循環器トライアルデータベース

VIRGO
Variation in Recovery: Role of Gender on Outcomes of Young AMI Patients

目的 若年(<55歳)女性は同年齢の男性より急性心筋梗塞(AMI)後の転帰が不良である。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する再灌流療法の実施には性差があり,女性は男性より治療の開始が遅く,適切な治療を受けられない可能性が示されているが,若年者においても同様のパターンが存在するかどうかは明らかでない。
VIRGOは米国,スペイン,オーストラリアの若年STEMI患者におけるAMIのケアに関連する性差を検討している登録研究。本報は,米国コホート(US VIRGO)において,再灌流療法の施行率とガイドラインが推奨する時間枠での再灌流療法の実施に性差がみられるかを検証した結果。
コメント Circulation. 2015; 131: 1324-32.へのコメント
若年女性は同年齢の男性より急性心筋梗塞の予後が不良であることは多くの報告がある。本登録研究では,女性のほうが再灌流療法の実施率が低く,また再灌流までの時間が長いことが予後不良の原因と考えられた。女性は非定型症状が多いが,door-to-ECG時間に差がないことから,これが診断の遅れの原因にはなっていないことが明らかにされた。女性でのdoor-to-balloonの遅れの原因については明らかにされていないが,患者の決断の遅れ(家族との相談など),PCI治療に対する躊躇などがその原因ではないかと推察される。日頃からの患者教育や啓発活動の重要性が示唆される報告である。(
デザイン 前向きコホート研究,多施設(米国の103施設)。
期間 登録期間は2008年8月21日~'12年1月5日。
参加者 1,465例(女性908例,男性557例);うち再灌流療法適応は1,238例(761例,477例),再灌流療法施行は1,153例(695例,458例)。18~55歳のSTEMI患者。入院前24時間以内の心マーカー異常と虚血症状・ECGの虚血変化(新規ST-T変化,病理学的Q波出現)を認め,発症後24時間以内にPCI施設へ直接来院または搬送されたもの。
除外基準:待機的冠動脈血行再建・外傷・手術による心マーカー上昇など。
■患者背景:急性STEMI 49%(女性46%,男性57%, p<0.001)。
再灌流療法施行例:年齢中央値48歳,白人(女性79%,男性84%),ヒスパニック(5%, 9%, p=0.026),既婚(49%, 55%, p=0.032),>高校卒業(57%, 56%),有職者(60%, 75%, p<0.001),MI/PCI/CABG既往(17%, 20%),狭心症(22%, 21%),高血圧(両群とも62%),糖尿病(32%, 16%, p<0.001),高コレステロール血症(63%, 69%, p=0.036),30日以内の喫煙(68%, 61%, p=0.015),肥満(55%, 45%, p=0.001),慢性肺疾患(11%, 5%, p=0.001),心血管疾患家族歴(79%, 78%),発症後6時間以内(68%, 77%;p=0.002),非定型胸痛・無症状(16%, 10%, p=0.008),EF<40%(14%, 15%)。
調査方法 女性と男性を2:1の比率で登録。入院中のカルテ調査および問診により社会人口統計学的因子,既往データを収集。病院到着からECG,血栓溶解療法,バルーン拡張までの時間を記録し,それぞれのガイドライン推奨時間枠を超過した患者の割合を算出。再灌流療法の適応は,受診後≦12時間で胸痛が≧30分持続し,2つ以上の連続誘導で>1mmのST上昇または左脚ブロックを認める場合と定義。
結果 [再灌流療法の施行率]
女性は男性より非施行の割合が高かった(女性9% vs 男性4%:調整オッズ比2.31;95%信頼区間1.32~4.06, p=0.004)。
再灌流療法のほとんどはprimary PCIで(女性91%,男性88%;その他は血栓溶解療法),男女差はみられず,PCI施設への搬送も同等であった(39%, 43%)。
[ECGまでの時間]
女性は男性より長かったが(中央値5分 vs 4分,p=0.032),推奨時間(10分以内)超過例には差はなかった(28% vs 24%)。
[バルーン拡張までの時間]
女性は男性より長く(中央値88分 vs 80分,p=0.002),推奨時間(直接受診90分以内,搬送120分以内)超過例も多かった(41% vs 29%:未調整オッズ比1.65;95%信頼区間1.27~2.16, p<0.001)。
PCI施設に搬送された患者でも,結果は同様であった(145分 vs 115分,p<0.001;67% vs 44%:2.63;1.71~4.07, p<0.001)。
PCI施設を直接受診した患者では,時間は女性のほうが長かったが(73分 vs 65分,p=0.002),推奨時間超過例に有意差は示されなかった(27% vs 21%)。
[血栓溶解療法までの時間]
女性は男性より長く(中央値43分 vs 30分,p=0.023),推奨時間(30分以内)超過例の割合も高かった(61% vs 37%:2.62;1.23~5.57, p=0.012)。
[ロジスティック回帰解析]
社会人口統計学的因子,心疾患既往,臨床因子などの交絡因子で調整後も,女性はバルーン拡張または穿刺までの推奨時間超過の関連因子であった(1.72;1.28~2.33)。
[死亡]
ガイドライン推奨時間を超過した患者は超過しなかった患者にくらべ,退院1か月後の死亡率(6例[1.4%] vs 1例[0.1%], p=0.013),12か月後の死亡率(3.1% vs 1.3%, p=0.036)が高かった。
★結論★若年の女性STEMI患者は同年齢の男性にくらべ再灌流療法が行われないことが多く,再灌流療法までの時間が長かった。この差はPCI施設に搬送された患者,血栓溶解療法を施行した患者で顕著であった。

関連トライアル:GENESIS-PRAXY

[主な結果]
  • AMIの典型的症状は男女ともおよそ9割が自覚。女性は胸痛以外の症状を訴えるものが男性より多いが,入院前受診例の半数以上が心臓関連ではないと診断されていた。
    急性心筋梗塞(AMI)の発症時の自覚症状に性差はあるのか?
    AMI入院時(2008年8月21日~’12年1月5日)に自覚症状などの聞き取り調査を実施した(103施設の2,985例:女性2009例,男性976例;平均年齢47歳,白人76%)。
    およそ9割が胸痛,圧迫感,息苦しさなどを自覚(女性87.0%,男性89.5%)。また,胸痛以外の症状(消化不良,悪心,腹痛,顎・首・腕・肩甲骨周りの痛みや不快感,動悸など)を訴えたのは女性のほうが男性より有意に多く(3.4 vs 3.0;≧3つの症状自覚例は61.9% vs 54.8%),入院前にこれらの症状で女性の29.5%,男性の22.1%が受診したものの,女性の53.4%,男性の36.7%が心臓関連の症状ではないと診断されていた。
    ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では,女性は男性にくらべ胸痛を訴えない例が多かった(調整オッズ比1.51;95%信頼区間1.03~2.22, p=0.036)が,交互作用は有意ではなかった。非STEMIは0.95;0.65~1.37,≦45歳は0.86;>45歳は1.39(Lichtman JH, et al: Sex differences in the presentation and perception of symptoms among young patients with myocardial infarction: evidence from the VIRGO study (variation in recovery: role of gender on outcomes of young AMI patients). Circulation. 2018; 137: 781-90.)。 PubMed
  • 若年女性のAMI分類―国際分類法では約8人に1人が分類不能。VIRGO作成の分類法は現行法では捕捉できない患者も分類可能であった。
    現行のESC/ ACCF/ AHA/ WHFによる心筋梗塞の国際分類法(3rd Universal Definition)は広範な症状を呈する女性患者に対応していない可能性があることから,若年女性の臨床症状を反映した急性心筋梗塞(AMI)の分類法を作成し,Universal Definitionには分類のなかったサブクラスや病型が存在するかを検証した結果(米国コホートの2,802例;女性67.6%):ランダム抽出した600例(女性412例)をUniversal Definitionで分類すると,type 1(プラーク破綻・潰瘍・亀裂などによる血栓)504例,type 2(冠動脈疾患[CAD]以外による心筋酸素需給のミスマッチ[SDM])40例,type 4b(ステント血栓症)2例,分類不能が54例(9%;うち女性51例)。type 3・4a・5は該当なし(登録除外)。
    カテーテル検査結果とSDMの臨床的根拠を用い帰納法により作成した新しいVIRGO分類法でコホート2,802例を分類すると,クラスI(プラーク介在病変)2,425例(女性82.5%,男性94.9%),クラスII(閉塞性CAD)でSDMあり(IIa)35例(1.4%, 0.9%),SDMなし(IIb)55例(2.4%, 1.1%),クラスIII(非閉塞性CAD)でSDMあり(IIIa)88例(4.3%, 0.8%),SDMなし(IIIb)150例(7.0%, 1.9%),クラスIV(血管攣縮・自然解離・塞栓など)31例(1.5%, 0.2%),クラスV(不確定)18例(0.8%, 0.2%)。
    1年死亡率は2.3%で,死亡した60例のうち78%が女性であった(Spatz ES et al: The variation in recovery: role of gender on outcomes of young AMI patients (VIRGO) classification system: a taxonomy for young women with acute myocardial infarction. Circulation. 2015; 132: 1710-8.)。 PubMed
  • D'Onofrio G et al: Sex differences in reperfusion in young patients with ST-segment-elevation myocardial infarction: results from the VIRGO study. Circulation. 2015; 131: 1324-32. PubMed
    Wenger NK: Disparities in ST-elevation myocardial infarction management for the young goose and young gander: clinical, organizational, and educational challenges. Circulation. 2015; 131: 1310-2. PubMed

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収載年月2015.11
更新年月2018.05