循環器トライアルデータベース

SAMMPRIS
Stenting and Aggressive Medical Management for Preventing Recurrent stroke in Intracranial Stenosis

目的 頭蓋内アテローム性動脈硬化症は脳卒中の原因となり,特に重度の動脈狭窄を有する亜急性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者は脳卒中再発のリスクが高い。
発症後30日以内のTIAまたは脳卒中患者において,積極的内科治療への経皮的血管形成術+ステント(PTAS)併用による二次予防効果を積極的内科治療のみと比較したSAMMPRIS試験は,2011年に中間解析で30日後の脳卒中/死亡リスクがPTAS群で積極的内科治療群にくらべ有意に高かったため早期に登録を中止と発表した。本報は最終例の登録から2年間追跡した最終結果。

一次エンドポイントは,30日以内の全脳卒中または全死亡,30日以降の責任動脈領域の虚血性脳卒中,または追跡期間中に施行した責任病変の血行再建術後30日以内の全脳卒中または全死亡。
コメント 日本人は白人より頭蓋内動脈狭窄が多いが,それでも責任血管に高度の狭窄がある脳卒中やTIAの患者はそれほど多くない。脳卒中を発症するほどなら責任血管は狭窄ではなく閉塞してしまうことのほうが多いからである。しかも,頭蓋内動脈狭窄を生じるほどの患者は狭窄血管領域に脳卒中を再発するとは限らず,その他の血管領域の脳卒中を再発する可能性も高い。血管内治療は血行動態性脳卒中を生じる患者にしか有効性が期待できず,当然ながら狭窄部位以外の脳卒中は予防できない。また,頭蓋内動脈狭窄の治療を狙ったステント治療は頸動脈ステント治療より合併症も多く,遠位部への塞栓症も少なからず発症すると考えられる。治療の初期に内科的治療群と差がついてしまっているのは,その可能性を示唆している。その後もステント治療群が内科的治療群に追いつけないのは,ステント治療は前述したように局所的治療であり,内科的治療のように全血管領域の脳卒中予防効果が期待できないことを示唆している。SAMMPRISの結果は,適切な内科的治療を行えば症候性頭蓋内動脈患者の多くは脳卒中予防が可能であり,頭蓋内動脈ステントの適応は慎重に症例を選択する必要があることを示唆している。我々の行った抗血小板薬の2剤(アスピリン+シロスタゾール)併用療法と単剤(アスピリン単独)療法の比較試験(CATHARSIS)もSAMMPRISの結果を支持する成績であった。(内山
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoint),多施設(米国の50施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は32.4か月(中央値)。
ランダム化期間は2008年11月25日~2011年3月31日。
対象患者 451例。30~80歳,脳内主幹動脈の70~99%狭窄によるTIA/脳卒中発症から30日以内の後遺障害のない患者。
除外基準:標的狭窄から近位/遠位の頭蓋外/頭蓋内タンデム狭窄(70~99%),近位あるいは標的病変の管腔内血栓,直前24時間の進行性の神経兆候など。
■患者背景:年齢(PTAS群61.0歳,積極的内科治療群59.5歳),男性(57%, 64%),白人(両群とも71%),高血圧既往(両群とも89%),脂質異常症既往(87%, 89%),非喫煙(40%, 34%),糖尿病(47%, 45%),収縮期血圧(SBP:143.9mmHg, 146.8mmHg),LDL-C(96.3mg/dL, 97.8mg/dL),HDL-C(37.9mg/dL, 38.7mg/dL),糖尿病例のHbA1c(7.8%, 8.2%),BMI(30.3kg/m², 30.7kg/m²),抗血栓治療(64%, 62%),発症からランダム化までの時間(両群とも7日[中央値]),症候性責任血管(中大脳動脈:41%, 46%;脳底動脈:両群とも22%;内頸動脈:20%, 22%),責任血管の狭窄率(80%, 81%)。
治療法 PTAS群(224例):狭窄動脈へのステント植込み(先の5日間 clopidogrel 75mg/日を投与していたものはPTASの6~24時間前にclopidogrel 600mgローディング,手技中はheparinを静注)+積極的内科治療。
積極的内科治療群(227例):aspirin 325mg/日(追跡期間中)+clopidogrel 75mg/日(90日間)+降圧治療(目標SBP<140mmHg[糖尿病は<130mmHg])+脂質低下治療(目標LDL-C<70mg/dL)+生活習慣介入(糖尿病,non-HDL-C,喫煙,体重,運動の評価とカウンセリング)。
試験薬としてaspirin,clopidogrel,主なクラスの降圧薬1剤,rosuvastatinを提供。
結果 脱落はPTAS群10例(5%),積極的内科治療群24例(11%)(p=0.0193)。
[リスク因子の変化]
SBP(PTAS群:ベースライン143.9→ 1年後129.5→ 3年後126.7mmHg,積極的内科治療群:146.8→ 132.1→ 128.7mmHg),LDL-C(96.3→ 69.2→ 67.3mg/dL, 97.8→ 67.7→ 67.3mg/dL)は両群で同等に低下した。他のリスク因子の変化にも有意差はみられなかった。
[一次エンドポイント]
発症率はPTAS群52例(23%),積極的内科治療群34例(15%)で,累積確率は積極的内科治療群のほうが低かった(log-rank検定p=0.0252)。
30日以降でみると,発症率はそれぞれ19/191例(10%),21/210例(10%)で,両群間の絶対差は1年後7.1%(95%信頼区間0.2~13.8%, p=0.0428),2年後6.5%(-0.5~13.5%, p=0.07),3年後9.0%(1.5~16.5%, p=0.0193)であった。
[その他]
PTAS群は積極的内科治療群よりも脳卒中(59例[26%] vs 42例[19%];log-rank検定p=0.0468),大出血(29例[13%] vs 10例[4%];p=0.0009)が有意に多かった。
死亡(両群とも13例[6%]),障害(90日後のmodified Rankinスコア≧4,Barthel index ≦80,NIHSSスコア≧7)を伴う脳卒中または致死的脳卒中(21例[9%]vs 18例[8%])には差を認めなかった。
★考察★頭蓋内動脈の狭窄によるTIA/脳卒中発症から30日以内の患者において,30日後の脳卒中または死亡の発生率は積極的内科治療群がPTAS+積極的内科治療群よりも有意に低く,この結果はその後2年以上持続した。
ClinicalTrials.gov No:NCT00576693
文献
  • [main]
  • Derdeyn CP, et al for the stenting and aggressive medical Mmanagement for preventing recurrent stroke in intracranial stenosis trial investigators. Aggressive medical treatment with or without stenting in high-risk patients with intracranial artery stenosis (SAMMPRIS): the final results of a randomised trial. Lancet. 2014; 383: 333-41. PubMed
  • 30日後の結果-PTAS群で脳卒中,死亡が増加。
    451例登録時点での中間解析結果(平均追跡期間11.9か月):30日後の一次エンドポイント発生例はPTAS群33例,積極的内科治療群13例で,30日後の発生確率はPTAS群(14.7%;非致死的脳卒中12.5%,致死的脳卒中2.2%)が積極的内科治療群(5.8%;5.3%, 0.4%)よりも有意に高かった(p=0.002)。このうち,脳卒中関連死はPTAS群の5例(2.2%),非脳卒中関連死は積極的内科治療群の1例(0.4%)で,症候性脳出血は30.3% vs 0%(p=0.04)であった。30日以降の責任病変領域の虚血性脳卒中発生は両群ともに13例。1年後の一次エンドポイント発生確率はPTAS群が有意に高かった(20.0% vs 12.2 %;log-rank検定p=0.009)。予定症例数は各群382例だったが,この結果をうけてそれ以上の登録中止が勧告された:N Engl J Med. 2011; 365: 993-1003. PubMed

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収載年月2014.03