循環器トライアルデータベース

HERCULES
Safety and Effectiveness Study of the Herculink Elite Renal Stent to Treat Renal Artery Stenosis

目的 腎動脈ステント植込みはアテローム動脈硬化性腎動脈狭窄症(ARAS)患者における血管開存性の確保と維持に有効であり,降圧効果や腎機能障害予防効果も示されている。しかし,その後のランダム化比較試験で有効性が示されず,さらにこれらの試験はデザインに問題があったことから,腎動脈ステントの有効性については議論が続いている。
適切に評価,選別されたARASを有するコントロール不良の高血圧患者において,最新のデバイスを用いた腎動脈ステントの有効性と安全性を検討する。

一次エンドポイントは,9か月後のbinary再狭窄。
コメント 腎動脈狭窄症を伴う高血圧症に対する腎動脈ステント治療の現時点でのランドマーク試験はCORALと考えられ,十分な内服治療例においてステント治療の追加は臨床的有用性を示せなかった。ASTRALやSTARでもよく似た結果であったが,これらの研究では対象症例の選択に問題があり,ステント治療による血圧低下作用が小さかった。すなわち,腎動脈狭窄症例の血圧上昇は腎動脈狭窄そのもののみに由来しているとは限らず,本態性高血圧も併発している可能性がある。腎動脈狭窄が腎血流の不安定さをもたらし,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を賦活化し,血管内volumeに影響して難治性の高血圧症となっている例にはステント治療が有用であることは十分に想定される。対象基準として,腎血行動態的に有意な変化を起こすほどの高度な腎動脈狭窄病変を有し,利尿薬を含む多剤併用療法でも高度な高血圧を呈する症例を選択すればステント治療の有用性が示されうるのである。以前に比べるとステントやdelivery systemが改善しており,治療手技の安全性がより高まっている。HERCULESの初報では9ヵ月後でもステント治療による血圧低下は持続しており,今回の報告では手技成功率・安全性が高いこと,3年後においてもステント治療により血圧低下作用が有意に持続していることを示している。対照のないシングルアームでランダム化もされておらず,血圧低下作用は一次エンドポイントではないことより,エビデンスレベルは決して高いとはいえない研究である。しかし,適切な症例を対象とすれば腎動脈狭窄を有する高血圧症例に対するステント治療というstrategyは首の皮一枚でつながっており,現在進行中のRADARやMETRASの結果を注視したい。(星田
デザイン 前向き非比較試験,多施設。
期間 追跡期間は3年。
登録期間は2007年8月~’09年10月。
対象 202例・241病変。著明な腎動脈狭窄*を有するコントロール不良の高血圧**患者。腎動脈入口部から10mm以内に位置する病変で,参照血管径4~7mmの片側/両側ARASとした。
* 血管造影上の目視による狭窄率≧60%,およびバルーンによる経皮的腎動脈形成術(PTRA)後の開存不十分(残存狭窄≧50%,平均圧較差10mmHg/最大収縮期圧較差20mmHg,flow-limiting解離,TIMI flow grade<3のいずれか)。
** 適切な組合わせの降圧薬≧2剤の最大用量投与下で収縮期血圧(SBP)≧140mmHgまたは拡張期血圧(DBP)≧90mmHg。
除外基準:ステント内再狭窄,血清クレアチニン>2.5mg/dL,亜急性心筋梗塞/脳卒中/一過性脳虚血発作,EF≦25%,機能的単腎のARAS,移植腎の腎動脈狭窄。
■患者背景:平均年齢72.1歳,女性62.4%,白人83.7%,糖尿病45.0%,喫煙歴56.9%,薬物治療を要する高コレステロール血症82.2%,冠動脈疾患67.3%,血清クレアチニン1.2mg/dL,服用降圧剤数(≧4剤:38.6%,3剤:32.2%,2剤:28.7%)。
・病変背景:新規病変100%,片側67.6%,両側32.4%,狭窄率(施設報告:81.3%,中央検査機関報告:65.9%),最小血管径1.8mm,参照血管径5.4mm,病変長8.5mm,重度石灰化27.8%,PTRA後の開存不十分(狭窄率≧50%:90.7%,圧較差:25.0%,解離/TIMI flow grade<3:4.7%)。
調査方法 RX Herculink Eliteコバルトクロム腎動脈ステントを植込んだ。
全例に,手技前の4日間aspirin 325mg/日,clopidogrel 75mg/日(もしくは手技の24時間前にローディングドーズとして300mg)を経口投与。手技中はheparinを投与。ステント植込み後,aspirin 325mg/日を12か月以上,clopidogrel 75mg/日を4週間以上投与。
結果 デバイス成功率は96.0%,手技成功率は99.2%,臨床的成功率は98.0%。
[一次エンドポイント]
duplex 超音波法/血管造影で評価した9か月後のbinary再狭窄率は10.5%(22/209例)。
[その他]
SBPはベースライン時(162mmHg)から手技後に有意に低下し(141mmHg),その後も低下を維持した(30日後:145mmHg,36か月後:146mmHg;p<0.0001)。
ベースラインから36か月後までのDBPは有意に低下したが(78→ 75mmHg, p=0.02),腎機能(推算糸球体濾過量;58→ 57mL/分/1.73m²),降圧薬≧3剤服用(71→ 68%),ACE阻害薬/ARB服用(76→ 70%),利尿薬(66→ 57%)の有意な変化は認められなかった。
[合併症]
30日以内の死亡+同側腎摘出術+塞栓症による腎障害の複合エンドポイントは1.5%(死亡1例,塞栓症による腎障害2例)。
全期間中に18例が死亡したが(うち2例は原因不明),いずれも試験手技には関連しなかった。Kaplan-Meier推定による36か月後の死亡回避率は90.1%。
臨床症状による標的病変再血行再建術の非施行率は,12か月後94.7%,36か月後91.8%。腎摘出例は全期間を通して認められず,30日以降の手技関連の塞栓症による腎障害もなかった。
★結論★動脈硬化性腎動脈狭窄症を有するコントロール不良の高血圧患者において,腎動脈へのステント植込みにより,SBPは植込み直後から有意に低下し,その後3年間低下が維持した。
ClinicalTrials gov. No: NCT00490841
文献
  • [main]
  • Chrysant GS et al on behalf of the HERCULES investigators: Proper patient selection yields significant and sustained reduction in systolic blood pressure following renal artery stenting in patients with uncontrolled hypertension: long-term results from the HERCULES trial. J Clin Hypertens (Greenwich). 2014; 16: 497-503. PubMed

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収載年月2014.09