循環器トライアルデータベース

FAME 2
Fractional Flow Reserve versus Angiography for Multivessel Evaluation 2

目的 PCI施行予定の安定冠動脈疾患(CAD)患者において,冠動脈造影時に冠血流予備量比(Fractional Flow Reserve:FFR)を測定し,生理学的な虚血を有する症例のみにPCIと至適薬物治療を行った場合,至適薬物治療のみにくらべ主要有害心イベント抑制に優れるかを検討する(all-comer試験)。

一次エンドポイントは,2年後の全死亡,非致死的心筋梗塞(MI),予定外の緊急再血行再建術の複合エンドポイント。

■2年後の結果(N Engl J Med. 2014; 371: 1208-17.)
■7か月後の結果(N Engl J Med. 2012; 367: 991-1001.)
コメント N Engl J Med. 2014; 371: 1208-17.へのコメント
効果安全評価委員会(DSMB)からの中止勧告後も追跡を続け,予定の2年間を終了して発表されたFAME 2 “expansion”の結果が開示された。その客観性に多くの批判が寄せられ,また中止勧告の主要因ともなった「予定外の緊急(再)血行再建術」の分析に大きく紙面が割かれているが,最大のインパクトは8日以降のlandmark解析によってPCIの予後(死亡+MI)改善効果が示されたことである。全例でDESが使用されたためか,懸念された再狭窄の影響はなかった。
これまで,安定冠動脈疾患に対するPCIは,DESを用いてもなお予後改善効果が示されて来なかった。エンドポイント定義の問題もあったが(Circulation. 2013;127;769-81. メタ解析),FAME 2の結果から,対象症例選択の課題が明確となった。冠動脈造影所見が虚血の“印籠”となり得ない事は数多くの臨床研究によって明らかにされている。他方,半数以上の症例で虚血の証明なしにPCIが行われているという指摘もある。医療経済的な問題もあり本邦では施行医の判断に依存しているが,FFRのハードルが下がり,より適正なPCIが行える時代の到来を願うばかりである。(中野中村永井

N Engl J Med. 2012; 367: 991-1001.へのコメント
安定冠動脈疾患に対するPCIと薬物療法の比較試験はバルーン血管形成術(POBA)の時代から数多く行われてきた。メタ解析も含め,死亡・心筋梗塞などの重大な心血管イベントでは差が出ず,狭心症状の改善・QOL・(再)血行再建術においてPCIのアドバンテージが示されることが多かった。
FAME 2はそのスタイルをup to dateにアレンジしたPCIと薬物療法とのランダム化比較試験である。すなわち,(1) 最適と考えられる薬物療法下に,(2) 最強とされる第二世代DESを用いて,(3) 冠血流予備比(FFR)により「虚血あり」と層別化された病変(症例)のみを対象とすることで,PCIの科学的根拠を明確化した。FFR≦0.80はDESを用いて機能的(完全)血行再建の正当性が証明されたFAME試験と同じカットオフ値である。BMS時代に大きなインパクトを与えたCOURAGE試験と共通する点も多いが,COURAGEでは虚血の証明が不十分で,症例の組み入れ基準や低い手技成功率などに批判が相次いだ。一方FAME 2はall-comer試験であり,FFRにて虚血の証明を一元化することで試験のクオリティーが確保されている。
結果としては,「予定外の緊急(再)血行再建術」というバイアスのかかりやすいソフトエンドポントを加えた一次エンドポイントに大きな有意差が出たが,総死亡・非致死性心筋梗塞には差がなく,FAME試験ほどのインパクトは得られなかった。
当初1800例で2年間の追跡を予定していたにもかかわらず,中間解析の結果を受けた効果安全性評価委員会(DSMB)からの勧告により中止されたことで,症例数・追跡期間とも不十分だったことも影響したようである。また,7ヵ月と短い観察期間がステント再狭窄を十分に反映していないという懸念,両群とも死亡・心筋梗塞が少なく,術前の罹患枝数やCCS分類が低いため比較的低リスクの症例を対象としているという指摘もある。
FAME 2試験によってFFRの重要性は再認識されたが,実臨床において全例にFFRを行うことは困難である。と言って,再び同じデザインの試験を行うことは倫理的に許容されない。試験の早期中止によってFFRの真価や,PCIと予後との関連を探る絶好の機会が失われたのは非常に残念である。せめてもう少し長期の追跡結果を開示していただきたい。(中野中村永井
デザイン 無作為割り付け,多施設(欧州と北米の28施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間はPCI群213日,薬物治療群214日,登録コホート206日。
登録期間は2010年5月15日~2012年1月15日。
対象患者 1,220例。薬剤溶出性ステント(DES)によるPCIが予定されている安定1~3枝CAD患者。
■患者背景:年齢(PCI群63.52歳,薬物治療群63.86歳,登録コホート63.58歳),男性(79.6%, 76.6%, 68.1%;p=0.005),CAD家族歴(48.3%, 46.9%, 45.8%),高血圧(77.6%, 77.8%, 81.9%),高コレステロール血症(73.8%, 78.9%, 71.1%),糖尿病(27.5%, 26.5%, 25.3%),末梢血管疾患(9.6%, 10.7%, 4.8%;p=0.03),EF<50%(19.6%, 13.7%, 18.0%)。
狭心症:無症候性(11.9%, 10.5%, 10.2%);CCS class I(18.3%, 22.3%, 25.3%);class II(45.6%, 44.8%, 44.6%)。
冠動脈造影所見:病変数/患者(1.87, 1.73, 1.32;p<0.001),有意な病変≧1の血管数(1:56.2%, 59.2%, 81.9%;2:34.9%, 33.1%, 15.7%;p<0.001),左前下行枝近位部~中央部の≧1病変(65.1%, 62.6%, 44.6%;p<0.001)。
FFR所見:病変数/患者(1.52, 1.42, 0.03;p<0.001),有意な病変≧1の血管数(1:74.0%, 77.8%, 3.0%;2:22.8%, 19.3%, 0%),左前下行枝近位部~中央部に≧1病変(62.4%, 59.6%, 0.6%;p<0.001)。
* p値はPCI群+薬物治療群 vs 登録コホート。
治療法 FFR測定後,FFR≦0.80の有意な狭窄病変を有していた888例をランダム化。
PCI群(447例・890病変):PCI(第二世代DES)+至適薬物治療*
薬物治療群(441例・815病変):至適薬物治療*のみ。
* aspirin(80~325mg/日),metoprolol(50~200mg/日,もしくは他のβ1受容体選択性β遮断薬±Ca拮抗薬または長時間作用型硝酸薬),lisinopril(≧5mg/日,または他のACE阻害薬,不忍容の場合はARB),atorvastatin(20~80mg/日,または他のスタチン±ezetimibe;目標LDL-C<70mg/dL)を投与。
PCI群では投与されていなかった場合には,手技直前にclopidogrel(600mgローディング)+aspirinを投与。手技後は上記の至適薬物治療に加え,clopidogrel 75mg/日を12か月以上投与。
上記2群のほか,すべての狭窄がFFR>0.80だった症例(332例)の半数(166例)を「登録コホート」として観察(至適薬物治療を実施)。
結果 ■2年後の結果(N Engl J Med. 2014; 371: 1208-17.)
2年後の薬物治療群のPCI群へのクロスオーバーは179例(40.6%),PCI群の36例(8.1%)が再血行再建術を施行。
一方,FFR>0.80であった登録コホート(166例)のPCI群へのクロスオーバーは12.0%。
[一次エンドポイント]
PCI群で薬物治療群にくらべ有意に低下した(8.1% vs 19.5%:ハザード比0.39;95%信頼区間0.26~0.57, p<0.001)。これは同群で緊急血行再建術が少なかったためで(4.0% vs 16.3%:0.23;0.14~0.38, p<0.001),MIまたはECG上の虚血変化によるものは同群のほうが少なかった(3.4% vs 7.0%, p=0.01)。死亡,MIには両群間差はなかった。
登録コホート(発生率9%)と比較すると,PCI群のリスクは同等だったが(0.90;0.49~1.64, p=0.72),薬物治療群は高かった(2.34;1.35~4.05, p=0.002)。
[その他のエンドポイント]
心血管死は両群とも3例,全血行再建術(8.1% vs 40.6%:0.16;0.11~0.22)は非緊急例(4.0% vs 26.5%:0.13;0.08~0.22)も含め,PCI群で有意に少なかった。
[ランダム化から7日後を起点にしたランドマーク解析]
一次エンドポイントは,0~7日はPCI群のほうが薬物治療群にくらべ多かったが(2.49;0.78~8.00),8日~2年後は同群が有意に少なかった(0.29;0.18~0.45;交互作用のp<0.001)。
死亡,MIもほぼ同様の結果であった(9.01;1.13~72.0, 0.56;0.32~0.97;交互作用のp=0.002)。
★結論★安定冠動脈疾患患者において,FFRガイドによるPCI+薬物治療群は薬物治療群よりも転帰が良好であった。虚血を有していない症例は,薬物治療のみで転帰良好であった。

■7か月後の結果(N Engl J Med. 2012; 367: 991-1001.)
PCI群で一次エンドポイントの有意な抑制が認められたため,試験は2012年1月15日に早期中止された。
[一次エンドポイント]
PCI群で薬物治療群にくらべ有意に低下した(4.3% vs 12.7%:ハザード比0.32;95%信頼区間0.19~0.53, p<0.001)。
登録コホート(3%)と比較すると,PCI群の一次エンドポイント発生率は同等だったが(1.29;0.49~3.39, p=0.61),薬物治療群では著明に増加した(4.32;1.75~10.66, p=0.001)。
[二次エンドポイント]
全死亡と非致死的MIについてはPCI群と薬物治療群の差は認められなかったが,緊急再血行再建術のリスクはPCI群で著しく低下した(1.6% vs 11.1%:0.13;0.06~0.30, p<0.001)。とくに,PCI群では心筋梗塞またはECG上の虚血を伴う不安定狭心症による緊急血行再建術が有意に抑制された(0.9% vs 5.2%:0.13;0.04~0.43, p<0.001)。
★結論★DESによるPCIを施行予定の安定1~3枝病変患者において,冠血流予備量比を指標として機能的に有意な狭窄病変へのPCI+至適薬物治療は,至適薬物治療のみにくらべ有害心イベント,とくに緊急再血行再建術のリスクを有意に抑制した。
ClinicalTrials. gov No: NCT01132495
文献
  • [main]
  • De Bruyne B et al for the the FAME 2 trial investigators: Fractional flow reserve-guided PCI for stable coronary artery disease. N Engl J Med. 2014; 371: 1208-17. PubMed
    Rade JJ: FFR-Guided PCI - FAME may not be so fleeting after all. N Engl J Med. 2014; 371: 1251-3. PubMed
  • De Bruyne B et al for the FAME 2 trial investigators: Fractional flow reserve-guided PCI versus medical therapy in stable coronary disease. N Engl J Med. 2012; 367: 991-1001. PubMed
    Boden WE: Which is more enduring--FAME or COURAGE? N Engl J Med. 2012; 367: 1059-61. PubMed
  • [substudy]
  • 5年後の全死亡,心筋梗塞,緊急再血行再建術の複合エンドポイントもFFRガイド下PCI施行群のほうが薬物治療群よりも有意に少なかったが,おもに緊急再血行再建術によった。
    事前に予定されていた5年後(19施設:追跡期間中央値60.5か月[5年追跡完了例はPCI群371/395例 (93.9%),薬物治療群362/389例 (93.1%)]。薬物治療群の血行再建術施行例は51%;非緊急例35.1%)の結果。
    全死亡,非致死的心筋梗塞(MI),予定外の緊急再血行再建術の複合エンドポイントは,PCI(+薬物治療)群のほうが薬物治療群よりも有意に少なかった(13.9% vs 27.0%:ハザード比[HR]0.46;95%信頼区間0.34~0.63, p<0.001)。両群間差はおもに緊急再血行再建術によるもので(6.3% vs 21.1%:0.27;0.18~0.41),全死亡(5.1% vs 5.2%:0.98;0.55~1.75),MI(8.1% vs 12.0%:0.66;0.43~1.00)に有意な群間差はなかった。心臓死,MIは9.6% vs 13.4%,脳卒中は2.7% vs 1.6%。
    複合エンドポイントのPCI群 vs 薬物治療群のHRはランダム化から7日以内が2.49(0.78~8.00),8日~3年が0.34(0.23~0.51);2つの時期間の交互作用p<0.001,3~5年後が0.60(0.32~1.13);2番目とこの時期間の交互作用p=0.13。
    狭心症(CCS class II~IV)は30日~3年後はPCI群のほうが有意に少なかったが,5年後は両群間の有意差はみられなかった。
    生理学的虚血を有さず(FFR>0.8)薬物治療のみ実施例のイベントリスクは,FFRガイド下PCI施行例と差はなかった:N Engl J Med. 2018 May 22. PubMed
  • FFRで評価した狭窄の重症度は病変関連心筋梗塞,TVRなどMACEの独立した予測因子。
    冠血流予備量比(FFR)で評価した狭窄の重症度が転帰に影響するかを検討するために,FFRと血管関連転帰の関係を検証した(冠動脈アテローム性動脈硬化自然歴)。
    薬物治療のみを行ったFFR評価例607例(FFR>0.8の登録研究追跡例[166例/236病変]を含む)。多枝病変429例,左前下行枝およそ50%,大半が狭窄率50~69%でFFR 0.7~0.9。
    平均23か月後の主要有害心血管イベント(MACE:心血管死,標的血管関連心筋梗塞,虚血による標的血管再血行再建術[TVR])は,272/1,029病変(26.5%)。標的病変が≧70%狭窄はMACE群でMACE非発生群より多く(p<0.01),FFR中央値(0.68 vs 0.80)はMACE群のほうが有意に低かった。FFRの上昇に伴い累積MACEは有意に増加したが,主にTVRの増加によった。FFR 0.05 unit低下ごとの調整オッズ比は0.81(95%信頼区間0.76~0.86)。FFRは2年後のMACEと有意に関連し(調整ハザード比0.87;0.83~0.91, p<0.001),この関係は非線形で,FFR 0.80~0.60でMACEの増加が大きかった:J Am Coll Cardiol. 2016; 68: 2247-55. PubMed

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収載年月2013.02
更新年月2018.06