循環器トライアルデータベース

FinCV
Finnish Cardio Version

目的 塞栓症は短時間の心房細動(AF)後であっても発生する可能性がある。抗凝固薬の必要性は明らかでないものの,発症後48時間以内のAFに対しては慣例的に抗凝固薬を用いずに除細動が行われてきた。しかしこれが疑問視されるようになり,最新のガイドラインでは,脳卒中のリスク因子を保有するAF患者に対し除細動施行時の抗凝固薬の使用を推奨している。ただし,これは専門家の合意に基づくもので,ランダム化比較試験は行われていない。
AFに対する除細動成功例のうち,経口抗凝固薬またはheparinを使用しなかった患者において,血栓塞栓性合併症の発生率とリスク因子を検討する。

一次エンドポイントは,除細動後30日以内の確実な血栓塞栓性イベント。
コメント 発症後間もない(<48時間)AFの除細動は先行する抗凝固療法がなくても塞栓症リスクが低いという経験を基に,現在の各国のガイドラインは作成されている。この研究は,非ランダム化の後ろ向き研究であるが,例数が多く,データ収集も十分になされていて,実臨床に及ぼすインパクトは大である。これまでの経験則,すなわち発症48時間未満のAFの除細動に伴う塞栓症発症率は低いが,塞栓症リスクを合併すると発症率が高くなることを改めて示した。(井上
デザイン 後ろ向きコホート研究,多施設(フィンランドの3施設;大学病院2,中核病院1施設)。
期間 追跡期間は30日。
除細動施行は2003~’10年。
参加者 2,481例での5,116回の除細動。>18歳,AF発症後48時間以内に救急外来で除細動を施行した患者(7,660回,3,143例)のうち,除細動が成功し(7,237回),追跡可能な管轄地域内の居住者で,除細動施行中~施行後に経口抗凝固薬またはheparinを投与しなかったもの。
■患者背景:平均年齢(合併症発症例69.9歳,非発症例60.9歳;p<0.0001),女性(57.9%, 31.8%;p=0.0006),高血圧(50.0%, 45.4%),糖尿病(21.1%, 7.9%;p=0.009),血管疾患(44.7%, 22.2%;p=0.0009),心筋梗塞既往(15.8%, 6.4%;p=0.03),aspirin/clopidogrel(65.8%, 48.1%;p=0.03),心不全(15.8%, 3.5%;p=0.002),CHA2DS2VASCスコア中央値(3, 1;p<0.0001),除細動の回数(1例あたり両群とも中央値1回),電気的除細動(94.7%, 87.7%),AF既往なし(29.0%, 28.8%),症状の持続時間<24時間(76.3%, 83.7%),β遮断薬(89.5%, 74.3%;p=0.04),クラスI抗不整脈薬(21.0%, 23.1%)。
調査方法 対象は各施設の退院記録,緊急入院記録から同定し,除細動成功例は洞調律を回復し,退院した患者とした。
確実な血栓塞栓性イベントは,臨床症状から診断され,かつCT/MRIにより脳梗塞であることが確認された脳卒中,または画像/手術/剖検で確認された全身性塞栓症と定義。
結果 [一次エンドポイント]
30日以内の血栓塞栓性イベントは,38件(0.7%)・38例で,除細動から発生までの時間は中央値2日(平均4.6日)であった。
38件のうち脳卒中は31件,1例が脳卒中と全身性塞栓症を発症した。
[その他のイベント]
TIAは4件(平均2日)。
肺塞栓症は2例,死亡は11例(中央値3日,平均7日)で,うち3例が致死的脳卒中。
大出血の発生はなかった。
[血栓塞栓症の予測因子]
ロジスティック回帰分析による塞栓性イベントの独立した予測因子は,年齢(オッズ比1.05;95%信頼区間1.02~1.08, p<0.001),女性(2.06;1.1~4.0, p=0.03),心不全(2.9;1.1~7.2, p=0.03),糖尿病(2.3;1.1~4.9, p=0.03)。
血栓塞栓症のリスクは,心不全+糖尿病で最大(9.8%),心不全のない60歳未満で最小(0.2%)となった。
★結論★抗凝固薬未使用下で,AF発症から48時間以内に除細動が成功した患者において,30日以内の血栓塞栓性リスクは非常に低かった。心不全,糖尿病,>60歳などの古典的リスクを複数保有する患者では血栓塞栓症発症率は高くなる。
ClinicalTrials gov No: NCT01380574

[主な結果]
  • Airaksinen KE et al: Thromboembolic complications after cardioversion of acute atrial fibrillation: the FinCV (Finnish CardioVersion) study. J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 1187-92. PubMed
    Dagres N et al: Prevention of thromboembolism after cardioversion of recent-onset atrial fibrillation: brief is not always safe. J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 1193-4. PubMed

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収載年月2014.02