循環器トライアルデータベース

PREVAIL
Prospective Randomized Evaluation of the Watchman LAA Closure Device in Patients with Atrial Fibrillation versus Long Term Warfarin Therapy

目的 PROTECT AF試験は非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における脳卒中,心血管死,全身性塞栓症(SE)への有効性に関して,デバイス(Watchman)による左心耳閉鎖術のwarfarinに対する非劣性を示したが,FDAは対象の選択基準(CHADS2スコア=1が含まれる)と周術期の安全性に関する懸念を指摘し,新たな臨床試験の実施を勧告した。
NVAF患者の脳卒中予防において,Watchmanによる左心耳閉鎖の安全性と有効性を長期warfarin療法と比較する。

有効性の一次エンドポイントは,1)出血性または虚血性脳卒中,SE,心血管死/原因不明の死亡の複合エンドポイント,2)ランダム化後8日目以降の虚血性脳卒中またはSE。
安全性の一次エンドポイントは,ランダム化~手技後7日間または入院中の全死亡,虚血性脳卒中,SE,仮性動脈瘤の手術などの開胸手術または血管内治療を要するデバイス/手技関連イベントの複合エンドポイント。
コメント J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 1-12. へのコメント
左心耳の器械的閉鎖の効果がワルファリンに劣らないことが示された。ことに,左心耳が非弁膜症生AF例の主な塞栓源になることが示されたことは重要なデータである(弁膜症性では左心耳以外の部位にも塞栓子となる血栓が形成される)。この研究からWatchmanを臨床の現場に広範に応用するには慎重にならざるをえない。まず,NOAC(新規経口抗凝固薬)が使用できる今日,Watcmanの有効性・安全性がNOACとくらべて優る/劣らないと言えるのか不明である。本研究ではリスクの高い例が除外されているので,このような例に安全に使用できるのか不明である。抗凝固薬が使用できない例でこそWatcmanを使用したいが,植込み後1か月半はワルファリン投与が必要である。まだ解決されるべき課題は多いが,非弁膜症性AF例の心原性塞栓症の新たな選択肢が出てきたことは朗報といえよう。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(米国の50施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は11.8か月。
対象患者 407例。NVAF(発作性・持続性・永続性)患者で,CHADS2スコア≧2のもの,あるいはスコア≧1+次のリスク因子のいずれかを保有しているもの:≧75歳+女性,EF≧30~<35%,65~74歳+糖尿病・冠動脈疾患,≧65歳+うっ血性心不全。
除外基準:AF以外の理由で長期抗凝固療法が必要,過去90日以内の脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA),症候性頸動脈疾患,治療を要する卵円孔開存または心房中隔欠損,clopidogrel適応など。
■患者背景:平均年齢(デバイス群74.0歳,warfarin群74.9歳),女性(32.3%, 25.4%),白人(94.1%, 94.9%),CHADS2スコア(両群とも2.6):うっ血性心不全(23.4%, 23.2%);高血圧既往(88.5%, 97.1%;p=0.003);≧75歳(52.0%, 56.5%);糖尿病(33.8%, 29.7%);虚血性脳卒中/TIA既往(27.5%, 28.3%),AF(発作性:48.7%, 51.4%;永続性:15.6%, 15.9%;持続性:31.6%, 28.3%),EF(55.4%, 56.0%),CHA2DS2-VAScスコア(3.8, 3.9)。
治療法 下記2群に2:1にランダム化。
デバイス群(269例):デバイスを植込み後,warfarin(INR 2~3)とaspirin 81mgを45日間投与。45日目の経食道心エコーで左心耳の完全閉鎖(デバイス周囲の残存血流幅<5mmで,デバイス上に大きな血栓なし)を認めればwarfarinを中止。clopidogrel 75mg/日を6か月間,aspirin 81~325mg/日を無期限投与。45日目に閉鎖を認めなかった場合はwarfarinとaspirinを継続し,6,12か月後の経食道心エコーで完全閉鎖を確認後,warfarinを中止してaspirinのみを無期限投与。
warfarin群(138例):warfarin(INR 2~3)を投与。INRのモニタリングは少なくとも隔週で6か月間,その後は少なくとも1か月ごとに実施し用量を調節。
結果 [手技成績]
デバイス植込みを試みた症例における手技成功(デバイスの留置)率は252/265例(95.1%)で,PROTECT AFの90.9%から改善した(p=0.04)。
経験豊富な術者と新規の術者との有意差はみられなかった(96.3% vs 93.2%, p=0.256)。
植込み後のwarfarin中止例の割合は,45日後92.2%,6か月後98.3%,12か月後99.3%。
[有効性の一次エンドポイント]
18か月後の複合エンドポイントの発生率はデバイス群0.064,warfarin群0.063(Bayesian modelによる率比1.07;95%確信区間[credible interval: CrI]0.57~1.89)で,非劣性の基準(95%CrI上限<1.75)は満たされなかった。
ランダム化後8日目以降の虚血性脳卒中またはSEは,0.0253 vs 0.0200(リスク差0.0053;95%CrI -0.0190~0.0273)で,非劣性の基準(95%CrI上限<0.0275)が満たされた。
[安全性の一次エンドポイント(デバイス群のみ解析)]
イベント発生は6例(2.2%;片側95%CrI上限2.652%)。95%CrI上限の2.652%が,事前に指定したperformance goal(過去の試験[PROTECT AF,CAP]データをもとに算出したデバイスの性能目標値;2.67%)を下回ったことから,安全性の基準は満たされた。
PROTECT AFにくらべると,本試験では,植込み後7日間の手技関連合併症(心穿孔,心嚢液貯留によるタンポナーデ,虚血性脳卒中,デバイス塞栓,その他の血管合併症:8.7→ 4.2%, p=0.004),手技およびデバイス関連の脳卒中(1.1→ 0.4%, p=0.007)の発生率が低下した。
外科的修復を要する心嚢液貯留(1.6→ 0.4%, p=0.027),心膜穿刺または心膜開窓を要する心嚢液貯留(2.9→ 1.5%, p=0.36)も,イベント数は少ないながら減少した。
★結論★左心耳閉鎖術のwarfarinに対する有効性の非劣性は認められなかったが,植込みから8日目以降の虚血性脳卒中およびSEの予防においては非劣性であった。イベント発生率は両群とも低く,手技の安全性は著明に改善した。
ClinicalTrials gov. No: NCT01182441
文献
  • [main]
  • Holmes DR Jr et al: Prospective randomized evaluation of the Watchman left atrial appendage closure device in patients with atrial fibrillation versus long-term warfarin therapy: the PREVAIL trial. J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 1-12. PubMed
    Lee RJ Evolution of stroke prevention in nonvalvular atrial fibrillation patients. J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 13-5. PubMed
  • [substudy]
  • Watchmanによる左心耳閉鎖術5年後の脳卒中リスクはwarfarin群と同等。
    有効性の一次エンドポイント(脳卒中,SE,CV死,原因不明死)に有意な両群間差はなかった(デバイス群3.65 vs warfarin群2.94/100人・年[p=0.47])。
    脳卒中(1.97 vs 1.29/100人・年[p=0.32]),虚血性脳卒中(1.68 vs 0.73/100人・年[p=0.13]),出血性脳卒中(0.18 vs 0.54/100人・年[p=0.23]も両群同等だった。
    18か月後の有効性の一次エンドポイントは,デバイス群0.066 vs warfarin群0.051(率比1.33;95%確信区間[CrI]0.78~2.13)で,非劣性の基準(95%CrI上限<1.75)は満たされなかった。非劣性の事後確率88.4%,優越性は15.8%。一次エンドポイント構成イベントで両群間に有意差のみられたものはなかった。
    ランダム化後8日目以降の虚血性脳卒中またはSEは,0.0255 vs 0.0135(リスク差0.0120;95%CrI -0.0036~0.0275)で,非劣性の基準(95%CrI上限<0.0275)が満たされた。非劣性の事後確率は97.5%:J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 2964-75. PubMed
  • デバイスWatchmanによる左心耳閉鎖術5年後の脳卒中予防はwarfarin群と同等で,大出血,出血性脳卒中,死亡リスクは低かった(PROTECT AFとの統合解析)。
    PREVAIL,PROTECT AFの患者個人データを統合解析し,左心耳閉鎖術の5年後の有効性,安全性を評価した。
    デバイス群732例[平均72.6歳;CHADS2スコア2.3,CHA2DS2-VAScスコア3.6],warfarin群382例[73.5歳;2.4, 3.9])。
    有効性の一次エンドポイントに有意な両群間差はみられなかった(デバイス群2.8 vs warfarin群3.4/100人・年:ハザード比0.82;95%信頼区間0.58~1.17[p=0.27])。有意な交互作用が示されたサブグループもなかった。脳卒中二次予防例でも同様の結果だった。
    脳卒中,全身性塞栓症(SE)も両群で同等だった(1.7 vs 1.8/100人・年:0.96;0.60~1.54[p=0.87])が,虚血性脳卒中,SEは有意ではないもののデバイス群でリスクが高かった(1.6 vs 0.95/100人・年:1.71;0.94~3.11[p=0.08])。しかし,手技関連の脳卒中を除外するとリスクが低下した(1.3 vs 0.95/100人・年:1.40;0.76~2.59[p=0.28])。一方で,デバイス群では出血性脳卒中リスクが有意に低かった(0.17 vs 0.87/100人・年:0.20;0.07~0.56[p=0.0022])。また,同群では後遺障害を残す・致死的脳卒中(0.44 vs 1.0/100人・年:0.45;0.21~0.94[p=0.03]),CV死,原因不明死(1.3 vs 2.2/100人・年:0.59;0.37~0.94[p=0.027])のリスクも低かった。
    さらに全死亡(3.6 vs 4.9/100人・年:0.73;0.54~0.98[p=0.035]),大出血,手技非関連出血(1.7 vs 3.6/100人・年:0.48;0.32~0.71[p=0.0003])もデバイス群のほうが有意に少なかった。手技時や血管アクセス合併症の出血を含む大出血は両群間に有意差はなかった(3.1 vs 3.5/100人・年:0.91;0.64~1.29[p=0.60]):J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 2964-75. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2014.10
更新年月2018.03