循環器トライアルデータベース

IMPROVE-IT
Improved Reduction of Outcomes: Vytorin Efficacy International Trial

目的 コレステロールトランスポーター阻害薬ezetimibeをスタチンに追加すると,LDL-Cがさらに低下するが,これにより心血管イベント発症率がさらに低下するかは明らかでない。
急性冠症候群(ACS)発症後のLDL-C値がガイドライン推奨範囲内の安定患者において,ezetimibeのsimvastatinへの追加による心血管イベント抑制効果と安全性を検討する。

一次エンドポイントは,心血管死,主要冠イベント(非致死的心筋梗塞[MI],再入院を要する不安定狭心症[UA],ランダム化後≧30日の冠動脈血行再建術),非致死的脳卒中の複合エンドポイント。
コメント N Engl J Med. 2015; 372: 2387-97へのコメント
本試験は,次の二点において画期的な試験と評価される。
第一に,LDL-Cについては70mg/dLという目標値を大幅に下回って,約54mg/dLまでは,より強くイベント抑制効果が示されたとともに,それが安全性をもって示されたという点がもっとも大きなインパクトを与えた結果であり,the lower, the betterという概念が改めてサポートされたということである。第二に,スタチン登場以降,初めてスタチン以外の薬剤でイベント抑制効果が示しえたという点も見逃しえない点である。2013年のEBM重視のACC/AHAガイドラインで示された,スタチンだけのガイドラインを見直すべきエビデンスを示したという意味で十分評価すべき試験である。この試験は,次に示されるであろうPCSK9のモノクローナル抗体による治療(ほぼ70%近いLDL-C低下能を持つ)の有効性に大きな期待を持たせる試験といってもいいのではないかと思われる。editorialで Proof that lower is betterと示されたことは,次なるガイドラインに本結果が反映される可能性を示唆するものである。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(39か国1,147施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6年(中央値)。
登録期間は2005年10月26日~’10年7月8日。
対象患者 18,144例。50歳以上, ACS(ECG上のST上昇型・非上昇型急性MI,高リスクのUA)による入院後10日以内,発症後24時間以内のLDL-C値が50~125mg/dL(非治療下),または50~100mg/dL(長期治療下)の患者。
除外基準:CABG施行予定,クレアチニンクリアランス(CCr)<30mL/分,活動性肝疾患,LDL-C低下効果がsimvastatin 40mgよりも強力なスタチンの使用など。
■患者背景:平均年齢64歳,女性24%,糖尿病27%,冠動脈造影88%,ランダム化前のPCI施行70%,スタチン服用(ACS発症時34%,入院中77%),LDL-C 93.8mg/dL,発症~ランダム化の時間中央値5日,BMI 28.3kg/m²,白人(simvastatin+ezetimibe群83.6%,simvastatin群84.0%),高血圧(61.6%, 61.3%),現喫煙(32.5%, 33.5%),MI既往(21.3%, 20.7%),PCI歴(19.5%, 19.8%),CABG歴(両群とも9.3%),CCr中央値(84.4 mL/分,84.7mL/分),ACS(ST上昇型MI:28.5%, 28.7%;非ST上昇型MI:47.5%, 46.9%;UA:24.0%, 24.4%)。
ランダム化時の薬物治療:aspirin(97.1%, 96.9%),チエノピリジン系薬剤(86.8%, 86.1%),β遮断薬(87.3%, 86.8%),ACE阻害薬/ARB(75.3%, 75.8%)。
治療法 ACSの標準治療(薬物治療,インターベンション)を施行後にランダム化。
simvastatin+ezetimibe群(9,067例):simvastatin 40mg/日+ezetimibe 10mg/日を1回/日投与。
simvastatin群(9,077例):simvastatin 40mg/日+プラセボを1回/日投与。
LDL-C測定値が2回連続して>79mg/dLの場合,simvastatinを80mgに増量。2011年6月にFDAがsimvastatin 80mgの新規処方を制限したため,80mgの投与期間<1年の患者は40mgに減量。この処方でLDL-C>100mg/dLの場合は,試験薬を中止してより強力な薬剤を投与。
結果 simvastatin 80mgへの増量はsimvastatin+ezetimibe群6%,simvastatin群27%。
試験薬の投与中止は両群42%,追跡率は一次エンドポイント91%,全死亡97%。
[LDL-Cの変化]
1年後のLDL-C値はsimvastatin+ezetimibe群53.2mg/dL vs simvastatin群69.9mg/dL(群間差16.7mg/dL, p<0.001)。
試験期間中の時間で重み付けした平均LDL-C(中央値)も同群が有意に低かった(53.7mg/dL vs 69.5mg/dL, p<0.001)。
[一次エンドポイント]
Kaplan-Meier推定による7年後の一次エンドポイント発生率は,simvastatin+ezetimibe群のほうが有意に低かった(32.7% vs 34.7%:絶対リスク差2.0パーセンテージポイント;ハザード比0.936;95%信頼区間0.89~0.99, p=0.016)。
[二次エンドポイント]
全死亡+主要冠イベント+非致死的脳卒中:38.7% vs 40.3%(p=0.03)。
冠動脈疾患(CAD)死+非致死的MI+≧30日後の緊急血行再建術:17.5% vs 18.9%(p=0.02)。
心血管死+非致死的MI+UAによる入院+≧30日後の全血行再建術+非致死的脳卒中:34.5% vs 36.2%(p=0.04)。
[その他]
全死亡,心血管死,CAD死には有意差を認めなかったが,その他のイベントの発生率はsimvastatin+ezetimibe群のほうが低かった。
MI:13.1% vs 14.8%(p=0.002),非致死的MI:12.8% vs 14.4%(p=0.002)。
脳卒中:4.2% vs 4.8%(p=0.05),虚血性脳卒中:3.4% vs 4.1%(p=0.008)。
≧30日後の緊急血行再建術:7.0% vs 8.6%(p=0.001)。
[安全性]
有害事象による試験治療中止は10.6% vs 10.1%。
横紋筋融解症・ミオパチー(両群とも0.3%),胆嚢関連(3.1% vs 3.5%),ALT・AST≧正常上限の3倍(2.5% vs 2.3%),癌(両群とも10.2%)の発生率は両群で同等であった。
★結論★ACS発症後のLDL-C値がガイドライン推奨範囲内の安定患者において,simvastatinへのezetimibe追加でLDL-C値がさらに低下し,心血管転帰もよりいっそう改善することが示された。この有効性を相殺する有害事象や毒性は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00202878
文献
  • [main]
  • Cannon CP et al for the IMPROVE-IT investigators: Ezetimibe added to statin therapy after acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2015; 372: 2387-97. PubMed
    Jarcho JA and Keaney JF Jr: Proof that lower is better - LDL cholesterol and IMPROVE-IT. N Engl J Med. 2015; 372: 2448-50. PubMed
  • [substudy]
  • simvastatin+ezetimibe 群のベネフィットは,糖尿病合併患者,非合併高リスク患者で大きかった。
    糖尿病(DM)合併患者における有効性を検討する(事前に計画されていたサブ解析)。
    DM例(27%)は非DM例より高齢(65.3 vs 63.7歳)で女性(28.5 vs 22.8%),心筋梗塞(25.7 vs 19.3%)および血行再建(24.4 vs 17.9%)の既往や推奨治療例などが多かった。
    ベースライン時のLDL-CはDM例のほうが有意に低かった(中央値:89 vs 非DM例97mg/dL)が,時間重み付け平均LDL-CもDMの有無にかかわらずsimvastatin+ezetimibe(E/S)群のほうがsimvastatin(S)群よりも有意に低下した(DM例:49 vs 67mg/dL,非DM例:55 vs 71mg/dL)。
    一次エンドポイントはDM例のほうが多かったが,E/S群においてDM例はKaplan-Meier推定による7年後の一次エンドポイントの絶対リスクが5.5%低下したものの(ハザード比0.85;95%信頼区間0.78~0.94),非DM例での低下は0.7%だった。DM例における相対リスクが最も大きく低下したのは心筋梗塞(24%),虚血性脳卒中(39%)。S群にくらべ6年間のE/S治療によりDM例において1例の一次エンドポイントを予防するNNTは18。
    糖尿病の合併に関係なく,ALT・AST上昇などの有害事象に両群間差はなかった。また,≧75歳ではDMの合併にかかわりなく一次エンドポイントの相対リスクが20%低下し,<75歳ではDM例で有効性が認められた。さらにTIMI二次予防リスクにかかわらずDM例での有効性が認められた一方で,非糖尿病例ではE/S群の高リスク症例(TIMIリスクスコア≧3)でS群よりリスクが18%低下したが,低~中等度リスク症例では低下はみられなかった:Circulation. 2018; 137: 1571-82. PubMed
  • simvastatin+ezetimibe群はsimvastatin群にくらべ虚血性脳卒中発症リスクが低く,特に脳卒中既往例での効果が大きかった。
    脳卒中の発症とその予測因子を,特に既往例で評価した。
    6年間(中央値)で≧1回脳卒中を発症したものは641例(3.5%)。初発脳卒中の大半は虚血性脳卒中(527例[82%])で,出血性脳卒中は100例(16%),病型不明が14例(2%)。致死的脳卒中は95例(15%)。
    脳卒中再発の最も強い独立した予測因子は脳卒中既往(Kaplan-Meier 7年推定で18.8% vs 4.3%:ハザード比3.06;95%信頼区間[CI]2.40~3.92, p<0.001),その他の独立した因子は,高齢(≧75歳),心房細動,うっ血性心不全,糖尿病,心筋梗塞,腎機能不全。
    全初発脳卒中は,simvastatin+ezetimibe群のほうがsimvastatin群より少なかったが,有意差はなかった(4.2% vs 4.8%:0.86;0.73~1.00, p=0.052)。虚血性脳卒中リスクはsimvastatin+ezetimibe群のほうが有意に低かった(3.4% vs 4.1%:0.79;0.67~0.94, p=0.008)一方で,出血性脳卒中リスクは同群で非有意ながら高かった(0.8% vs 0.6%:1.38;0.93~2.04)。
    全脳卒中件数は719件で,初発が89%,再発が11%。同群では初発が49例,再発が20例少なく,全脳卒中リスク(325件 vs 394件)がsimvastatin群より17%有意に低かった。
    虚血性脳卒中発症は596件,うち89%が初発,11%が再発。同群では初発が61例,再発が19例少なく,虚血性脳卒中リスク(258件 vs 338件)が24%有意に低かった。一方,出血性脳卒中は109件,初発94%,再発6%。同群のほうが初発が16例多く,再発が3例少なかった。
    サブ解析(脳卒中既往の有無):非既往例にくらべ既往例は再発リスクが高く,既往例における全脳卒中リスクの低下が大きかった(相対リスクは既往例:0.54;95%CI 0.33~0.90,非既往例:0.88;0.74~1.05;交互作用p<0.001):Circulation. 2017; 136: 2440-50. Epub 2017 Sep 30. PubMed
  • 再発予測ツールTRS 2°Pは,二次予防におけるスタチンへのezetimibe追加によるベネフィットが大きい高リスク患者の同定に有用。
    アテローム血栓リスクの層別が,ACSの二次予防においてスタチンへのezetimibe追加のベネフィットが大きい高リスク患者の同定に有用であるかを検証した(ACS後17,717例[年齢中央値63歳,女性24%])。追跡期間は6.0年(中央値)。
    TRA 2°P-TIMI 50が作成した9つの変数(うっ血性心不全,高血圧,≧75歳,糖尿病,脳卒中既往,CABG歴,末梢血管疾患,推算糸球体濾過量<60mL/分/1.73m²,現喫煙)による再発予測ツールTRS 2°P(TIMI Risk Score for Secondary Prevention)でリスクを層別した。
    もっとも多かったのは高血圧(61%),現喫煙(33%),糖尿病(27%),腎機能障害(20%)で,高リスク(≧3因子)例は4,393例(25%),中等度リスク(2因子)例は5,292例(30%),低リスク(0~1因子)例は8,032例(45%)。9因子すべてが両群で7年Kaplan-Meier推定CV死,MI,虚血性脳卒中の独立した危険因子だった。
    高リスク例でのsimvastatin+ezetimibe群の7年複合エンドポイント(33.9% vs simvastatin群40.2%)の絶対リスク低下は6.3%(7年で1例を予防するためのNNTは16例),中等度リスク例での低下は2.2%,低リスク例ではezetimibe追加の有効性は認められなかった(交互作用p=0.010):J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 911-21. PubMed
  • 高リスクのCABG既往例でのsimvastatin+ezetimibe併用-非既往例にくらべ主要心血管リスクの低下が大きかった。
    simvastatin+ezetimibe併用の有効性を高リスク例であるCABG既往例(1,684例[9.3%];年齢中央値69歳,男性82%)と非既往例(16,450例;63歳,75%)で比較した結果:試験中の時間加重LDL-C中央値は,既往例(併用群55.0mg/dL vs simvastatin群69.9mg/dL),非既往例(53.6 vs 69.5mg/dL)ともに併用群が有意に低かった。Kaplan-Meier推定7年累積一次エンドポイント発生率は既往例のほうが非既往例より有意に高かった(55.6% vs 31.6%)。併用群でのsimvastatin群にくらべた一次エンドポイント発生率の低下は,既往例(51.2% vs 60.0%;絶対リスク低下8.8%;NNT=11)のほうが非既往例(30.9% vs 32.2%;1.3%;NNT=77)より大きかった(交互作用p=0.02)。心筋梗塞,≧30日後の血行再建術も同様の結果だったが,心血管死,不安定狭心症による入院,脳卒中には既往例と非既往例の違いはみられなかった。安全性に関しては,既往例,非既往例ともに有意な両群間差はなかった:Eur Heart J. 2016; 37: 3576-84. Epub 2016 Aug 28. PubMed
  • 6年間の全一次エンドポイント-初発のみならず全イベント発症率もsimvastatin+ezetimibe群のほうがsimvastatin群よりも低かった。
    初発+続発イベントを含めた全一次エンドポイント(心血管[CV]死,非致死的心筋梗塞[MI],非致死的脳卒中,再入院を要する不安定狭心症,ランダム化後≧30日の血行再建術)での検証結果:イベント非発症例は70.7%,1件発症は16.6%,2件7.3%,≧3件5.4%。全イベント件数は9,545件(初発56%,続発44%)で,続発イベントのほうが初発にくらべMIが少なく(24.0% vs 31.7%),血行再建術が多かった(58.4% vs 43.8%)。全一次エンドポイント発症率はsimvastatin+ezetimibe群がsimvastatin群より有意に低く(率比0.91),この低下は非致死的MI(0.87)と非致死的脳卒中(0.77)の有意な低下によるものだった。3つの二次エンドポイント,探索的エンドポイント(CV死,MI,脳卒中)も同様の結果であった:J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 353-61. PubMed
  • LDL-C,hs-CRPの目標値達成と転帰-両方達成例(39%)は,simvastatin+ezetimibe群で有意に多く,非達成例にくらべ心血管リスクが有意に低かった。この関係に治療群間差はなかった。
    1か月後の目標値(LDL-C<70mg/dL, hs-CRP<2mg/L)のいずれか,あるいは両方達成例と,いずれも達成しなかった非達成例の転帰を比較した結果(15,179例[平均年齢64歳,女性24%]):1か月後のLDL-C・hs-CRP値のないもの,1か月以内の心血管イベント発生例は除外した。
    両方の目標値達成例39%(simvastatin+ezetimibe群50%,simvastatin群29%;p<0.001),LDL-Cのみ達成33%(38%, 29%),hs-CRPのみ達成14%(6%, 21%),いずれも非達成例14%(6%, 21%;p<0.001)。
    Kaplan-Meier推定による7年後の心血管イベント発生率は両方達成例で非達成例より有意に低かった(28.0% vs 38.9%:調整ハザード比0.73;95%信頼区間0.66~0.81, p<0.001)。LDL-Cのみ達成例の心血管イベントは33.7%(vs 非達成例:相対リスク17%低下;絶対リスク5.2%低下),hs-CRPのみ達成例は33.4%(11%低下;5.5%低下)。
    また,両治療群とも両方達成例は非達成例より心血管イベント発生率が低く,治療群との有意な交互作用はみられなかった(simvastatin+ezetimibe群[27.9% vs 40.4%:0.71;0.59~0.85, p<0.001], simvastatin群[28.1% vs 38.5%:0.71;0.63~0.81, p<0.001])。
    目標値LDL-C<50mg/dL, hs-CRP<1mg/Lの探索的解析結果も同様であった:Circulation. 2015; 132: 1224-33. PubMed

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収載年月2015.07
更新年月2018.05