循環器トライアルデータベース

TASTE
Thrombus Aspiration in ST-Elevation Myocardial Infarction in Scandinavia Trial

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対するPCIの補助治療として血栓吸引を行うと血流とSTセグメントの上昇が改善する可能性があるが,一貫した結果は得られていない。また,血栓吸引のハードエンドポイントに対する有効性も明らかでなく,単施設のSTEMI患者を対象としたTAPAS試験では,血栓吸引により二次エンドポイントの死亡が抑制される可能性が示された一方,メタ解析では脳卒中リスクの増加が指摘されている。
STEMI患者において,PCI前の血栓吸引による死亡抑制効果を検討する。

一次エンドポイントは30日後の全死亡。
コメント N Engl J Med. 2013; 369: 1587-97.へのコメント
TASTE試験はスウェーデン29施設,アイスランド1施設,デンマーク1施設の31施設において施行された無作為割付け,オープンラベル,多施設試験で,STEMI患者におけるprimary PCI施行前の血栓吸引療法が30日後の死亡率を改善するかどうかを検証した試験である。本試験における運営上の特徴はregistry-based randomized trialという点にある。既存のSwedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry(SCAAR)に本試験の無作為割付けシステムを組込み,本試験に特異的な情報入力を新たに行うことなく無作為割付け試験を施行しようという仕組みである。SCAARはSWEDEHEART Registryに含まれており,またNational Discharge Registry, National Population Registryに連結されて,患者背景情報,手技情報,追跡情報(死亡,心筋梗塞,ステント血栓症など)の取得が可能となる。特に生存情報については行政のデータベースを用いるため,ほぼ全例で正確な追跡情報の取得が可能となっている。一方で心筋梗塞,ステント血栓症などについてはイベント固定が行われていないため評価バイアスが懸念される。
Primary PCI施行前の血栓吸引療法を評価する最大規模の試験であるTASTE試験の30日後の死亡率は血栓吸引療法併用群とPrimary PCI単独群との間で有意差を認めなかった。一方で,心筋梗塞,ステント血栓症については有意差水準には至らないものの血栓吸引療法併用群で低い傾向があった。従来の試験のメタ解析で懸念されていた脳卒中の発生頻度には差がなかった。今後はTAPAS試験で報告された1年生存率の改善がTASTE試験の1年追跡で再現できるかが注目される。
TASTE試験の結果を受けて実地臨床でPrimary PCI施行前に血栓吸引療法を施行すべきかどうかであるが,比較的安価なデバイスで安全な手技であり,血栓吸引療法施行後PCI/Stentingの標的も明確になることから,Primary PCI施行前の血栓吸引療法施行は必須ではないが,当面,施行は妥当であると考える。(木村
デザイン 無作為割付け(registry-based randomized*),オープン,多施設(31施設:スウェーデン29,デンマーク1,アイスランド1施設),intention-to-treat解析。
* スウェーデンとアイスランドの専門施設で冠動脈造影あるいはPCIを施行した連続症例の登録データベースSCAAR(Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry)を利用して,ランダム化やデータ管理を行う登録研究ベースのランダム化試験。今回はこのデータベースにデンマークの1施設のデータも加えた。
期間 追跡期間は30日。
対象患者 7,244例。18歳以上,冠動脈血管造影後にPCI施行予定のSTEMI患者(入院前に心筋虚血を示唆する胸痛が30分以上持続,発症後24時間以内に入院,ECG上の新規ST上昇または左脚ブロック所見)。
除外基準:緊急CABGを要する症例など。
■患者背景:年齢(血栓吸引+PCI群66.5歳,PCI単独群65.9歳),男性(75.1%, 74.6%),BMI(27.2kg/m², 27.1kg/m²),糖尿病(12.4%, 12.5%),非喫煙(35.9%, 31.8%),現喫煙(29.9%, 32.4%),高脂血症(20.8%, 21.0%),高血圧(42.7%, 42.1%),心筋梗塞(MI)既往(11.1%, 12.1%),PCI前の薬物治療(warfarin:1.7%, 1.4%,heparin:40.9%, 40.3%),発症からPCIまでの時間(185分,182分[中央値])。
治療法 血栓吸引+PCI群(3,621例):PCI前にカテーテルによる血栓吸引を実施。
PCI単独群(3,623例)。
抗血小板薬または抗凝固薬の使用は担当医に一任。順行性血流回復後に硝酸薬の冠動脈内投与を推奨。ステントの使用を奨励したが,ステントの種類は問わず,後拡張も可とした。P2Y12阻害薬の使用は担当医に一任し,aspirinは無期限投与を推奨。
結果 追跡不能例はなかった。
血栓吸引の施行は,血栓吸引+PCI群93.9%,PCI単独群4.9%。
[一次エンドポイント]
30日後の全死亡に有意な群間差は認められなかった(血栓吸引+PCI群103例[2.8%] vs PCI単独群110例[3.0%]:ハザード比0.94;95%信頼区間0.72~1.22, p=0.63)。
[二次エンドポイント]
30日後のMI再発による再入院(0.5% vs 0.9%, p=0.09),全死亡+MI再発(3.3% vs 3.9%, p=0.23),ステント血栓症(0.2% vs 0.5%, p=0.06)に有意な群間差はみられなかった。
スウェーデンとアイスランドの症例のみ(3,498例,3,499例)で解析した標的血管再血行再建術(1.8% vs 2.2%, p=0.27),標的病変再血行再建術(1.2% vs 1.6%, p=0.16)にも差はみられなかった。
入院中の脳卒中/神経学的合併症(両群とも0.5%),穿孔/タンポナーデ(両群とも0.4%),心不全(6.8% vs 6.5%),左室機能(EF≧50%:43.4%, 44.5%;40~49%:23.6%, 22.7%),入院日数(4~7日:73.5%, 73.7%)も両群で同等であった。
[サブグループ解析]
TIMI flow grade,TIMI thrombus grade,喫煙の有無などによるサブグループ解析でも,一次エンドポイントの結果は変わらなかった。
★結論★STEMI患者において,PCI前のルーチンの血栓吸引による30日後の死亡抑制は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01093404
文献
  • [main]
  • Fröbert O, et al: Thrombus aspiration during ST-segment elevation myocardial infarction. N Engl J Med. 2013; 369: 1587-97. PubMed
    Byrne RA and Kastrati A: Unmet aspirations--where to now for catheter thrombectomy? N Engl J Med. 2013; 369: 1649-50. PubMed
  • [substudy]
  • PCI施行予定のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,ダイレクトステンティング(DS)はPCI単独群にくらべ血栓吸引療法併用PCI群でより多く行われていた。また,DSの臨床転帰と心筋再灌流に従来ステント留置との有意差は示されず,血栓吸引との交互作用も認められなかった。
    本研究は,ルーチンの血栓吸引療法を併用したPCIとPCI単独を比較した大規模ランダム化比較試験(RCT)の,TAPAS,TASTE,TOTALの患者データを統合し,STEMI患者におけるDSの臨床転帰および心筋再灌流に対する効果,またDSと血栓吸引との交互作用について検討した観察研究。
    DSは,PCI単独群にくらべ血栓吸引療法併用PCI群で約2倍多く行われていた(41% vs. 22%, P <0.001)。DSを受けた患者群では術前TIMI 0/1 flowの割合は低く(70% vs. 77%, P <0.001),従来のステント留置を受けた患者群にくらべ造影剤の使用量が少なく(162 mL vs. 172 mL, P <0.001),かつ透視時間も短かった(11.1分 vs. 13.3分,P <0.001)。 プロペンシティマッチングによるその後の解析では,有効性の主要評価項目である30日時点の心血管死は,DS群1.7% vs. 従来ステント群1.9%で有意差は示されず[ハザード比(HR)0.88; 95%信頼区間 0.55~1.41, P =0.60],DSと血栓吸引療法との交互作用も認められなかったことから(P interaction=0.96),両者による相乗効果はないことが示唆された。また,安全性の主要評価項目である30日時点の脳卒中および一過性脳虚血発作* についても差は示されず[0.6% vs. 0.4%; オッズ比(OR)1.02; 0.14~7.54, P =0.99],DSと血栓吸引療法との交互作用も認められなかった(P interaction=0.81)。さらに,PCI後の心筋再灌流について,DSはSTセグメント回復(<70%)に関連せず(30% vs. 35%; OR 0.84, 0.70~1.01, P =0.06),血栓吸引療法との交互作用は示されなかった(P interaction =0.47)。DSと冠動脈造影による心筋再灌流障害との独立した関連性は示されず[心筋濃染グレード(myocardial blush grade)0 or 1: 4.7% vs. 5.7%, OR 0.99; 0.66~1.47, P =0.94],血栓吸引療法との交互作用も認められなかった(P interaction=0.26)。
    * TASTEおよびTOTALのデータからのみ抽出
    Mahmoud KD, et al: Clinical impact of direct stenting and interaction with thrombus aspiration in patients with ST-segment elevation myocardial infarction undergoing percutaneous coronary intervention: Thrombectomy Trialists Collaboration. Eur Heart J. 2018; 39: 2472-9. PubMed
  • PCI前のルーチンの血栓吸引による1年後の転帰-PCI単独群にくらべた全死亡などの有意な低下はみられず。
    事前に予定されていた二次エンドポイント(1年後の全死亡,心筋梗塞[MI]による再入院,ステント血栓症,標的血管[TVR]・病変[TLR]再血行再建術)およびpost-hocに規定した全死亡+MIによる入院+ステント血栓症の結果(全例・1年追跡):全死亡は血栓吸引+PCI群191例(5.3%)vs PCI単独群202例(5.6%):ハザード比0.94;95%信頼区間0.78~1.15(p=0.57)。31日~1年後の結果も同様であった。MIによる再入院は両群とも2.7%(0.97;0.73~1.28),ステント血栓症(0.7% vs 0.9%:0.84;0.50~1.40), TVR(4.4% vs 4.9%:0.90;0.72~1.10), TLR(3.2% vs 3.5%:0.91;0.71~1.17),全死亡+MIによる入院+ステント血栓症(8.0% vs 8.5%:0.94;0.80~1.11)と,いずれも両群間に有意差はなかった。TIMI flow grade,血栓 grade,近位病変などのサブグループの結果も一貫していた。
    Lagerqvist B, et al: Outcomes 1 year after thrombus aspiration for myocardial infarction. N Engl J Med. 2014; 371: 1111-20. PubMed

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収載年月2014.01
更新年月2018.09