循環器トライアルデータベース

NECTAR-HF
Neural Cardiac Therapy for Heart Failure

目的 交感神経活性の亢進と副交感神経活性の低下は,心不全(HF)の進行の一因であり,予後不良と関連する。この自律神経系のアンバランスを正常化するアプローチとして,迷走神経の直接刺激による副交感神経の賦活化が提案され,観察研究でQOLや運動耐容能を改善する可能性が示されている。
ガイドライン推奨の内科治療を受けている重度の左室収縮機能障害を有する症候性心不全患者において,右側頸部迷走神経刺激(VNS)の追加により心臓リモデリングが抑制され,心機能が改善し,運動耐容能が改善するかを検討する。本報は6か月後の結果。

有効性の一次エンドポイントは,左室収縮末期径(LVESD)の6か月後の変化。
安全性の一次エンドポイントは,18か月後の全死亡。
コメント 慢性心不全の病態進行に副交感神経の不活化による交感神経活性の亢進が関与することが知られている。副交感神経の刺激(VNS)は動物実験および臨床予備試験からその有用性が期待されているが,今回のNECTAR-HFの中間報告は,6ヵ月のVNSで症状の改善はあったものの左室リモデリングの効果がみられなかったとする発表である。6ヵ月では,リモデリングの効果をみるには早すぎるのかもしれないし,VNSの刺激条件が最適でないのかもしれない。QOL(症状,NYHA)の改善はこのようなデバイス試験ではしばしばみられることであるが,盲検性が十分に担保されていないことも考慮しなければならない。今後の長期成績に期待すると同時に,現在進行中の同様の試験INOVATE-HF, ANTHEM-HF試験の結果も待ちたい。(
デザイン 無作為割り付け,多施設(西欧の24施設),modified intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は18か月。今回の結果は6か月後。
対象患者 95例。EF≦35%,左室拡張末期径(LVEDD)≧55mm,NYHA心機能分類II~III度で,登録前の30日以上,ガイドラインに準じた内科治療を受けた患者。
除外基準:持続性・永続性心房細動,心臓再同期治療(CRT)<1年,CRT非施行のQRS>130ms,1型・2型糖尿病>5年,治療期間<6か月の睡眠時呼吸障害,外科的治療可能なHF,HF・心筋梗塞(MI)による入院歴(それぞれ30日,90日以内),透析適応など。
■患者背景:年齢(VNS群59.8歳,対照群59.3歳),男性(89%, 81%),BMI(28.6kg/m², 31.2kg/m²;p=0.02),NYHA III度(51例,22例),ICD(51例,22例),CRT-D(5例,4例),心拍数(68.2bpm, 71.3bpm), 血圧(118/73mmHg, 115/73mmHg),既往(虚血性心不全:70%, 63%,高血圧:46%, 66%,MI:67%, 59%,2型糖尿病:22%, 28%)。
服薬状況:β遮断薬(両群とも94%),ACE阻害薬(81%, 75%),ARB(27%, 22%),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(68%, 72%),ループ利尿薬(86%, 100%;p=0.02),スタチン(79%, 59%;p=0.04)。
治療法 全例にVNSデバイスを植込んだ。リードは螺旋状の末端を右側頸部迷走神経周囲に巻き付け,皮下トンネルを通して,右胸部の皮下に植込んだパルス発生器に接続。植込み後14日以内のベースライン評価後,2 : 1の比率でランダム化。
VNS群(63例):迷走神経刺激ON。
対照群(32例):迷走神経刺激OFF。
盲検維持のため,全例に刺激の振幅の調節(頸部の痛みや咳などの副作用発生まで,もしくは最大許容電流[4mA]到達まで振幅を増大)を実施。調節後に対照群のみ刺激スイッチをオフにし,6か月追跡後に再度オンにした。
患者には「治療中もしくは慢性的に刺激を感じることがあるが,その感覚は治療による刺激を反映したものではない」と説明。毎受診時に「どちらの群に割付けられたと思うか」を調査し,盲検化の程度をblinding index(範囲0~1;0=完全に盲検,1=完全に非盲検)により評価。
結果 (進行中)
追跡不能は両群とも4例。
blinding indexは,VNS群0.70,対照群0.31。
[一次エンドポイント]
治療前後のデータが得られた87例を解析対象とした。
LVESDの変化は,VNS群がベースライン時4.9cm→ 6か月後4.9cm,対照群5.2→ 5.1cmで,変化量に有意な両群間差は認められなかった(-0.04cm vs -0.08cm;p=0.60)。
[二次エンドポイント]
その他の心エコーパラメータ(LVEDD:5.9→ 5.8 vs 6.0→ 6.0cm,左室収縮末期容積:154.7→ 142.5 vs 164.0→ 152.1mL,左室拡張末期容積:218.3→ 207.4 vs 235.4→ 221.3mL, EF:30.5→ 32.7 vs 30.8→ 32.1%),運動耐容能(peak VO2:15.6→ 15.8 vs 15.2→ 14.7mL/kg/min), NT pro-BNP(879→ 930 vs 882→ 839pg/mL[中央値])の変化にも有意差はみられなかった。
一方,QOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireスコア:44.4→ 35.8 vs 42.8→ 41.8;p=0.049, SF-36 Physical Componentスコア:36.3→ 41.2 vs 37.7→ 38.4;p=0.016),NYHA心機能分類(1度以上改善:62% vs 45%;p=0.032)の改善はVNS群のほうが有意に大きかった。
[安全性]
死亡はVNS群1例(HF悪化),対照群2例(HF合併症),HFによる入院は7例,5例。感染症は7/95例に発生,感染症によるシステムの除去はそれぞれ1例,2例。ICDショック,抗頻拍ペーシングは9.5%, 6.5%(p=0.71)で,いずれも刺激装置による干渉とは無関係と判定された。
★結論★症候性心不全患者において,迷走神経刺激による心臓リモデリングおよび心機能の有意な改善は認められなかった。ただし,QOLとNYHA心機能分類は改善した。
ClinicalTrials gov. No: NCT01385176
文献
  • [main]
  • Zannad F et al: Chronic vagal stimulation for the treatment of low ejection fraction heart failure: results of the neural cardiac therapy for heart failure (NECTAR-HF) randomized controlled trial. Eur Heart J. 2015; 36: 425-33. (Epub 2014 Aug 31.) PubMed
    Camm AJ and Savelieva I: Vagal nerve stimulation in heart failure. Eur Heart J. 2015; 36: 404-6. (Epub 2014 Aug 31.) PubMed

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収載年月2014.10