循環器トライアルデータベース

CALIBER
Cardiovascular Research Using Linked Bespoke Studies and Electronic Health Records

目的 現在,高血圧に関連する特定の心血管疾患(CVD)の生涯発症率や,高血圧に関連するCVDにより失われる生存年数を推定したデータはない。過去にそれらを試みた研究はあったものの,CVD全体での検討であり,特定の疾患ごとにリスクを検討した研究は非常に少ない。CALIBERは,英国の4つの医療データベースにリンクし個人の長期医療記録(Electronic Health Record;生涯医療電子記録)を作成し,さまざまな研究に提供しようとするプログラム。
プライマリケア施設を受診した患者125万例のデータを用いて,血圧と12のCVDの関係を解析する。

エンドポイントは,プライマリケア・二次ケアにおける初発,または死亡時に診断された12のCVD*および全CVD。
* 安定狭心症,不安定狭心症,心筋梗塞(MI),心臓突然死(unheralded CAD death),心不全,心停止/心臓突然死,一過性脳虚血発作,虚血性脳卒中,くも膜下出血,脳出血,末梢動脈疾患(PAD),腹部大動脈瘤。
コメント BMJ. 2015; 351: h4865. へのコメント
本研究は英国でのプライマリ・ケア医に登録された患者の長期追跡であり,一般住民での検診における追跡研究と大きく異なる。したがっていわゆる虚弱体質や慢性炎症性疾患を有する例は含まれておらず,またすでに心筋梗塞,脳梗塞などの既往例も除外されており,臨床医が日常診療する患者が心血管疾患を初発するまでの追跡である。
血圧が高いことが30歳から90歳までのどの年齢層にとっても,脳出血,くも膜下出血,安定狭心症,心筋梗塞などの心血管疾患発症のリスクであり,至適収縮期血圧が120mmHgであるという最近のSPRINT試験を裏付ける成績をLancet(2014; 383: 1899-911. PubMed)に発表している。 
今回は末梢動脈疾患(PAD)に焦点をあてたサブ解析データであるが,PADも収縮期血圧の20mmHg上昇でその発症確率が63%上昇するという結果であった。J曲線現象はみられず,やはりthe lower, the betterの原則が適応できることを証明した。またPADの患者では慢性腎臓病,虚血性心疾患,心不全,心房細動を発症しやすいことを明らかにしたことも日常診療での感覚に近いものであり,それを追跡研究というエビデンスで証明した点で意義がある。
英国の医療制度では,国民の99%以上がプライマリ・ケア医に登録され,プライマリ・ケア医から基幹病院へ紹介された場合も電子カルテで厳格に追跡されている。
患者はどの医療機関も選ぶことができるというわが国の医療システムとは根本的な違いがあるものの,本研究の結果は,高血圧を降圧不十分なまま放置した場合の長期的予後を示す有用なエビデンスといえる。(桑島

Lancet. 2014; 383: 1899-911. へのコメント
日本の「高血圧治療ガイドライン2014」では中年層の降圧目標の根拠が乏しいまま緩和されたが,それを再び見直す必要を思わせる英国プライマリ・ケア医登録追跡研究データである。
本研究の大きな特徴は英国でのプライマリ・ケア医によるCALIBERプログラムに登録された患者約125万人の長期(中央値5.2年)追跡であり,一般住民での検診をベースとした追跡研究と大きく異なる。したがって,いわゆる虚弱体質や慢性炎症性疾患を有する例は含まれておらず,また心筋梗塞,脳梗塞などの既往例も除外されており,あくまでも心血管疾患(CVD)を初発するまでの追跡である。
結果は,血圧が高いことが30歳代から90歳代までのどの年齢層にとっても,CVDの発症のリスクであり,血圧が心血管系の大きな負荷であることをあらためて示した。心血管イベントにとって最も負担が少ない血圧レベルは収縮期血圧(SBP)90~114/拡張期血圧(DBP)60~74mmHgであり,J曲線はみられないことを示したが,至適SBPが120mmHgであることを確認した成績といえよう。
とくにSBP上昇と関連が深いのは脳出血,くも膜下出血,安定狭心症,心筋梗塞であり, DBP上昇と関連が深いのは腹部大動脈瘤であったという。とくに大動脈瘤が拡張期高血圧,脈圧が小さいことと関連していたのは意外である。
30歳代での高血圧患者における生涯CVD発症リスクは63.3%,正常血圧では46.1%であり,この世代で高血圧を有することはCVD発症を5年早める,という結果である。生活習慣病に関心をもたない健康過信世代の高血圧リスクに対する注意喚起を促す貴重なエビデンスである。
英国の医療制度では,国民の99%以上がプライマリ・ケア医に登録されて,プライマリ・ケア医から基幹病院へ紹介された場合も電子カルテで厳格に追跡されている。
患者はどの医療機関でも選ぶことができるというわが国の医療システムとは根本的な違いがあるものの,本研究の結果は,高血圧を降圧不十分なまま放置した場合の長期的予後を示す有用なエビデンスといえる。(桑島
デザイン 観察研究,多施設(プライマリケア225施設)。
期間 追跡期間は5.2年(中央値)。
登録期間は1997年1月~2010年3月。
参加者 125万8,006例。30歳以上,研究登録日の1年以上前にCALIBERプログラムに登録された非CVD患者のうち,ベースライン血圧が記録されたもの。
■患者背景:女性58%,血圧≧140/90mmHg 43万1,663例,降圧薬投与は26万5,473例。
調査方法 SBP,DBPの上昇に関連する12のCVDのリスクを,年齢別(30~59,60~79,≧80歳)に解析。血圧20/10mmHg上昇ごとの各CVDのハザード比(HR)を算出。また,30,60,80歳時の高血圧に関連する生涯CVDリスク(95歳まで)と高血圧関連CVDによる生存損失年数を推定。
結果 [血圧上昇とCVDリスク]
初発CVDは83,098例。
SBP 20mmHg, DBP 10mmHg上昇ごとに各CVDのリスクは有意に増加したが,関連の強さは疾患によって異なった。
・SBP上昇による全CVDのHRは1.26(95%信頼区間1.25~1.28),DBPは1.23(1.21~1.24)。
・SBP上昇とリスクの関係が強かった疾患は,脳出血(1.44;1.32~1.58),くも膜下出血(1.43;1.25~1.63),安定狭心症(1.41;1.36~1.46),最も弱かったのは腹部大動脈瘤(1.08;1.00~1.17)。
・DBPの上昇と強く関連したのは,脳出血(1.50;1.37~1.64),腹部大動脈瘤(1.45;1.34~1.56),くも膜下出血(1.42;1.25~1.60)。
・SBPはDBPにくらべ,安定狭心症(HR:SBP 1.41, DBP 1.28),MI(1.29, 1.21),PAD(1.35, 1.07)との関連が強く,DBPは腹部大動脈瘤(1.08, 1.45)との関連が強かった。
脈圧の10mmHg上昇は,腹部大動脈瘤と負の関係を示し(0.91;0.86~0.98),PADと最も強く関連した(1.23;1.20~1.27)。
いずれの年齢,疾患においても,リスクが最も低い血圧値は,SBP 90~114mmHg,DBP 60~74mmHgで,J型現象は認められなかった。
[生涯リスク]
30歳時の生涯CVDリスクは,高血圧患者(≧140/90mmHg,降圧薬投与)が63.3%,一方正常血圧者は46.1%であった(絶対差17.2%)。
高血圧関連CVDによる平均生存損失年数は,30歳時5年,60歳時3.4年,80歳時1.6年。
30歳時の高血圧関連生存損失年数のうち大きな割合を占めたCVDは,安定狭心症(22%),不安定狭心症(21%),MI(15%)であったが,80歳時高血圧では心不全と安定狭心症(ともに19%)の割合が大きく,不安定狭心症(15%),MI(12%)が続いた。
★考察★高血圧がCVDに及ぼす影響は疾患,年齢によって異なった。SBPの上昇は狭心症,MI,PADへの影響が大きく,DBPは腹部大動脈瘤への影響が大きかった。また,30歳時の生存損失年数が大きかったCVDは狭心症,80歳時は心不全と狭心症であった。
ClinicalTrials gov. No: NCT01164371

[主な結果]
  • 観察研究では,80歳以上においてSBP<120mmHgは120~139mmHg群にくらべ,フレイル状態,性,降圧治療を問わず全死亡率が高かった。余命2年のSBPは加速的に低下した。
    ≧80歳における収縮期血圧(SBP)と全死亡の関係をフレイル状態別に評価し,死亡前のSBPの軌跡を検証した。
    データソースの一つであるClinical Practice Research Datalink(CPRD:公式サイト http://www.cprd.com/intro.asp)の2001年1月1日~’09年12月31日の登録者のうち,≧1回の血圧測定値がある≧80歳(144,403人)。追跡期間は’14年12月31日までの最長5年。フレイルの状態は,e-Frailty indexを使用しfit(健常),mild(軽度),moderate(中等度),severe(重度)に,SBPは5分類した(<110mmHg[4,389例],110~119mmHg[9,381例],120~139mmHg[53,931例],140~159mmHg[58,719例],≧160mmHg[17,983例])。
    死亡は51,808例。死亡率はフレイルの状態が重度になるほど高くなり,SBP<110mmHg(非治療例:fit 20.3, mild 28.6, moderate 40.3, severe 47.9/100人・年;治療例:22.7, 31.9, 33.8, 39.6/100人・年)で最も高かった。男女ともに,SBP 120~139mmHg群にくらべ110~119mmHg群,<110mmHg群で全死亡の相対ハザード比が高く,この関係は降圧治療の有無,フレイルの状態を問わなかった。
    降圧治療(非治療例)例の死亡率は,SBP 120~139mmHg:7.7(8.0), 110~119mmHg:15.2(13.4), <110mmHg:22.7(20.3)/100人・年,重度フレイルの場合は,それぞれ16.8(20.7), 25.2(32.3), 39.6(47.9)/100人・年と高かった。余命2年間のSBPの軌跡は加速的低下を示した。SBP<120mmHgの死亡オッズ比(余命3か月 vs 5年)は,降圧治療例:6.06(95%信頼区間5.40~6.81),非治療例:6.31(5.30~7.52)(Ravindrarajah R et al: Systolic blood pressure trajectory, frailty, and all-cause mortality >80 years of age: cohort study using electronic health records. Circulation. 2017; 135: 2357-68.)。 PubMed
  • Rapsomaniki E et al: Blood pressure and incidence of twelve cardiovascular diseases: lifetime risks, healthy life-years lost, and age-specific associations in 1.25 million people. Lancet. 2014; 383: 1899-911. PubMed
    Kahan T: Focus on blood pressure as a major risk factor. Lancet. 2014; 383: 1866-8. PubMed
  • 正常範囲内でも好中球数と強く関連する初発CVD(心不全,心臓突然死,PAD,腹部大動脈瘤)もあるが,関連のみられないCVD(狭心症,出血性脳卒中)もあった。
    白血球の一種で炎症に関係する好中球数と12の心血管疾患(CVD)初発リスクとの関係を検証した結果。
    急性期に血球数検査が終了した安定例(621,052例)を中央値追跡期間3.8年追跡後,55,004例がCVDを発症。血球数がより多かったのは,喫煙例,貧困地域住人,合併例(糖尿病,喘息,慢性閉塞性肺疾患,炎症性腸疾患など)。
    好中球数が正常域上限高値(6~7☓109/L)例は正常域内最低値(2~3☓109/L)例にくらべ,非致死的心筋梗塞(調整ハザード比1.58),心臓突然死(unheralded CAD death:1.78),心不全(2.04),末梢血管疾患(PAD:1.95),腹部大動脈瘤(1.72)のリスクが直線的に上昇し,3~4☓109/L例でも2~3☓109/Lよりもリスクが高かった。リスク差は最初の数か月が最大だった。一方,安定狭心症(0.97),不安定狭心症(1.00)とは関連しなかった。また虚血性脳卒中との関連は弱く(1.36),出血性脳卒中との関連はみられなかった。関連は年齢,性別のみで調整した場合がより強く,喫煙の交互作用は示されなかった(Shah AD et al: Neutrophil counts and initial presentation of 12 cardiovascular diseases: a CALIBER cohort study. J Am Coll Cardiol. 2017; 69: 1160-9.)。 PubMed
  • 中等度飲酒量例でリスクが低い初発CVDもあるが,そうではないCVDもある。
    飲酒量と12の初発心血管疾患(CVD)の関連を検証した結果。
    30歳以上の193万7,360人(女性51%)を中央値6年追跡後のCVD発症は114,859例。飲酒量は試験登録の直近5年間のデータを使用。
    非飲酒例(全体の14.3%),飲酒歴例(3.7%),多飲酒例(8.4%)では飲酒量と致死的CVD,全CVDおよび全死亡にJ型の関係がみられ,中等度飲酒例(61.7%)にくらべリスクが上昇。非飲酒例(平均年齢48.5歳・女性66.9%)は,中等度量飲酒例(英国ガイドラインで推奨されている節度のある飲酒量:男性:21units*/週;3 units/日,女性:14 units;2 units範囲内。45.8歳・50.2%)にくらべ,不安定狭心症(ハザード比1.33),心筋梗塞(1.32),心臓突然死(unheralded CAD death:1.56),心不全(1.24),虚血性脳卒中(1.12),PAD(1.22),腹部大動脈瘤(1.32)のリスクが高かった。ただし,post-hoc解析では非飲酒例で非喫煙例,肥満例で心停止,心臓突然死,大動脈瘤リスクの上昇はみられなかった。
    ガイドラインを超える多量飲酒例(45.8歳・33.1%)も中等度飲酒例にくらべ,心臓突然死(1.21),心不全(1.22),心停止(1.50),一過性脳虚血発作(1.11),虚血性脳卒中(1.33),出血性脳卒中(1.37),PAD(1.35)のリスクが高かったが,心筋梗塞(0.88。post-hoc解析で喫煙例は0.95,BMI正常域例は1.00),安定狭心症(0.93)のリスクは低かった。 * 1 unit is 10mL of pure alcohol;100%アルコール10mL(Bell S et al: Association between clinically recorded alcohol consumption and initial presentation of 12 cardiovascular diseases: population based cohort study using linked health records. BMJ 2017; 356: j909.) PubMed
  • 実地臨床でのAMI後≧1年の長期DAPTのリスク・ベネフィット-RCTの対象に一致する高リスク例は23%のみで,3年イベントリスクはRCTの約2倍と高い。
    ランダム化比較試験(RCT)PEGASUS-TIMI 54で認められた急性心筋梗塞(AMI)後の安定患者での長期2剤併用抗血小板療法(DAPT)のリスク・ベネフィットを,実地臨床の患者(CALIBER)で推定(AMI発症1年後から中央値1.5年追跡)。
    2005年4月~’10年3月(ticagrelor発売前)登録のAMI発症後≧1年生存例(7,328例)のうちPEGASUS-TIMI 54の登録・除外基準を満たす高リスク患者を「標的群」(1,676例[23.1%])とした。心血管エンドポイント(AMI・脳卒中・心血管疾患死)の3年累積発生率は標的群でPEGASUS-TIMI 54のaspirin単剤群の約2倍と高く(18.8% vs 9.04%),出血エンドポイント(TIMI大出血)も同様だった(3.0% vs 1.26%)。標的群にPEGASUS-TIMI 54のticagrelor 60mg群の相対リスク(ハザード比)を適用すると,1万例・年の治療で予防される心血管エンドポイントは101件,TIMI大出血の増加は75件,致死的・頭蓋内出血の増加は10件(Timmis A et al: Prolonged dual antiplatelet therapy in stable coronary disease: comparative observational study of benefits and harms in unselected versus trial populations. BMJ. 2016; 353: i3163.)。 PubMed
  • 一般住民の血圧(usual blood pressure)と2型糖尿病リスク-SBP 20mmHg, DBP 10mmHg上昇で糖尿病発症リスクが58%, 52%増加。
    データソースの一つであるClinical Practice Research Datalink(CPRD;公式サイトhttp://www.cprd.com/intro.asp)のデータを用いて,血圧と2型糖尿病発症リスクの関係を検証した結果(1990年1月1日~2013年1月1日に血圧を測定した413万2,138人[年齢中央値46歳,女性55.9%];追跡期間中央値6.8年):因果関係希釈バイアス(regression dilution bias)を調整した“usual blood pressure”(初回測定値をあてた)で評価。
    糖尿病新規発症は18万6,698例。収縮期血圧(SBP)20mmHg,拡張期血圧(DBP)10mmHg上昇により糖尿病発症リスクはそれぞれ有意に増加(ハザード比[HR]1.58, 1.52)。110~170/70~100mmHgにおいてJカーブ現象はみられなかった。この関係は若年齢(30~50歳:HR 2.00, 1.89, 71~90歳:1.14, 1.01),BMI低値(≦25kg/m²:1.89, 1.73, >35kg/m²:1.19, 1.19)ほど強かった。降圧薬・脂質低下薬処方患者を除外した感度分析でも結果は変わらなかった。
    補完的に行った30の観察研究・28万5,664人のメタ解析では,17,388人が糖尿病を発症。SBP 20mmHg上昇ごとに糖尿病リスクは77%増加した(相対リスク1.77)(Emdin CA et al: Usual blood pressure and risk of new-onset diabetes: Evidence from 4.1 Million adults and a meta-analysis of prospective studies. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 1552–62.)。 PubMed
    Arnett DK: Analysis of large electronic health record databases supports blood pressure-incident diabetes association. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 1563-5. PubMed
  • 一般住民の血圧(usual blood pressure)とPAD・血管リスク-SBP 20mmHg上昇でPADのリスク増大。PADはCKD,虚血性心疾患,心不全など11の血管イベントと有意に関連。
    CALIBERのデータソース(Clinical Practice Research Datalink, Hospital Episode Statistics)とOffice for National Statisticsを用いて,血圧と末梢動脈疾患(PAD),PADと12の血管イベントの関係を検証した結果(1990~2013年に血圧を測定した心血管疾患[PAD除く]既往のない422万2,459人,うちPADは18,269例[0.43%];年齢中央値46歳,女性55.5%,BMI中央値25.8kg/m²;追跡期間中央値7.0年):因果関係希釈バイアス(regression dilution bias)を調整した“usual blood pressure”で評価。
    ベースライン時の非PAD例でのPAD発症率は1.05%,PAD以外の血管イベントは11.55%,PAD例は42.5%。
    収縮期血圧(SBP)20mmHg,拡張期血圧10mmHg上昇でPADリスクは有意に増加(ハザード比[HR]1.63, 1.35)。110~170/70~100mmHgにおいてJカーブ現象はみられなかった。SBP上昇との関係は高齢者(30~40歳:HR 2.51, 71~90歳:1.36),BMI高値(≦25kg/m²:1.72, ≧35kg/m²:1.35)で弱まったが(交互作用p<0.001),性別,喫煙の影響はなかった。
    ベースライン時のPADは11の血管イベントと関連(大動脈瘤:HR 2.10,虚血性心疾患:1.68,心不全:1.63,慢性腎臓病[CKD]:1.31など),出血性脳卒中とは関連しなかった。もっとも多かった初発イベントはCKD(24.4%),次いで虚血性心疾患(18.5%),心不全(14.7%),心房細動(13.2%),もっとも少なかったのは出血性脳卒中(1.0%)だった。
    これらの結果は,補完的に行ったメタ解析(血圧とPAD;6研究),Ankle Brachial Index Collaborationによるメタ解析(PADと血管イベント)の結果と変わらなかった(Emdin CA et al: Usual blood pressure, peripheral arterial disease, and vascular risk: cohort study of 4.2 million adults. BMJ. 2015; 351: h4865.)。 PubMed
  • 2型糖尿病と12のCVD-5.5年間で最も発症率が高かった初発CVDはPADと心不全。
    2型糖尿病と12の心血管疾患(CVD)発症の関連を検証した結果(CVD非発症例192万1,260例;追跡期間中央値5.5年):2型糖尿病例(34,198例[1.2%])は,非糖尿病例にくらべHDL-Cが低く,BMIが高く,スタチン・降圧薬服用者が多かった。また,40~50代(CVD既往を問わない)の登録例における全糖尿病有病率は,女性1.52%,男性2.25%。追跡期間中の新規糖尿病診断例は51,690例(診断までの期間の中央値4.9年)。
    初発CVDは11万3,638件,うち2型糖尿病例での発症は6,137件(5.4%)で,最も多かったCVDは末梢動脈疾患(PAD)992件(16.2%),次いで心不全866件(14.1%)。一方,非糖尿病例での発症(10万7,501件)ではPADが10,074件(9.4%),心不全が13,072件(12.2%)。
    2型糖尿病は,PAD(ハザード比2.98),虚血性脳卒中(1.72),安定狭心症(1.62),心不全(1.56),非致死的心筋梗塞(1.54)と強力な正の関係を示した一方,腹部大動脈瘤(0.46),くも膜下出血(0.48)とは負の関係で,不整脈または心臓突然死とは関連しなかった(Shah AD et al: Type 2 diabetes and incidence of cardiovascular diseases: a cohort study in 1·9 million people. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015; 3: 105-13. Epub 2014 Nov 11.)。 PubMed
  • 男女での初発CVD-66%は心筋梗塞でも虚血性脳卒中でもなかった。特定のCVDとの関連は男女で異なる。
    特定の心血管疾患(CVD)の初発の発症率が男性と女性でどのような違いがあるのか,男性は全CVDの強い危険因子なのか,それとも疾患によりリスク度が異なるのかは明らかでないため,さまざまなCVD*の発症を,男女別,年齢別に比較した結果(193万7,360人[女性51%,白人90%];追跡期間中央値6年):30~80歳の10歳ごとに,症状,兆候が初めて診断・記録されたCVDとの関連を推定した。* 安定狭心症,不安定狭心症,非致死的心筋梗塞(MI),心臓(冠動脈)突然死(unheralded CAD death:UCD),心不全,心停止/心室性不整脈/心臓突然死(SCD),一過性脳虚血発作(TIA),虚血性脳卒中,くも膜下出血(SAH),脳出血,腹部大動脈瘤(AAA),末梢動脈疾患(PAD),複合CVD,その他の死亡。
    血圧,降圧薬服用の割合は加齢とともに増加し,その増加は全年齢層で女性のほうが多かった。女性より男性のほうが現喫煙,喫煙歴が多かったが,60歳以降現喫煙率は低下した。スタチン服用率は低かったが全年齢層で女性より男性のほうが高かった。
    <初発CVDの発症率>11万4,859例(男性52.3%)発症し,その66%はMIでも虚血性脳卒中でもなかった。非致死的MI,UCD,虚血性・病型不明の脳卒中が32.5%。男性でもっとも多かったのは非致死的MIで,30代(32.5%)では女性(11.2%)の2倍以上であったが,加齢とともに低下し>80代では女性と差がなくなった。安定・不安定狭心症は男女同等で年齢とともに減少した。虚血性脳卒中,心不全は若年層では少なかったが,男女とも60代から増加し始め,80代では上位2つの初発CVDとなった。
    <年齢との関連>CVDにより異なった(直線的関係:狭心症,非致死的MI,非直線的:UCD,脳卒中,AAA),非常に強い関連(心不全,AAA),弱い関連(SAH,不安定狭心症,心停止/ SCD)。
    <性との関連>男性ではSAHが少なかった(女性とくらべたハザード比[HR]0.69)。その他のCVDとは正の関係がみられたが,リスク度は疾患により幅があった(年齢調整HR<1.5:TIA,脳出血,不安定狭心症,1.5~2.0:安定狭心症,虚血性脳卒中,PAD,心不全,心停止/SCD,3.6~5.0:AAA,MI[ST上昇型は4.14,非ST上昇型は3.18],UCD。
    性別と初発CVDの関連は年齢により異なり(男性のHRが大きかったのは,若年齢層では冠動脈エンドポイント,中年層では虚血性脳卒中,PAD,AAA),最も差が顕著だったのは<60歳・男性のMI,UCDリスクで,女性の>4倍であった(George J et al: How does cardiovascular disease first present in women and men? Incidence of 12 cardiovascular diseases in a contemporary cohort of 1 937 360 people. Circulation. 2015; 132: 1320-8.)。 PubMed

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収載年月2014.08
更新年月2017.07