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OBSERVANT
Observational Study of Effectiveness of SAVR–TAVI Procedures for Severe Aortic Stenosis Treatment

目的 高度大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術(SAVR)の有効性をリアルワールドで比較したデータは少ない。
高度ASにおけるTAVRとSAVRの有効性を評価しているイタリアの観察研究OBSERVANTのデータを用いて,経大腿動脈アプローチによるTAVR(第3世代デバイス)とSAVRの1年後の転帰をプロペンシティスコアマッチング法で比較する。

一次エンドポイントは,1年後の全死亡および主要有害心脳血管イベント(MACCE:全死亡,脳卒中,心筋梗塞,PCI,CABG)。
コメント 高度ASは75歳以上の2-4%にみられる。高度ASに対するSAVRは確立された治療法であるが,手術に伴う死亡率は高齢者では比較的高い。高度ASのハイリスク症例にTAVRが用いられつつあるが,リアルワールドでのSAVRとTAVRの比較研究は少ない。今回イタリアの登録研究で傾向スコアマッチング法により1年後の臨床転帰を,大腿動脈アプローチによるTAVR群とSAVR群で対比した結果,全死亡率を含めた主要エンドポイントでは差がなかった。
母集団比較ではSAVRよりもTAVRのほうがハイリスク群であり,SAVRのハイリスク群とTAVRの中等度リスク群は手術リスクとしては同等で,これらの症例が選ばれて解析されている。SAVRと異なってTAVRでは長期成績の報告は少ないことが今後の問題であり,ランダム化試験(SURTAVIやPARTNER 2)の結果が楽しみである。1年後の全死亡率は13.6%,13.8%と同等であるが,日本の成績より悪く,この差は手術リスク度の相違のみでは説明できない。SAVRは手術リスク度と死亡率が単純に比例するが,TAVRは必ずしも比例せず,血管合併症などの手技と関連するイベントが死亡率と関係する。本研究のTAVRとU.S. CoreValve studyとは1年後の死亡率は同じであるが,手術リスク度は2倍程度異なっており,TAVR手技のラーニングカーブや患者選択が死亡率と関連しうる。
TAVR手技に伴う脳卒中の頻度は低下しており,デバイスの改良が功を奏している。ペースメーカー植え込みはTAVR群で18.5%と非常に高い。ただし植込み基準が海外と日本では異なっている。本研究に対するドイツのGARY registryでは,2012年ですでにAS手術の1/3以上がTAVRであり,日本でもTAVRの適応基準が自然と緩和されていくと思われる。CABG例の長期予後をSTSスコアやASCERT研究で作成されたモデルで算出できるように,OBSERVANTやGARY registryを用いてAS術後の長期予後を算出できる計算式が作成されれば,AS術式の選択に役立つであろう。問題はこの計算式が日本人にあてはまるか否かであり,日本と海外のregistryデータの相違をまず明らかにしたい。(星田
デザイン 前向きコホート研究,多施設(93施設)。
期間 追跡期間は1年。
登録期間は2010年12月~’12年6月。
対象 1,300例。経大腿動脈アプローチによるTAVR・SAVRを施行した重度AS連続症例のうち,プロペンシティスコアでマッチングしたもの。
除外基準:大動脈石灰化,CABG・PCI併用など。
■患者背景(マッチングコホート):年齢(SAVR群80.3歳,TAVR群80.5歳),女性(59.5%, 58.9%),喫煙歴(11.5%, 10.1%),BMI(26.9kg/m², 26.5kg/m4),糖尿病(25.4%, 24.8%),クレアチニン(両群とも1.2mg/dL),アルブミン(3.7g/dL, 3.5g/dL[p=0.006],ヘモグロビン(12.3g/dL, 11.7g/dL[p<0.001],慢性閉塞性肺疾患(21.7%, 22.3%),酸素依存(1.7%, 5.6%[p=0.001]),末梢動脈疾患(19.4%, 19.1%),肺高血圧症(両群とも14.6%),フレイルスコア中等度~重度(13.5%, 13.1%),PCI既往(13.1%, 14.5%),NYHA心機能分類III度(48.9%, 49.8%), Logistic EuroSCORE(1:10.2%, 9.5%, 2:5.1%, 4.9%),緊急処置(4.0%, 3.1%)。
・心エコー所見:EF(54.2%, 53.6%),僧帽弁逆流(軽度:56.5%, 53.5%,中等度:21.2%, 22.0%),大動脈弁口面積(両群とも0.7cm²),最大圧較差(82.1mmHg, 82.7mmHg),弁輪径(21.3mm, 22.2mm[p<0.001])。
調査方法 5,468例(SAVR施行例[4,077例], 経大腿動脈アプローチによるTAVR施行例[1,391例])から,プロペンシティスコアでマッチングした各群650例を解析した。
全例,第3世代デバイスを使用。
結果 TAVR群の使用弁は,CoreValve 55.1%,SAPIEN XT 44.9%。
[急性期および30日後の転帰]
TAVR群はSAVR群にくらべ,周術期の急性腎不全(SAVR群10.9% vs TAVR群6.1%,p=0.004),赤血球輸血(3.6単位 vs 2.3単位,p=0.002)が少なく,入院日数が短かったが(12.6日 vs 8.8日*),アクセス部位合併症(0.5% vs 7.9%;p<0.001),永久ペースメーカー植込み(3.6% vs 15.5%*)が多く,手技後は,大動脈弁圧較差が低かったものの(13.6mmHg vs 10.3mmHg*),大動脈弁逆流が多かった(グレード≧2;2.0% vs 9.8%*)。
死亡(入院中:3.4% vs 2.0%,30日後:3.8% vs 3.2%),脳卒中(2.2% vs 1.3%),急性心筋梗塞(AMI)(0.8% vs 0.5%),心タンポナーデ(3.9% vs 4.1%)に差はなかった。
[一次エンドポイント]
1年後の全死亡率(SAVR群13.6% vs TAVR群13.8%:ハザード比0.99;95%信頼区間0.72~1.35),MACCE(17.6% vs 18.2%:1.03;0.78~1.36)は両群同等であった。
[二次エンドポイント]
1年間の脳卒中累積発生率(4.9% vs 6.4%),AMI(3.8% vs 3.1%),心関連による再入院(23.6% vs 21.9%),急性心不全による再入院(19.7% vs 19.0%)にも有意差はみられなかった。
1年間の永久ペースメーカー植込みはTAVR群が有意に多かった(7.3% vs 18.5%*)。 * p<0.001
★結論★SAVRと経大腿動脈アプローチによるTAVRは,1年後の死亡,MACCE,心臓関連の原因による再入院の発生率が同等である可能性が示された。
文献
  • [main]
  • Tamburino C, et al.; OBSERVANT research group. 1-year outcomes after transfemoral transcatheter or surgical aortic valve replacement: results from the Italian OBSERVANT study. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 804-12. PubMed
    David TE: Aortic stenosis: valve replacement or valve implantation? J Am Coll Cardiol. 2015; 66 :813-5. PubMed

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収載年月2016.07