循環器トライアルデータベース

DANAMI-3-PRIMULTI
The Third Danish Study of Optimal Acute Treatment Ischemic with ST-segment Elevation Myocardial Infarction- PRIMULTI

目的 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の中でも多枝病変を有する患者は1枝病変のみの患者と比較して予後不良であるが,その治療方針,特に非責任病変に対する治療戦略については定まったものがない。
多枝病変を持つSTEMI患者において,血行再建は責任血管へのprimary PCIのみにとどめる戦略と,Fractional Flow Reserve (FFR)による完全血行再建を行う治療戦略の2群で臨床的アウトカムの比較を行う。

一次エンドポイントは全死亡,再梗塞,虚血を確認した心筋梗塞の非責任病変に対する再血行再建術の複合エンドポイント。
本試験はデンマークの4施設が参加したDANAMI-3プログラム(Am Heart J 2015; 169: 613-21. PubMed)の一つで,本試験の他にdeferを評価するDANAMI-3—DEFER,虚血性ポストコンディショニングを評価するDANAMI-3—POSTCONから構成される。
コメント 多枝病変を合併したSTEMI患者において,primary PCIの施行後に非責任病変に血行再建を施行すべきか,という疑問を検証した既存のランダム化比較試験(RCT)にはPRAMIとCvLPRITの2つがある。PRAMIでは,465例の患者で心臓死,非致死性心筋梗塞,繰り返す狭心症からなる一次複合エンドポイントで梗塞責任血管単独治療と比較した非責任血管治療の有効性を示し,心臓死,心筋梗塞,狭心症の個別の要素においてもイベント発生数は非責任血管治療で少ない傾向を示した。またCvLPRITでは,296例の患者で全死亡,再発性心筋梗塞,心不全,再血行再建からなる一次複合エンドポイントで梗塞責任血管単独治療に対する非責任血管治療の有効性を示し,こちらも同様に個別の要素の発生数は非責任血管治療群の方が少ないとの結果であった。
本研究では627例の患者で,一次エンドポイントである全死亡,再梗塞,虚血を確認した心筋梗塞の非責任病変に対する再血行再建術の複合でFFRガイド下非責任血管治療の有効性を示したが,個別の要素では心臓死や心筋梗塞の発生数はほぼ同数であり,再血行再建術のみで大きく差がついている。
PRAMI,CvLPRITにおいて死亡や心筋梗塞においても非責任血管治療の有効性が示唆されたのに対し,本試験ではこれらのエンドポイントではほぼ差がみられなかったことをどう解釈するかは悩ましい。
本試験はFFRでの完全血行再建を図ったが,そもそもSTEMI患者における非梗塞責任血管の狭窄を,安定狭心症と同様に狭窄度(もしくはFFR)のみで治療適応を判断して良いかという懸念がある。不安定な病変が多くあると予想される症例やすでに梗塞巣がある症例において,残存する病変の臨床的意義は安定狭心症の症例よりも大きい可能性がある。再発性心筋梗塞の半数は有意狭窄ではない病変から発生することを考えると,不安定プラークの治療は有意狭窄の治療とは同義ではない。STEMI急性期や梗塞巣がある患者におけるFFRの有効性の検証は十分ではなく,FFR閾値の再検討を行う必要があるかもしれない。実際に本試験ではFFRで治療適応を判断したことにより完全血行再建群の31%が血行再建を受けておらず,非責任血管治療の有効性が過小評価されている可能性がある。
他にも非責任血管治療の施行時期についての議論も残されている。多枝病変合併STEMIへの非責任病変治療の効果についてはさらに検証が必要であり,より綿密に企画されたRCTが待たれる(京都大学医学部循環器内科 豊田俊彬,木村
デザイン 無作為割り付け,オープンラベル,多施設(デンマークの2つの大学病院),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は中央値で27か月。
登録期間は2011年3月から2014年2月。
対象患者 627例。梗塞責任血管へのPCIが成功し,梗塞責任血管以外に1つ以上の狭窄(冠動脈造影で>50%)を持つSTEMI患者(胸痛発症後12時間未満,連続する2誘導以上の誘導で0.1mV以上のST上昇)。
除外基準:心原性ショック,意識消失,ステント血栓症,CABGの対象患者,高出血リスク例,造影剤・抗凝固薬・抗血栓薬が投与できない患者
■患者背景:年齢中央値(責任血管のみ血行再建群63歳,完全血行再建群64歳),男性(81%, 80%),既往(糖尿病:13%, 9%,高血圧:47%, 41%,現喫煙:48%, 51%),梗塞部位(前壁:36%, 33%,下壁:57%, 62%),3枝病変(32%, 31%),左前下行枝遠位部の梗塞(27%, 25%),薬剤溶出性ステント使用(95%, 93%)。
治療法 梗塞責任血管以外に侵襲的治療を行わない群と,退院前にFFRガイド下完全血行再建を行う群にPCI直後にランダム化。
FFRガイド下完全血行再建群(314例):pPCIから2日後(中央値),退院前に血管径≧2mmの非責任血管にある>50%狭窄病変に追加のPCIを施行。FFR≦0.80に加え,目視での推定狭窄率>90%の病変を治療。PCI不適の病変にはCABGを検討。
梗塞責任血管単独治療群(313例)。
全ての患者に至適内科的治療,適応の場合には除細動器植込み,ガイドラインに準じた心臓リハビリテーションを施行した。
結果 完全血行再建群の97例(31%)が非梗塞責任血管のFFR>0.80でPCIを施行せず,6例(2%)がPCI不適のためCABGを施行,18例(6%)はおもにPCI不成功・実行不可能のためPCIを施行しなかった。梗塞責任血管単独治療群では9例が2つの責任病変にPCIを施行,2例(主幹部病変と3枝病変)がCABGによる完全血行再建群にクロスオーバー。
FFRガイド下完全血行再建群における非責任病変の治療は中央値でprimary PCI後2日目に行われていた。
一次エンドポイントの発生数は梗塞責任血管単独治療群で68例(22%),FFRガイド下完全血行再建群で40例(13%)であった(ハザード比0.56;95%信頼区間0.38~0.83,p=0.004)。一次エンドポイントの構成要素においては,全死亡と非致死的再梗塞には差を認めず(順に15例[5%]vs 11例[4%]:1.40;0.63~3.00, 15例[5%]vs 16例[5%]:0.94;0.47~1.90),虚血による再血行再建のみで発症率がFFRガイド下完全血行再建群において梗塞責任血管単独治療群よりも少なかった(17例[5%]vs 52例[17%]:0.31;0.18~0.53,p<0.0001)。
また,心臓死(5例 vs 9例)に有意な両群間差はなかったが,再血行再建術の40%は緊急で,非梗塞責任血管の病変に対する緊急・非緊急PCIの必要は完全血行再建群のほうが有意に少なかった(15例 vs 45例)。
血行再建に関連する重篤な有害事象に両群間差はなかった(周術期心筋梗塞:2例 vs 0例,輸血または手術が必要な出血:1例 vs 4例,造影剤腎症:6例 vs 7例,脳卒中:4例 vs 1例)。
以上の結果に,DANAMI-3-DEFERおよびDANAMI-3-POSTCONへの割付けによる交互作用はみられなかった。
★考察★多枝病変を有するSTEMI患者において,primary PCI後のFFRガイド下完全血行再建は梗塞責任血管単独血行再建と比較し有意に心血管の複合イベントリスクが低かった。この効果は再血行再建が有意に抑制されたことに依り,全死亡や非致死性の再梗塞には差がなかった。また,本試験はSTEMI発症後の急性期においても非責任血管治療は安全に行い得ることも示している。
ClinicalTrials gov No: NCT01960933
文献
  • [main]
  • Engstrøm T et al for the DANAMI-3—PRIMULTI investigators: Complete revascularisation versus treatment of the culprit lesion only in patients with ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease (DANAMI-3—PRIMULTI): an open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2015; 386: 665-71. PubMed

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収載年月2015.11