循環器トライアルデータベース

CLARIFY
Prospective Observational Longitudinal Registry of Patients with Stable Coronary Artery Disease

目的 冠動脈疾患(CAD)の症状と管理は男女で異なるが,安定CADにおいてそれらの差が臨床転帰の差につながるかどうかは明らかでない。
CLARIFYは治療を受けている安定CAD例(女性は約1/4)の登録研究である。本報は患者背景と1年後の心血管転帰を男女で比較した結果。

一次エンドポイントは,1年後の心血管死,心筋梗塞(MI),脳卒中の複合エンドポイント。
コメント Eur Heart J. 2012; 33: 2831-2840. へのコメント
冠動脈疾患患者30,977例のレジストリー。男性23,975例,女性7,002例,Japanese/Koreanも1,024例(3.3%)が登録されている。ベースラインでは,年齢,糖尿病,高血圧治療,運動を全く行わないなどに男女差があったが,心血管死,非致死性心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントで1年後のアウトカムには男女差はなかった。全疾患死にも差がなかった。
ベースラインの危険因子のプロフィールが男女間で異なるにも関わらず,アウトカムには大きな違いがないことを示した。冠動脈疾患の発症は男女差があり,男性で発症率が高い。また,女性の冠動脈疾患の発症は男性より高齢で,危険因子も多いことが知られている。こうした違いが予後の違いにあらわれるかは,十分には明らかではない。予後についての男女差の詳細がさらに明らかにされるとデバイス治療のストラテジーにも影響を与えるものと考えられる。(中村中野永井
デザイン 観察研究,多施設(アフリカ,アジア,オーストラリア,欧州,中東,北・中・南米の45か国)。
期間 追跡期間は5年の予定,本報は1年の結果。
登録期間は2009年11月26日~’10年6月30日。
対象 30,977例(男性23,975例[77.4%],女性7,002例[22.6%])。標準治療を受けている安定CAD患者(MI発症後3か月以上,血管造影上の冠動脈狭窄>50%,負荷ECG上の心筋虚血を認める胸痛,またはCABG/PCI施行後3か月以上)。
除外基準:過去3か月間の心血管疾患(血行再建術を含む)による入院,血行再建術施行予定など。
■患者背景:白人66.0%,中国人8.5%,日本/韓国人3.3%。
調査方法
結果 [患者背景]
女性は男性よりも高齢で(女性66.5歳,男性63.4歳)*,糖尿病(32.7%, 28.0%)*,高血圧治療者(78.5%, 68.9%)*,運動を全く行わない人(22.6%, 13.9%)*が多く,収縮期血圧(133.3mmHg, 130.4mmHg)*,EF(58.0%, 55.6%)*がわずかに高く,症候性狭心症が多く(28.6%, 20.9%)*,男性よりも重度だった(CCS分類II度:54.5%, 52.7%,III度:18.8%, 16.7%,IV度:1.3%, 1.0%;p=0.0018)。また心不全症状も重度であった(NYHA心機能分類II度:14.9%, 12.2%,III度:3.1%, 2.3%)*。BMIは男女とも27.3kg/m²。
一方,女性は喫煙者(7.2%, 14.1%)*,MI既往(51.1%, 62.1%)*,PCI施行歴(54.8%, 59.5%)*,CABG施行歴(17.5%, 25.1%)*が少なく,冠動脈血管造影(79.6%, 86.5%)*と非侵襲的心筋虚血検査(58.1%, 62.6%)*の実施率も低かった。血管造影上の多枝疾患(47.3%, 57.3%),狭窄率>50%も女性のほうが少なかった。(*p<0.0001)
CAD予防薬の服用率は全体的に高かったが(脂質低下薬92.2%,aspirin 87.7%,ACE阻害薬/ARB 76.0%,β遮断薬75.2%),女性はわずかに脂質低下薬(90.1%, 92.9%),aspirin(87.0%, 87.9%),チエノピリジン系(25.3%, 26.8%)の服用率が低く,利尿薬の服用率が高かった(37.7%, 26.9%)。
[一次エンドポイント]
1年後のCAD発症は1,794例,心血管死,非致死的MI,非致死的脳卒中は529例。
1年後の複合エンドポイントに性差はみられなかった(調整後の発生率:女性122例[1.8%] vs男性407例[1.7%];オッズ比0.93, 95%信頼区間0.75~1.15;p=0.50)。
[その他]
血行再建術(PCI/CABG)の施行率は女性のほうが低く(2.2% vs 2.6%;0.77, 0.64~0.93;p=0.007),これは西・東欧の患者による影響が大きかったが,その他のイベントには男女の差を認めなかった(全死亡:1.6% vs 1.5%;0.91, 0.72~1.13;致死的または非致死的MI:0.9% vs 1.0%;0.81, 0.60~1.08;心血管死/非致死的MI:1.4% vs 1.4%;0.89, 0.70~1.12)。
★結論★安定CAD患者の背景には男女間で大きな差があったが,1年後の転帰に差はみられなかった。血行再建術の施行は女性のほうが少なかった。
文献
  • [main]
  • Steg PG ,et al on behalf of the CLARIFY Registry investigators: Women and men with stable coronary artery disease have similar clinical outcomes: insights from the international prospective CLARIFY registry. Eur Heart J. 2012; 33: 2831-2840. PubMed
  • [substudy]
  • β遮断薬は,MI発症≦1年の安定CAD患者の全死亡を抑制。Ca拮抗薬は,MI既往に関係なく死亡率低下との関連は示さず。
    本報は5年後の結果。安定CAD患者におけるβ遮断薬およびCa拮抗薬と死亡との関連を検討。
    対象は,2009年11月~2010年6月までに登録された安定CAD患者(β遮断薬22,006例,Ca拮抗薬22,004例)。
    β遮断薬の検討
    多変量解析の結果,安定CAD患者のベースラインのβ遮断薬使用と死亡に関連は示されなかった。
    ベースラインのβ遮断薬使用17,135例(77.9%)vs. 非使用4,871例。
    [一次エンドポイント:全死亡]
    β遮断薬使用 1,345例(7.8%)vs. 非使用407例(8.4%)。ハザード比(HR) 0.94, 95% CI 0.84~1.06; P =0.30。
    [二次エンドポイント]
    ・心血管死:HR 0.91, 95%CI 0.79~1.05
    ・心血管死および非致死性MIの複合:HR 1.03, 95%CI 0.91~1.16。
    [MI発症後の時間経過との関連]
    MI発症後≦1年の患者群において,β遮断薬は全死亡リスクを低下。HR 0.68, 95%CI 0.50~0.91; P =0.01。心血管死(HR 0.52),心血管死および非致死性MIの複合(HR 0.69)も同様の結果。
    Ca拮抗薬の検討
    多変量解析の結果,PCI施行歴または狭心症の存在にかかわらず,ベースラインのCa拮抗薬使用と死亡に関連は示されなかった。
    [MI発症後の時間経過との関連]
    MI発症後≦1年の患者群において,Ca拮抗薬使用と死亡に関連は示されなかった:Eur Heart J. 2019; 40: 1399-1407. PubMed

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収載年月2013.04
更新年月2019.06