循環器トライアルデータベース

FAST
Atrial Fibrillation Catheter Ablation versus Surgical Ablation Treatment

目的 抗不整脈薬抵抗性の心房細動(AF)患者において,カテーテルアブレーション(CA)と外科的アブレーション(SA)の有効性,安全性を比較する。
有効性の一次エンドポイントは,12か月間の抗不整脈薬非投与下での>30秒持続する左房起源不整脈の非発生。
安全性の一次エンドポイントは,周術期および12か月間の重大な有害イベント(死亡,脳卒中,一過性脳虚血発作[TIA],大出血[手術・輸血を要する,あるいは>2.0g/dLのヘモグロビン低下],心タンポナーデ,穿孔など)。
コメント 低侵襲性の胸腔鏡下の外科的アブレーションが通常のカテーテルアブレーションに比べてAFの再発率が低いという成績が得られた。しかしながら,この結果から外科的アブレーションを直ちに臨床の現場に応用するにはよほど慎重でなくてはならない。著者ら自身が考察しているように,(1)手技に伴う有害事象が外科的アブレーションではるかに多いこと,(2)外科的アブレーションでは付随した手技を色々と施していること,(3)カテーテルアブレーション不成功例が約60%も含まれていることなどが,本研究では問題である。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2007年7月~2010年6月,追跡終了は2011年7月。
対象患者 124例。30~70歳の症候性の発作性または持続性AFで,1剤以上の抗不整脈薬抵抗性あるいは不耐容の連続症例;侵襲的治療適応例。CAの有効性があまり期待できないと考えられている左房径40~44mm+高血圧,左房径≧45mm,AFに対するCA不成功症例も登録した。
除外基準:>1年持続しているAF;過去3か月以内に心臓CAあるいは心臓手術を行ったもの;脳卒中,TIA既往;左房内血栓;左房サイズ>65mm;EF<45%など。
■患者背景:平均年齢(CA群56.0歳,SA群56.1歳),男性(87.3%, 73.8%),BMI(28.6kg/m², 27.8kg/m²),発作性AF(58.8%, 73.8%);持続性AF(41.2%, 26.2%),AF診断からの期間(6.8年,7.4年),左房径(43.2mm, 42.5mm),CA不成功歴(60.3%, 73.8%),左房径40~44mm+高血圧例(23.8%, 13.1%),≧45mm(15.9%, 13.1%),CHADS2スコア:0(58.3%, 63.3%);1(28.3%, 28.3%);≧2(13.4%, 6.7%)。
薬物治療背景:抗不整脈薬:1剤(28.3%, 16.3%);2剤(41.5%, 35.7%);3剤(15.1%, 32.7%);≧4剤(15.1%, 16.3%),amiodarone(41.3%, 29.2%)。
手技前ホルター心電図:AFなし(40.4%, 55.8%);発作性AF(17.5%, 23.1%);持続性AF(42.1%, 21.2%),総施術時間(163分,188分)。
治療法 カテーテルアブレーション(CA)群(63例):高周波カテーテルによる広範囲肺静脈隔離術に適宜アブレーションを追加,
外科的アブレーション(SA)群(61例):胸腔鏡下での双極高周波による心外膜からの肺静脈隔離術に神経節アブレーション,左心耳摘出,その他適宜アブレーションを追加。
両群とも電気的あるいは抗不整脈薬の静注または経口投与による除細動を可とした。
結果 入院期間(中央値)はCA群2.0日,SA群5.5日(p<0.001)。
[有効性の一次エンドポイント:12か月間の抗不整脈薬非投与下での>30秒持続する左房起源不整脈の非発生]
CA群36.5% vs SA群65.6%(p=0.0022)。
CAに代わりSAによる左房不整脈予防のNNTは3.4例(95%信頼区間2.3~8.7)。
SA群のCA群に比べた有効性は全サブグループ(施設,発作性・持続性AFなど)で一貫していた。
抗不整脈薬使用例でもSA群のほうが有意に有効であった:42.9% vs 78.7%(p<0.0001)。
6か月後の左房起源不整脈の非発生は44.4% vs 67.2%(p=0.0178)。
[安全性の一次エンドポイント:周術期および12か月間の重大な有害イベント]
周術期:2例・2件(3.2%) vs 14例・14件(23.0%)でSA群のほうが有意に多かった(p=0.001)。SA群14例のうち6例は気胸,2例はペースメーカー植込み。
SAに代わりCAによる周術期の有害イベント予防のNNTは5.05例(3.3~42.5)。
12か月後:8例(12.7%) vs 7例(11.5%)で両群間に有意差はみられなかったが(p=1.0),CA群でビタミンK拮抗薬投与の1例が1か月後にくも膜下出血で死亡。同群では脳卒中,TIAがそれぞれ1例,肺炎,AFによる心不全がそれぞれ2例発症。SA群では肺炎,胸水貯留がそれぞれ2例発症した。
★結論★高血圧があり左房が拡張した例,カテーテルアブレーションが不成功であった心房細動患者において,外科的アブレーションはカテーテルアブレーションに比べ周術期の有害イベントリスクが高かったものの,12か月後の左房起源不整脈を抑制した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00662701
文献
  • [main]
  • Boersma LVA et al: Atrial fibrillation catheter ablation versus surgical ablation treatment (FAST): A 2-center randomized clinical trial. Circulation. 2012; 125: 23-30. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2012.01