循環器トライアルデータベース

SAMURAI-ICH
Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement - Intracerebral Hemorrhage

目的 SAMURAI-ICHは,特発性脳出血患者において超急性期(発症後3時間未満)のCa拮抗薬nicardipine静注による降圧治療(目標収縮期血圧[SBP]<160mmHg)の安全性と実行可能性を検証した前向き観察研究で,72時間以内の神経学的増悪と重篤な有害事象の結果から,本治療法の良好な忍容性と実行可能性が2012年に報告された(J Hypertens. 2012; 30: 2357-64. PubMed)。
本研究コホートにおいて,下記3つの関連を検討する。
1) 降圧治療後の達成SBPと転帰の関連。
2) 治療期間と転帰の関連。
脳出血急性期における降圧治療の有効性を示したINTERACT2などの試験は発症後≧24時間の厳格な降圧を求めているが,至適治療期間は明らかでないことから,1時間ごとのSBPと転帰の関連を検証する。
3) 血圧の変動と転帰の関連。
INTERACT2試験のpost hoc解析で示された発症後24時間のSBPの標準偏差(SD)と3か月後の転帰不良との線形の関係を検証する。
評価項目は,神経学的増悪(ベースラインから72時間後までのGlasgow昏睡スケール(GCS)の≧2の低下,またはNIHSSスコア≧4の上昇),血腫拡大(ベースラインから24時間後までの容積の変化>33%),転帰不良(3か月後のmodified Rankinスケール4~6)。
コメント 高血圧治療ガイドライン(JSH2014)によれば,脳出血超急性期では収縮期血圧(SBP)180mmHgを超える場合に降圧対象となり,降圧の程度は前値の80%を目安とするとされている。しかしながら,この推奨の根拠となる確固たるエビデンスが存在するわけではなかった。INRERACT2では脳出血発症後6時間以内のSBPが150~220mmHgの患者を対象としてSBP<140mmHgの積極的降圧療法とSBP<180mmHgの標準的降圧療法を比較したが,積極的降圧による死亡または重度の障害は減少しなかったものの,転帰の改善効果は示された。
SAMURAI-ICHでは,脳出血発症後3時間以内でSBP>180 mmHgの患者を対象にし,SBPを120~160mmHgに維持したが,達成されたSBPは症状増悪,血腫増大,転帰不良に関連し,発症後24時間継続する降圧は転帰を改善し,発症後24時間以内のSBPの変動は症状増悪と転帰不良と関連していたという結果が示された。以上の成績より,脳出血超急性期には従来よりも積極的で,安定的な降圧が症状の転帰改善のために推奨されるように思われるが,転帰改善効果は血腫増大の抑制によりもたらされたのかどうかは不明であり,至適降圧レベルについても今後の検討課題である。(内山
デザイン 前向き観察研究,多施設(日本の脳卒中センター10施設)。
期間 追跡期間は3か月。
登録期間は2009年7月~’11年6月。
参加者 211例(文献3のみ205例)。≧20歳,特発性テント上脳出血発症後3時間未満の患者で,GCS≧5,発症直後のSBP>180mmHg,発症後<2.5時間のCT検査で容積<60mL のテント上実質内血腫が確認され,広範な脳室内出血を認めないもの。
■患者背景(文献1より抜粋):年齢65歳*,女性81例(38%),NIHSSスコア13*,血腫容積10.2mL*,危険因子(高血圧83%,高脂血症41%,糖尿病14%,飲酒57%,喫煙32%),SBP 200mmHg*,心拍数80bpm<*,発症~CTまで70分*
* 中央値
調査方法 発症後3時間以内にnicardipine静注を5mg/時より開始し,SBP 120~160mmHgを維持するよう調節しながら24時間投与。以後は降圧薬を経口投与。
血圧と脈拍を最初の2時間は15分ごと,その後22時間は60分ごと(30回/24時間測定),さらに48時間後,72時間後に測定した。
文献1)は,24時間の達成SBP(30回測定したSBPの平均値)と転帰の関係を評価。
2)は,24時間における1時間ごと・48時間後・72時間後のSBP,および3つの時間帯(1~8, 9~16, 17~24時間後)の平均SBP(mSBP)と転帰の関係を評価。
3)は,24時間の血圧変動(1時間ごとに測定したSBP・拡張期血圧[DBP]のSDおよび逐次変動(successive variation: SV)と転帰の関係を評価。
結果 文献1):降圧治療後の達成SBPと転帰の関連
目標SBP域達成時間は30分で,達成後にSBPが目標域内にあった時間の割合は78.0%。
血腫拡大36例(17%),神経学的増悪17例(8%),転帰不良87例(41%)。
転帰不良例は良好例(124例)にくらべ有意に高齢(70 vs 62歳*),NIHSSスコアが高く(15 vs 10*),血腫容積が大きかった(14.0 vs 9.0mL*)。さらに達成SBPも高かった(139 vs 137mmHg*, p=0.012)。
* 中央値
多変量回帰分析で,達成SBPは独立して神経学的増悪(10mmHg上昇ごとのオッズ比[OR]4.45;95%信頼区間2.03~9.74),血腫拡大(1.86;1.09~3.16),転帰不良(2.03;1.24~3.33)と関連した。
★結論★超急性期の脳出血患者において,降圧治療後の達成SBP高値は独立して転帰不良と関連した。

文献2):治療期間と転帰の関連
3つの時間帯のmSBP(中央値)は,1~8時間後132mmHg,9~16時間後131mmHg,17~24時間後137mmHg。
血腫拡大36例(17%),神経学的増悪17例(8%),転帰不良87例(41%)。
多変量回帰分析において,4・8・13・15・17時間後のSBP高値は神経学的増悪と,4・15・19・22時間後のSBP高値は転帰不良とそれぞれ有意に関連した。48・72時間後のSBPはいずれの転帰とも関連しなかった。
また,1~8時間後のmSBP高値(10mmHg上昇ごとのOR 2.41;95%信頼区間1.34~4.69),9~16時間後の高値(2.08;1.20~3.80)は独立して神経学的増悪と,9~16時間後の高値(1.40;1.02~2.00),17~24時間後の高値(1.45;1.05~2.05)は転帰不良と関連した。血腫拡大はmSBPと関連しなかった。
★結論★発症後24時間継続する降圧治療により転帰が改善する可能性が示された。

文献3):血圧の変動と転帰の関連
SBPのSD,SVはそれぞれ13.8mmHg, 14.9mmHg,DBPは9.4mmHg, 13.1mmHg。
血腫拡大33例(16%),神経学的増悪14例(7%),転帰不良81例(40%)。
多変量回帰分析で,神経学的増悪はSBPのSD(四分位ごとのOR 2.75;95%信頼区間1.45~6.12),SBPのSV(2.37;1.32~4.83)と関連,転帰不良はSBPのSV(1.42;1.04~1.97)と関連した。血腫拡大はSBPの変動とは関連しなかった。
DBPの変動はいずれの転帰とも関連しなかった。
★結論★脳出血発症後24時間以内のSBPの変動は,神経学的増悪および転帰不良と独立して関連した。

[主な結果]
  • 文献1) Sakamoto Y et al for the SAMURAI study investigators: Systolic blood pressure after intravenous antihypertensive treatment and clinical outcomes in hyperacute intracerebral hemorrhage: the stroke acute management with urgent risk-factor assessment and improvement-intracerebral hemorrhage study. Stroke. 2013; 44: 1846-51. PubMed
  • 文献2) Kobayashi J et al for the SAMURAI study investigators: Continuous antihypertensive therapy throughout the initial 24 hours of intracerebral hemorrhage: the stroke acute management with urgent risk-factor assessment and improvement-intracerebral hemorrhage study. Stroke. 2014; 45: 868-70. PubMed
  • 文献3) Tanaka E et al: Blood pressure variability on antihypertensive therapy in acute intracerebral hemorrhage: the stroke acute management with urgent risk-factor assessment and improvement-intracerebral hemorrhage study. Stroke. 2014; 45: 2275-9. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2014.12