循環器トライアルデータベース

XIMA
Xience or Vision Stents-Management of Angina in the Elderly

目的 80歳以上の高齢者は,薬剤溶出性ステント(DES)の植込みが推奨される冠動脈の複雑病変を有することが多いが,長期にわたる2剤併用抗血小板療法(DAPT)は出血リスクを高める。一方,高齢者に起こりやすいDAPTのコンプライアンス不良は,ステント血栓症のリスクを高める。
80歳以上の狭心症患者において,DESはベアメタルステント(BMS)にくらべ1年後の転帰が良好かを検討する。

一次エンドポイントは,1年後の死亡,心筋梗塞(MI),脳血管疾患,標的血管再血行再建術(TVR),大出血の複合エンドポイント。
コメント XIMAは80歳以上の高齢者を対象に,実地臨床に近い形の最低限の除外基準で,再狭窄リスクの高い複雑病変に対する薬剤溶出性ステント(DES)XIENCE stentとベアメタルステント(BMS)Vision stentの植え込みを比較する多施設無作為化比較試験である。80歳以上の高齢者では複雑病変の比率が高いため再狭窄リスクは増大するが,日常生活における活動性低下から再狭窄が自覚症状を呈するに至るリスクは低減する一方で,出血リスクが高く長期の2剤抗血小板療法(DAPT)による大出血の発症リスクが増大することから,DES使用のメリットが少なくなるという懸念があるというのが本試験の背景である。
本試験の一次エンドポイントは死亡/心筋梗塞(MI)/脳卒中/標的血管再血行再建(TVR)/大出血からなる複合エンドポイントである。試験結果としては,一次エンドポイントの発生率はDES群14.3%,BMS群18.7% で統計学的有意差を認めなかった(p=0.09)。しかしながら個別のエンドポイントの発生率を見ると,DESの使用でTVRとMIは有意に減少し,DAPTの長期化で懸念された大出血の発生率には差がなく,一次エンドポイントの評価から得られるものとはかなり異なるメッセージとなる。さらにDES群において非心臓死の発生率が有意に高く,これが一次エンドポイント発生率の差を希釈する形になっている。非心臓死の発生は理屈の上では使用するステントの種類とは無関係であるが,高齢者では非心臓死の発生率が高く,これがたまたま一方の群に多く発生した場合には一次エンドポイント評価に大きな影響を及ぼす。したがって,本試験の一次エンドポイントに非心臓死を含めることは不適切であると言える。複合エンドポイントの使用は必要症例数の削減を通じて臨床試験の効率化に寄与するが,そのコンポーネントの選定には十分な注意が必要である。理想的には,複合エンドポイントの各々のコンポーネントは当該試験の介入に対して同じ方向の反応を示し,その臨床的意義が同等に近いことが求められる。
また本試験では一次エンドポイントに大出血を加えて,いわゆるnet clinical benefitを評価している。このnet clinical benefitの解釈にも注意が必要で,DESの使用でTVRが著明に減少する一方で大出血は有意に増加したが,一次エンドポイントの発生率は DES群で有意に低かったといった状況は想定可能である。この場合に大出血はTVRよりも臨床的重要性の高いイベントであり,一次エンドポイントの発生率からDES betterと結論すると臨床的に誤ったメッセージとなる。本試験の一次エンドポイントとしては,MIとTVRの複合エンドポイントを有効性の一次エンドポイント,大出血を安全性の一次エンドポイントと設定するのが妥当であったと考える。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(英国とスペインの22施設)。
期間 追跡期間は1年。
登録期間は2009年~’11年。
対象患者 800例。80歳以上;DES(ステント長≧15mmまたは径<3.0mm)が推奨される冠動脈疾患(CAD;非ST上昇型心筋梗塞[MI],不安定狭心症,安定狭心症)患者;再狭窄高リスク病変(慢性完全閉塞,分岐部,左主幹部)。
除外基準:急性ST上昇型心筋梗塞,心原性ショック,血小板減少症,3か月以内の消化管出血,脳内出血既往など。
■患者背景:平均年齢83.5歳,安定狭心症32.0%,トロポニン陰性急性冠症候群(ACS)18.0%;陽性 50.0%,女性(DES群38.9%,BMS群40.9%),糖尿病(25.6%, 24.2%),高血圧(75.1%, 77.6%),高コレステロール血症(57.6%, 52.9%),脳血管疾患・一過性脳虚血発作既往(7.8%, 10.7%),末梢血管疾患(10.3%, 12.5%),クレアチニン>200μmol/L(6.0%, 7.0%),MI既往(29.8%, 21.5%, p=0.007),PCI歴(12.8%, 10.2%),EF<40%(13.5%, 10.1%)。
・手技背景:病変部(左主幹部:7.6%, 8.3%,左前下行枝:60.7%, 63.0%,回旋枝:31.7%, 30.0%,右冠動脈:38.1%, 35.3%),治療枝数(1:62.7%, 60.5%, 2:27.2%, 31.5%),橈骨アプローチ(52.4%, 58.2%),完全血行再建(66.5%, 66.3%),staged PCI(8.3%, 7.3%),ステント長(26.6mm, 24.0mm, p=0.011),ステント数(両群とも2.0),入院日数(両群とも4日)。
治療法 DES群(399例):第二世代everolimus溶出ステント(Xience)を植込み。
BMS群(401例):Visionステントを植込み。
PCI前にaspirin 300mg, clopidogrel 600mgをローディング投与。warfarinの長期投与は禁止せず,GP IIb/IIIa阻害薬の使用は術者に任せたが,いずれも慎重投与を指示。DES群はDAPTを1年間実施。
結果 [手技成績]
割付けられたステント留置はDES群93.9%,BMS群95.0%。
手技成功率は95.4%, 97.7%(p=0.075)。
1年後のDAPT実施率は94.0%, 32.2%。
[一次エンドポイント]
有意な両群間差は認められなかった(DES群14.3% vs BMS群18.7%;p=0.09)。
[その他]
死亡は8.5% vs 7.2%,うち心臓死は3.3% vs 4.7%,非心臓死は5.3% vs 2.5%(p=0.045)であった。非心臓死の主な原因は,癌(35%),感染症(26%),呼吸不全(14%)。
大出血(2.3% vs 1.7%),脳血管疾患(1.5% vs 1.2%)にも有意な両群間差を認めなかったが,MI(4.3% vs 8.7%, p=0.01)とTVR(2.0% vs 7.0%, p=0.001)はBMS群のほうが多かった。
definiteステント血栓症はDES群で2件,probableステント血栓症は両群それぞれ1件発生した。
★結論★80歳以上の患者において,DESおよびBMS植込み1年後の臨床転帰はともに良好であった。DES群は心筋梗塞と標的血管再血行再建術が少なく,大出血の増加もみられなかった。
文献
  • [main]
  • de Belder A et al on behalf of the XIMA investigators: A prospective randomized trial of everolimus eluting stents versus bare-metal stents in octogenarians: the XIMA trial (Xience or Vision Stents for the Management of Angina in the Elderly). J Am Coll Cardiol. 2014 ;63: 1371-5. PubMed

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収載年月2014.07