循環器トライアルデータベース

FAIR
Randomized Femoral Artery In-Stent Restenosis

目的 大腿膝窩動脈の新規病変では,薬剤コーティングバルーン血管形成術(DCBA)のほうが標準的バルーン血管形成術(POBA)より再狭窄が少なく,標的病変再血行再建術(TLR)が少ないことが示されている。しかし,浅大腿動脈のステント内再狭窄(ISR)に関するデータは少なく,DCBAとPOBAの直接比較は行われていない。
浅大腿動脈ISR患者において,paclitaxelコーティングバルーンによるDCBAの中期有効性と安全性をPOBAと比較する。

一次エンドポイントは,6か月後のデュプレックス超音波による累積ISR再発率。
コメント PAD症例では大腿膝窩動脈病変が治療対象になることが多い。新世代ニチノールステントの進歩により上記病変のステント治療が汎用されつつある。ステント開存率は一般的に良好であるが,ステント内再狭窄(ISR)のような難病変では5年後34-50%と非常に低い。DCBAはPOBAよりも臨床的に有用とされているが,浅大腿動脈(SFA)ISRに対するDCBAの有用性は明らかではない。今回,DCBAとPOBAをSFA/ISR例(病変長8 cm)においてランダム化試験で直接比較し,DCBAは6ヵ月後に再狭窄率を2/3低下,TLR率も低下,臨床症状もより改善させ,かつ安全性は保たれていた。以前のSFA/ISR少数例の報告では,DCBA 1年後再狭窄率は8-20%であり,今回の15%とほぼ同等である。
これまでSFA/ISR例において,POBAに加えてエキシマレーザーを病変長の長い例(平均20cm)に用いて6ヵ月後のTLRがPOBAより低下するとの報告があるが,より侵襲の少ないDCBAが長い病変例に有効かどうかは興味がある。今回の研究では,対象症例が特殊なため症例数が119例と少なく多変量解析が出来ないため,DCBAの効果が出にくい要因が不明であること,1年後の超音波検査による再狭窄評価が70%の例しか出来ていないこと,が問題である。ステントが挿入できない病変部位ならばDCBAに期待が大きいが,ステント挿入が可能な病変部位ではDESとDCBAの大規模な直接比較試験が待ち望まれる。(星田
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(ドイツの5施設)。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2010年1月~’12年11月。
対象患者 119例。浅大腿動脈に病変長≦20cm,狭窄率≧70%(デュプレックス超音波で評価)のISRを有する,Rutherford分類2~4の慢性下肢虚血患者で,膝窩動脈と膝窩動脈下動脈群の1肢が開存(狭窄率≦50%)しているもの。
除外基準:未治療の同側腸骨動脈狭窄,透析,抗血小板薬以外の経口抗凝固薬治療など。
■患者背景:平均年齢(DCBA群69歳,POBA群67歳),男性(53.2%, 70.2%),肥満(19.4%, 21.1%),糖尿病(45.2%, 29.8%),高血圧(83.9%, 93.0%),高脂血症(77.4%, 78.9%),腎機能障害(12.9%, 17.5%),現喫煙(29.0%, 35.1%),喫煙歴(41.9%, 45.6%),冠動脈疾患(41.9%, 38.6%),頸動脈疾患(22.6%, 17.5%),膝窩動脈下血管疾患(25.8%, 21.1%),足関節・上腕血圧比(ABI)(0.63, 0.64),相対跛行距離(79.2m, 102.9m),絶対跛行距離(131.4m, 145.9m),Rutherford分類(2[中等度跛行]:43.5%, 47.4%,3[高度跛行]:51.6%, 42.1%,4[安静時疼痛]:1.6%, 10.5%)。
・病変背景:参照血管径(5.1mm, 5.4mm),病変長(82.3mm, 81.1mm),狭窄率(89.0%, 89.9%),完全閉塞(24.2%, 33.3%),石灰化(軽度:17.7%, 14.0%,中等度:21.0%, 10.5%,重度:9.7%, 8.8%),ISR(限局性:25.8%, 28.1%,びまん性:51.6%, 52.6%,多巣性:22.6%, 19.3%),末梢runoffの開存(全血管開存:54.8%, 57.9%,≧1肢閉塞:43.5%, 42.1%),前拡張(90.3%, 12.3%;p<0.001),拡張時間(131.1秒,153秒;p=0.021),後拡張(9.7%, 22.8%),ステント留置(1.6%, 7.0%)。
治療法 ガイドワイヤー通過後にランダム化。
DCBA群(62例):paclitaxelコーティングバルーンを使用。前拡張を必須とした。
POBA群(57例):オーバーザワイヤー経皮的血管形成術(PTA)バルーンを使用。
順行・逆行アプローチの選択は医師に一任。残存狭窄率>50%の場合はバルーンを再拡張。血流制限性解離・残存狭窄がある場合はベイルアウトステントを許可。
手技中は活性化凝固時間>250秒でheparin 5,000~10,000単位をボーラス静注し,手技後はaspirinとclopidogrelによる抗血小板薬2剤併用療法を6か月以上実施。
結果 [一次エンドポイント]
6か月後のデュプレックス超音波非実施例はDCBA群16.1%,POBA群17.5%。
ISR再発率はDCBA群のほうが低かった(8/52例[15.4%]vs 21/47例[44.7%], p=0.002)。
[二次エンドポイント]
血管造影上の成功(デバイスのアクセス・展開成功,残存狭窄率≦50%,ベイルアウトステントなし)はDCBA群95.1%,POBA群78.9%(p=0.102)だったが,再拡張とベイルアウトステントにより残存狭窄率には差がなかった(中央値:0% vs 0%)。
DCBA群は12か月後のISR再発率も有意に低かった(29.5% vs 62.5%, p=0.004)ため,TLR回避率が有意に高かった(6か月後:96.4% vs 81.0%, p=0.0117,12か月後:90.8% vs 52.6%, p<0.0001)。また,同群は12か月後の臨床的改善(Rutherford分類≧1の改善かつTLR回避)達成率も高かった(77.8% vs 52.3%, p=0.015)。
ABIはベースライン時から退院までに両群で増加(0.63→ 0.94, 0.64→ 0.81)。
Rutherford分類0~1達成率には有意差はなかった(6か月後:64.7% vs 53.2%,12か月後:66.7% vs 70.5%)。
[安全性]
12か月後の死亡に有意差はなく(2例[3.2%] vs 3例[5.3%]),手技関連の死亡はなかった。心筋梗塞,大出血,大切断の発生もなかった。
★結論★浅大腿動脈ステント内再狭窄患者において,DCBAはPOBAにくらべ再狭窄再発率が低く,臨床転帰が良好で,安全性の差はみられなかった。
Clinicaltrials.gov. No.: NCT01305070
文献
  • [main]
  • Krankenberg H et al: Drug-coated balloon versus standard balloon for superficial femoral artery in-stent restenosis: the randomized femoral artery in-stent restenosis (FAIR) trial. Circulation. 2015; 132: 2230-6. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2016.05