールで評価したPTS(スコア≧5ポイントあるいは静脈性潰瘍)の発症。
コメント 日本では静脈血栓塞栓症の発症は少ないが,血栓性素因の症例など近位部の血栓が持続している症例では血栓後症候群に稀に遭遇する。入院,安静のみにて静脈血栓症を発症する欧米人と異なり,日本人ではプロテインS欠損などの血栓性素因の症例に静脈血栓性塞栓症が集中している。本試験では弾性ストッキングの長期使用による静脈血栓後症候群発症予防効果の有無の検証を目的としているが,結構きつい弾性ストッキングを2年間使用するのは日常生活への負荷が大きい。静脈血栓後症候群の正確な発症率を示す臨床データは不十分である。静脈血栓後症候群を規定する因子が自覚的症状であるため客観的評価も困難である。本試験はBMJに発表されたランダム化比較試験ではあるが,日本の臨床におよぼすインパクトは極めて低い。(後藤
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(オランダの8教育病院の外来),intention-to-treat(ITT)解析。
期間 追跡期間は1年
実施期間は2009年2月~’13年9月。
対象患者 518例。圧迫超音波で確認された症候性の下肢近位部DVTの診断から1年未満で,ガイドラインに即した抗凝固療法を実施し,段階的に圧迫されるECS(クラスIII;34~46mmHg)着用患者のうちコンプライアンス良好(≧6日/週着用)例。
除外基準診断前の:同側DVT再発例,腓腹部静脈血栓症,他の原因に対するDVTECS使用など。
■患者背景:平均年齢(ECS中止群57歳,ECS継続群56歳),男性(両群とも59%),BMI(両群とも28kg/m²),DVT診断前の症状持続期間:両群とも中央値5日),静脈血栓塞栓症既往(両群とも15%),再発の持続的な危険因子がないVTE(56%, 62%);原因:<8週間の外傷(22%, 23%),<8週間の全身麻酔による手術(両群とも13%),妊娠,分娩後,ホルモン補充療法(22%, 24%),静脈瘤既往(14%, 11%),現・過去の喫煙(両群とも26%),左下肢DVT(62%, 55%),DVTの最近位部;腸骨静脈(9%, 10%),総大腿静脈(17%, 12%),浅大腿静脈(23%, 21%),膝窩静脈(51%, 58%),Villaltaスコア(1.9, 1.8)。
・治療背景:ECS着用頻度≧6日/週(91%, 95%),抗凝固薬投与例(15%, 14%),ビタミンK拮抗薬(VKA)に変更した患者での低分子量heparin・heparin投与期間中央値(10日,12日),VKA投与期間中央値(両群とも6か月)。
治療法 診断から1年後の外来受診時にスクリーニングを実施した。
ECS中止群(256例)。
ECS継続群(262例):ECS着用は昼間のみとし,特定の腓腹筋の運動や指示は不可とした。
結果 追跡不能例は,ECS中止群,継続群いずれも6例(2.3%),同意撤回は13例(5.1%),6例(2.3%)。
[一次エンドポイント]
PTSはECS中止群51例,継続群34例。
DVT発症から2年目のPTS発症率はECS中止群のほうが継続群よりも高く,非劣性は示されなかった(19.9%[95%信頼区間(CI)16~24] vs 13.0%[9.9~17]:絶対差6.9%;95%CI上限12.3%[非劣性マージン10%,調整ハザード比1.6])。
ECS継続群のNNTは14。
PTS発症数は軽度(Villaltaスコア5~9)が中止群43例(84%),継続群31例(91%),中等度(10~14)が8例(16%),2例(6%),重度(>14または静脈性潰瘍)が0例,1例(3%)。
per protocol解析結果もITT解析結果と同様であった(19.1% vs 12.0%:7.1%;95%CI上限13%, 1.4)。
[二次エンドポイント]
ECSのアドヒアランス解析例はECS継続群218例で,うち85%が6~7日/週着用,4~5日/週が7%,<4日/週が8%であった。
追跡終了時のVEINES-QOL・VEINES-Sym質問票によるQOL(中止群186例,継続群212例)は,中止群(中央値:QOL; 96, Sym; 95)で非有意ながら低下,継続群(96, 95)では両スコアともやや改善したが,患者内変化(中止群:-0.15, -1.1,継続群:0.93, 0.58)に有意な両群間差はなかった。
全死亡は中止群が2例,継続群0例。
同側DVT再発は14例(8例[3.1%],6例[2.3%])。
ECSの圧迫段階(クラス)は一次・二次エンドポイントに影響しなかった。
★結論★弾性ストッキング使用のアドヒアランスが良好なDVT患者において,1年間使用の2年間使用に対する非劣性は認められなかった。
文献
  • [main]
  • Mol GC et al: One versus two years of elastic compression stockings for prevention of post-thrombotic syndrome (OCTAVIA study): randomised controlled trial. BMJ. 2016; 353: i2691 PubMed

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収載年月2016.09