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Rotterdam Study

目的 心血管疾患(CVD)の発症には性差が認められるが,一般住民における初発CVDの性差に関するデータは少ない。また,女性は男性より寿命が長いためCVDを発症する期間が長く,喫煙などのCVD危険因子はCVDリスクだけでなくCVD発症前に別の疾患で死亡するリスクも高める。したがって,初発CVDの性差を評価する際にそれらの競合リスクを無視することはできない。
オランダ・ロッテルダム市周辺の一般住民において加齢に伴う疾患の発症とその規定因子を長期にわたり追跡しているRotterdam Studyのデータを用いて,中高年のCVD生涯リスクおよび初発CVDの性差を,競合リスクも考慮して検討する。
主要評価項目は,冠動脈疾患(CAD)(心筋梗塞[MI],血行再建術,CAD死),脳血管疾患(脳卒中,一過性脳虚血発作,頸動脈血行再建術),心不全,その他のCVD死,非CVD死。
コメント 心血管疾患の性差はこれまでも繰り返し検討されてきた。このテーマについて,著名な疫学研究であるRotterdam Studyで,一般住民における初発の心血管疾患の性差が検討された。喫煙率の男女差や女性の寿命が長いことなど,初発の心血管疾患を検討する上では,競合するリスクを無視することは出来ない。冠動脈疾患を初発とする場合には,男性が女性より多く,脳血管疾患と心不全を初発とする場合では,女性のほうが多かったという結果となった。予想される結果といえ,納得できるものである。脳血管疾患や心不全がより血圧と関係し,冠動脈疾患がより脂質代謝などに関係することから,血圧やコレステロールの管理目標に男女差を考慮すべきかなど,示唆する点は多いと考えられる。(中村中野永井
デザイン 前向きコホート研究。
期間 追跡期間は最長20.1年(生存例13.5年[中央値])。
登録期間は1990~’93年(RS-Iコホート),2000~’01年(RS-IIコホート)。
対象 8,419人(男性3,293人,女性5,126人)。ロッテルダム市周辺の55歳以上の一般住民(RS-I:6,045人,RS-II:2,374人)。
除外基準:CVD(CAD,脳血管疾患,心不全)既往など。
■患者背景:平均年齢67.6歳,血圧140/75mmHg,降圧薬使用26.2%,総コレステロール 247.5mg/dL,HDL-C 54.1mg/dL,スタチン使用3.5%,糖尿病9.9%,現喫煙23.2%,過去喫煙42.1%,若年性MIの家族歴16.4%,BMI 26.5kg/m²。
調査方法 臨床転帰は本研究のデータベースに自動リンクさせた開業医の診療記録の追跡により収集し,生存状況は自治体の登録データと照合。
55,65,75,85歳時の初発CVDの生涯リスクを男女別に算出。競合リスク(非血管死または何らかのCVD死によりその後のCVD発症リスクが除外されること)を考慮して解析した。ソフトイベントの影響を排除するため,アテローム動脈硬化性のハードCVDとして,ハードCAD(致死的・非致死的MI,CAD死),ハード脳血管疾患(非出血性脳卒中),その他のアテローム性CVD死に限定した解析も行った。
結果 [CVDの内訳]
81,276人・年の追跡で,CVD発症は2,888例(35.5/1,000人・年)。このうち,CAD 826例,脳血管疾患1,198例,心不全762例,その他のCVD死102例で,致死的CVDは608例(21.1%)。非CVD死は1,532例。
[全CVD]
55歳時の生涯CVDリスクは男女で同等(55歳時:女性66.4% vs 男性67.1%, p=0.34,差-7/1,000人・年)。リスクは加齢に伴い,男性でより大きく低下し,85歳時には女性のほうが高かった(57.1% vs 52.0%, p=0.054, 51/1,000人・年)。
[初発CVD]
初発CVDには男女間差が認められた。55歳時のCADリスクは男性が高かったが(16.9% vs 27.2%, p<0.001:女性のリスク-102/1,000人・年),脳血管疾患(29.8% vs 22.8%, p<0.001:70/1,000人・年),心不全(17.5% vs 14.9%, p=0.014:26/1,000人・年)は女性が高く,その他のCVD死には差がなかった(2.1% vs 2.3%)。
加齢に伴いCADと心不全のリスクは低下したが,脳血管疾患は変化しなかった。
初発CVDリスクは,男性では脳血管疾患と心不全が75歳以上で最も高くなり,女性は全年齢を通じて脳血管疾患が高かった。疾患を問わず発症時年齢は女性のほうが高かった。
[ハードCVD]
55歳時のハードCVDリスクは男性が高かったが(38.1% vs 43.2%, p<0.001, -51/1,000人・年),加齢に伴い差は縮小し,85歳時には男女ともに約31%となった。
55歳時のハードCAD(14.4% vs 23.5%, p<0.001, -91/1,000人・年),その他のアテローム性CVD死(1.2% vs 1.9%, p=0.037, -7/1,000人・年)リスクは男性が高く,非出血性脳卒中リスク(22.5% vs 17.8%, p<0.001, 48/1,000人・年)は女性のほうが高かった。
★結論★55歳時の生涯CVDリスクは男女で同等であるが,初発のCVDには大きな違いがあり,男性は冠動脈疾患,女性は脳血管疾患または心不全を発症しやすい。いずれの疾患も多くは高齢で発症する。
文献
  • [main]
  • Leening MJ et al: Sex differences in lifetime risk and first manifestation of cardiovascular disease: prospective population based cohort study. BMJ. 2014; 349: g5992. PubMed
  • [substudy]
  • 無症候性の頸動脈アテローム硬化患者における抗血栓療法は, 頸動脈のプラーク内出血と関連。また,抗血栓治療薬の投与量増加によりプラーク内出血が高頻度に発生。
    対象は,2007~2012年に超音波検査で内膜中膜複合体厚(IMT)が ≧2.5 mmであった無症候性の頸動脈アテローム硬化患者のうち,MRIを実施した1,740例(平均年齢72.9歳,女性46%)。MRIプロトン密度強調画像,T2強調画像,3D-T1強調画像などにより,頸動脈のプラーク組織の性状評価[プラーク内出血(IPH),脂質コア(lipid core),石灰化]を行い,抗血栓療法が頸動脈プラーク性状に及ぼす影響を検討した。
    ≪ベースラインの患者背景≫MRI施行時点の抗血栓治療薬使用率:ビタミンK拮抗薬(VKA)6.8%(使用期間中央値:11か月),抗血小板薬29.9%(72か月),降圧薬使用率39.3%,スタチン使用率29.0%,平均血管壁厚3.2 mm,頸動脈狭窄率14.4%(中央値),平均血圧145/80 mmHg,現喫煙31.5%,糖尿病罹病14.4%,冠動脈疾患既往11.4%。
    [抗血栓療法と頸動脈プラークの性状との関連]
    VKAおよび抗血小板薬の現使用または使用歴は,統計学的に有意ではないものの,IPHと高い関連を示した。脂質コア,石灰化と抗血栓療法との関連は認められなかった。
    ・VKA:VKA未使用を対照とした補正後オッズ比(OR)〈現使用〉1.88,95%信頼区間(CI)0.74~4.75 /〈使用歴〉1.89, 95%CI 0.91~3.93。
    ・抗血小板薬:抗血小板薬未使用を対照とした補正後OR〈現使用〉1.22, 95%CI 0.91~1.62 /〈使用歴〉1.23, 95%CI 0.86~1.75。
    [治療薬別の使用状況とIPH]
    VKA,抗血小板薬ともにIPHとの用量反応関係が示された。
    VKA:INR2.97超の場合のOR 1.48, 95%CI 1.03~2.15。抗血小板薬:daily defined dosage(DDD)1.00~1.99の場合のOR 1.50, 95%CI 1.21~1.87,DDD>2のOR 2.24, 1.03~4.87。
    [その他]
    VKAとIPHとの関連は男性にくらべ女性で顕著であったが,抗血小板薬との関連については男女で類似の傾向であった。
    Mujaj B, et al: Antithrombotic treatment is associated with intraplaque haemorrhage in the atherosclerotic carotid artery: a cross-sectional analysis of The Rotterdam Study. Eur Heart J. 2018; 39: 3369-76. PubMed

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収載年月2015.05
更新年月2018.11