循環器トライアルデータベース

WOEST
What is the Optimal Antiplatelet and Anticoagulant Therapy in Patients with Oral Anticoagulation and Coronary Stenting

目的 経口抗凝固薬を服用中の患者にステント植込みによるPCIが必要となった場合,ステント血栓症を予防するためaspirinとclopidogrelによる抗血小板療法が必要となるが,それら3剤併用(抗凝固薬+抗血小板薬2剤)による抗血栓療法は出血リスクが増大する。
経口抗凝固薬を服用しているPCI施行患者において,clopidogrelのみを追加した場合に(2剤併用),clopidogrel+aspirinの追加(3剤併用)にくらべ,血栓性イベントが増加することなく出血リスクが低下するかを検証する。

一次エンドポイントはPCI後1年間の出血イベント。
コメント 冠動脈ステント留置後2剤抗血小板薬治療を受けている症例が,心房細動など抗凝固薬が必要な状態になったらどうするか?は,臨床医が最も知りたい問いの一つであるが,本試験はその問いの答えを示すにはあまりにも欠点が多い。対象例は573例で少ない。急性期と慢性期が混在している。オープンラベルの試験である。
冠動脈疾患に対して死亡率を減らすことが示されているaspirinを除くにはエビデンスとしては弱すぎる。日本でもclopidogrelの特許期間が切れた後には多数の選択肢の一つとして抗凝固薬とclopidogrel,あるいはcilostazolがよいとされるかもしれないし,抗凝固薬のみでよいかもしれない。結論を急ぐ必要はない。(後藤
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(ベルギーとオランダの15施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は365日(中央値)。
登録期間は2008年11月~’11年11月。
対象患者 573例。18~80歳,長期経口抗凝固薬治療が適応,重度の冠動脈病変(血管造影上の狭窄率≧75%,または冠血流予備量比<0.80)を有するPCI適応患者。
除外基準:頭蓋内出血の既往,心原性ショック,過去6か月間の消化性潰瘍,血小板減少症など。
■患者背景:平均年齢(2剤併用群70.3歳,3剤併用群69.5歳),女性(23%, 18%),糖尿病(24%, 25%),高血圧(69%, 68%),高コレステロール血症(68%, 72%),CAD家族歴(42%, 43%),既往:心筋梗塞(MI: 34%, 35%);心不全(両群とも25%);PCI(31%, 36%);CABG(20%, 26%),CHADS2スコア(2:32%, 26%, 3:32%, 36%),経口抗凝固薬の適応症(心房細動・粗動:両群とも69%,機械弁:10%, 11%),EF(46%, 47%)。
・入院時処方:β遮断薬(76%, 81%),ACE阻害薬/ARB(69%, 66%),利尿薬(46%, 50%),スタチン(70%, 80%),aspirin(27%, 42%),clopidogrel(44%, 54%),プロトンポンプ阻害薬(34%, 39%)。
・手技背景:PCI施行日の平均INR(1.86, 1.94),PCI施行血管(左前下行枝:40%, 42%,右冠動脈:33%, 25%,左回旋枝:21%, 27%),薬剤溶出性ステント(DES:65%, 64%),周術期治療(経口抗凝固薬:46%, 40%,heparinボーラス:91%, 90%,低分子量heparinによるブリッジング:両群とも24%)。
治療法 PCI前~4時間後までに下記2群にランダム化。
2剤併用群(279例*):経口抗凝固薬+clopidogrel 75mg/日。
3剤併用群(284例*):経口抗凝固薬+clopidogrel 75mg/日+aspirin 80~100mg/日(試験前aspirin未投与例には320mgローディング投与)。
試験治療はランダム化後直ちに開始し,安定CADに対するベアメタルステント植込み例では1か月~1年間実施,急性冠症候群またはDES使用例ではclopidogrelを1年以上投与。
全例に,PCI前の5日以上clopidogrel 75mg/日を前投与,24時間前までに300mg(または4時間前までに600mg)をローディング投与。PCI中は可能な限り経口抗凝固薬の投与を継続(目標INR 2.0)したが,医師の判断で低分子量heparinへの切り替えを可とした(PCI後に経口抗凝固薬の投与を再開)。
* PCI未施行/追跡不能/選択基準を満たさない症例(各群5例)を除外した解析対象例。
結果 [一次エンドポイント]
2剤併用群は3剤併用群にくらべ1年間の出血イベントのリスクが有意に低かった(54例[44.4%] vs 126例[19.4%]:ハザード比0.36;95%信頼区間0.26~0.50, p<0.0001)。
複数回の出血イベントを認めた患者は,2剤併用群の2.2%に対し3剤併用群12.0%,1回以上の輸血を要した患者はそれぞれ3.9%, 9.5%であった(Kaplan-Meier推定によるオッズ比0.39;0.17~0.84, p=0.011)。
[その他]
2剤併用群は全死亡のリスクも低かった(2.5% vs 6.3%:0.39;0.16~0.93, p=0.027)。
MI(3.2% vs 4.6%),脳卒中(1.1% vs 2.8%),標的血管再血行再建術(7.2% vs 6.7%),ステント血栓症(1.4% vs 3.2%)の発生率には有意な両群間差は認められなかった。
★考察★経口抗凝固薬服用中のPCI施行患者において,clopidogrelのみの追加はclopidogrel+aspirinの2剤追加にくらべて1年後の出血イベントを有意に抑制。血栓性イベントの増加は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT00769938
文献
  • [main]
  • Dewilde WJ et al for the WOEST study investigators: Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial. Lancet. 2013; 381: 1107-15. PubMed
    Dual or single antiplatelet therapy with anticoagulation? Lancet. 2013; 381: 1080-1. PubMed

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収載年月2013.07