循環器トライアルデータベース

FRANCE 2
French Aortic National CoreValve and Edwards

目的 フランス全域で行われた経カテーテル的大動脈弁置換術(transcatheter aortic-valve implantation:TAVI)の前向きコホート研究から,患者の特徴と臨床転帰を検証する。

一次エンドポイントは1,6か月,1~5年後の全死亡。
本報は追跡期間114日(中央値)の結果。
コメント N Engl J Med. 2012; 366: 1705-15. へのコメント
弁膜疾患としては大動脈狭窄症の頻度が高く,重度で症候性であれば外科的大動脈弁置換術が推奨される。高齢であっても手術死亡率は低いが併存疾患の重症度により死亡率が上昇する。重度の併存疾患を有する高リスク例に対して2002年にTAVIが初めて報告され,全世界で5万例以上施行されている。TAVIに関してはPARTNER(コホートB)trialのような開胸手術が禁忌の例に対する内服治療とのランダム化試験や,各国の登録試験,デバイス別の結果報告がなされている。
本研究はフランス全体でのすべてのTAVI症例の登録研究であり,real worldでの臨床転帰を示しているがこれまでの報告と結果は大差ない。経大腿アプローチの方がrisk scoreの低い症例が多く予後もよい。CoreValveはペースメーカーを必要とする率が高く,弁周囲大動脈弁逆流の程度がやや強いがデバイス間で死亡率には差はみられない。30日後の死亡率は9.7%であり,PARTNER(コホートB)trialの5.0%より高くなっているがreal world所以かもしれない。1年後の予後規定因子は,EuroSCORE・NYHA分類・経心尖アプローチ・高度の弁周囲大動脈弁逆流であり,これまでの報告と同様である。1年後の生存率も76%で他の報告と変わりなく妥当な数字であろう。
フランス全体で地理的分布を考慮し34の施設が外科医・内科医・麻酔科医などがチームとして登録されており,1施設当たり約2年で平均94例(およそ週1例)のTAVIが行われている。これまでの各国のregistryと比較するとSAPIENの使用頻度は高いが(66.9% vs 15.6-57.0%),経心尖アプローチの率は同等である(17.8% vs 4.4-33.1%)。2011年の登録症例はrisk scoreが2010年より低く全身麻酔や経心尖アプローチの率が低くなっており,TAVIの適応基準の変化とデバイスの改良が関係している。特に経心尖アプローチはラーニングカーブによりアウトカムが異なる可能性があるが,2010年と2011年では少なくとも臨床転帰に差を認めていない。リスクの比較的低い症例でもTAVIを希望する例が増えており,通常の開胸手術よりも高い手術リスクを背負うことにもなり,TAVIのオフラベル使用は問題である。(星田
デザイン 登録研究,多施設(34施設:フランス33施設,モナコ1施設)。
期間 追跡期間は5年。
登録期間は2010年1月~’11年10月。
参加者 3,195例。フランス保健省より認可を受けた対象施設(複数の専門家[インターベンション医,心臓胸部外科医,心臓専門医,心エコー専門技師,麻酔医,画像診断専門医,老年医学専門医]で構成されたチーム;手術の件数;地理的分布を考慮)でのTAVI施行例。
重症大動脈弁狭窄*の症状を有する成人で,併存疾患のため外科的大動脈弁置換術不適応のもの。
* 大動脈弁弁口面積<0.8cm²,平均大動脈弁圧較差40mmHg以上,最高大動脈弁通過血流速度4.0m/秒以上。
除外基準なし。
■患者背景:
[全例] 平均年齢 82.7歳,男性51.0%,Society of Thoracic Surgeon(STS)スコア**14.4%,logistic EuroSCORE*** 21.9%,NYHA心機能分類III~IV度 75.9%,冠動脈疾患(CAD)47.9%,脳血管疾患10.0%,末梢血管疾患(PAD)20.8%,慢性閉塞性肺疾患(COPD)25.5%,心房細動(AF)26.6%,大動脈弁:弁口面積0.7cm2;圧較差48.1mmHg,患者によるTAVIの選択15.8%。
[デバイス別] 症例数(Edwards SAPIEN:2,107例[66.9%]),Medtronic CoreValve:1,043[33.1%],平均年齢(82.9歳,82.3歳),男性(46.4%, 60.0%),STSスコア**(15.6%, 14.2%),logistic EuroSCORE***(22.2%, 21.3%),NYHA III~IV度(75.5%, 76.1%),CAD(48.7%, 46.2%),脳血管疾患(10.0%, 9.9%),PAD(21.8%, 18.6%),COPD(25.3%, 26.2%),AF(25.2%, 29.6%),患者によるTAVIの選択(17.1%, 13.1%)。
[アプローチ別] 症例数(経大腿2,361例[74.6%],経心尖567例[17.8%],経鎖骨下動脈184例[5.8%]),平均年齢(83.0歳,81.5歳,82.2歳),男性(47.4%, 58.6%, 71.2%),STSスコア**(14.5%, 15.1%, 16.6%),logistic EuroSCORE***(21.2%, 24.8%, 20.3%),NYHA III~IV度(77.8%, 70.0%, 71.4%),CAD(44.4%, 59.4%, 58.4%),脳血管疾患(9.6%, 11.0%, 11.2%),PAD(12.5%, 48.1%, 41.6%),COPD(25.3%, 22.7%, 35.4%),AF(27.9%, 21.0%, 31.5%),患者によるTAVIの選択(15.2%, 14.7%, 12.6%)。
** 心血管手術時のリスクスコア(0~100%)で数の大きいほうがリスク大で,>10%は非常にリスクが高い。
*** 心血管手術時のリスクスコア(0~100%)で数の大きいほうがリスク大で,>20%は非常にリスクが高い。
調査方法 バルーン拡張型(Edwards SAPIENまたはSAPIEN XT),自己拡張型(CoreValve)のいずれかの人工弁を,経大腿(またはSAPIENでは経心尖,CoreValveでは経鎖骨下動脈)アプローチにより植込み。アプローチは大動脈から腸骨動脈・大腿動脈にかけてのアテローム,石灰化,屈曲のサイズと程度に基づいて決定。
手技前にaspirin(≦160mg/日)およびclopidogrel(300mgをローディング投与し以後75mg/日)を投与し,1か月の併用投与後aspirinのみを継続投与。手技後3年間は定期的な心エコーにより,大動脈弁弁口,平均圧較差,大動脈弁逆流を評価。
結果 [追跡期間は5年:1年後の結果]
追跡完遂は3,188例(99.8%)。1施設あたりの平均登録数は94例,両デバイスを植込んだのは30施設,Edwards SAPIENのみを使用したのは4施設。手技成功率は96.9%で,植込みのアプローチによる差はなかった(p=0.35)。
[一次エンドポイント]
全死亡率は30日後:293例(9.7%),6か月後:474例(18.6%),1年後:528例(24.0%)。
全死亡率は経大腿アプローチ例で経心尖アプローチ例に比べ有意に低かった(30日後:8.5% vs 13.9%[p<0.001];6か月後17.2% vs 22.4%, p=0.002;1年後21.7% vs 32.3%, p<0.001)。
経鎖骨下動脈アプローチの死亡率は,30日後10.1%,1年後25.1%。
[合併症]
1年後の脳卒中4.1%,大動脈弁逆流64.5%,重大な血管合併症4.7%。
Valve Academic Research Consortium(VARC)基準による合併症のうち,心筋梗塞(経大腿0.8%,経心尖1.8%,経鎖骨下動脈3.3%),大出血(1.5%, 3.4%, 3.3%),重大な血管合併症(5.5%, 1.9%, 4.3%),新規のペースメーカー植込み(15.2%, 13.6%, 25.5%)は,アプローチによる有意差が認められた。
[死亡の予測因子]
多変量モデルで1年後の生存率の低下と有意に関連した因子は,logistic EuroSCORE(1%上昇のハザード比:1.37;95%信頼区間1.19~1.58),NYHA III~IV度(vs I~II度:1.49;1.09~2.03),経心尖アプローチ(vs 経大腿アプローチ:1.45;1.09~1.92),弁周囲大動脈弁逆流grade 2以上(vs grade2未満:2.49;1.91~3.25)。
[その他]
1年後,89.5%が無症候あるいは軽度の症状(NYHA I~II度)であった。
2010年(1,551例),2011年(1,640例)の植込み例のベースライン時の違いは,2011年のほうがlogistic EuroSCORE(22.8 vs 20.9),心尖アプローチ(19.5% vs 16.2%),全身麻酔(73.4% vs 65.0%)使用が有意に低下し,現行手術よりTAVIを選択するもの(14.4% vs 17.1%)が有意に増加した。しかし,30日後の死亡率に有意差はなかった(10.1% vs 9.2%, p=0.49)。
★結論★重症大動脈弁狭窄の高リスク高齢患者において,TAVIが妥当な選択肢であることが示された。

[主な結果]
  • Gilard M, et al for the FRANCE 2 investigators: Registry of transcatheter aortic-valve implantation in high-risk patients. N Engl J Med. 2012; 366: 1705-15. PubMed
  • [追跡期間5年後の結果]
    TAVR施行後1年時の臨床イベント,SVD発生率低値は5年後も維持され,弁耐久性も良好なことから,TAVRの長期有効性が支持された。
    2010年1月~’12年1月に登録のTAVR施行高リスク患者4,201例における5年後の臨床転帰[vital statusは4,010例(95.5%)で確認]。
    [全死亡]
    植込み後5年の全死亡は,2,478例(60.8%)。アプローチ別の5年後死亡率は経大腿動脈59.0%,経心尖66.2%,経鎖骨下動脈66.2%で, 全追跡期間を通じて経大腿アプローチで低かった。
    [心血管(CV)イベントと心機能]
    CVイベントは,ほとんどが植込み後1か月以内での発生で,術後5年までは低率で推移(<2%/年)。NYHA心機能分類による評価が可能であった767例においては,初期のステージ改善が5年後も維持され,生存者の88.7%はNYHA心機能分類≦II度。
    [心エコー評価とstructural valve deterioration (SVD)の発生]
    植込み後5年の心エコー検査は459例で施行。植込み後の人工弁周囲大動脈弁逆流(AR) index ≧II度は,AR index 0~I度にくらべ,1~5年の死亡率が高かった[ハザード比(HR)1.40; 95%信頼区間(CI)1.25~1.57; P <0.001]。
    5年後のSVD発生率は,重度2.5%,中等度/重度13.3%。重度SVDの有無と死亡率に関連は示されなかった(HR 0.71; 95%CI 0.47~1.07; P =0.1)。
    [その他]
    ・植込み後の心不全合併の有無による5年後死亡率:心不全合併患者67.8% vs. 非合併患者57.7%)。
    Didier R, et al: Five-year clinical outcome and valve durability after transcatheter aortic valve replacement in high-risk patients. Circulation. 2018; 138: 2597-607. PubMed
  • フランスのTAVR施行例における3年後の全死亡(42%)の多くは非心臓死。1か月後以降の重度の有害事象は少なく,弁の性能は3年後まで安定。
    2010年1月~’12年1月登録の4,201例において中央値3.8年後の臨床転帰とその規定因子を検証。使用弁はバルーン拡張型66.0%,自己拡張型33.7%,アプローチは経大腿動脈72.9%,経心尖17.5%,鎖骨下5.8%,その他3.2%。Kaplan-Meier推定3年全死亡率は42.0%,心血管死17.5%。多変量解析で全死亡の有意な予測因子は男性,BMI低値,心房細動,透析,NYHA心機能分類III~IV度,logistic EuroSCORE高値,経心尖・鎖骨下アプローチ(vs 経大腿),永久ペースメーカー植込み,植込み後の弁周囲逆流グレード≧2だった。VARC基準の重度有害事象はほとんどが植込み後1か月以内の発生で,以後は<2%/年に減少。平均圧較差,弁輪面積,残存大動脈逆流は3年後まで安定していた。
    Gilard M,et al for the FRANCE 2 investigators: Late outcomes of transcatheter aortic valve replacement in high-risk patients: the FRANCE-2 registry. J Am Coll Cardiol 2016; 68: 1637–47. PubMed
  • 手技後のAR-grade 2以上は16%にみられ,1年後の死亡を予測。予測因子は自己拡張型弁の使用。
    手技後の大動脈弁逆流(AR)の予測因子と転帰への影響を経胸壁心エコーを実施した2,769例(92%)において検証した結果(追跡期間中央値306日):バルーン拡張型弁(BE)群は1,872例(67.6%),自己拡張型弁(SE)群は897例(32.4%),経大腿アクセス75.3%。手技後のAR≧grade 2は15.8%,SE群がBE群より多かった(21.5% vs 13.0%, p=0.0001)。
    多変量解析で,AR≧2の強力な独立した予測因子はSE。SE群では,ベースライン時のAR≧2,経大腿アクセス,BE群では男性,AR≧2,心房細動,僧房弁逆流≧grade 2,大きな大動脈弁輪径,経大腿アクセス,大きなendoprothesis径が予測因子。
    死亡312例,心血管疾患(CVD)死は175例。手技後AR≧2は1年後の死亡,CVD死の強い独立した予測因子で,SEとBEによる違いはなかった。
    Van Belle E, et al for the FRANCE 2 Investigators: Postprocedural aortic regurgitation in balloon-expandable and self-expandable transcatheter aortic valve replacement procedures: analysis of predictors and impact on long-term mortality: insights from the FRANCE2 Registry. Circulation. 2014; 129: 1415-27. PubMed

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収載年月2012.09
更新年月2019.01