循環器トライアルデータベース

RiksSvikt
Swedish Heart Failure Registry

目的 駆出率の低下した心不全(HF)患者におけるARBの死亡,HFによる入院抑制効果が示されている。しかし,ARBは薬剤によってAT1受容体親和性が異なるため臨床効果も異なる可能性があるが,HFにおける薬剤同士の比較検討はされていない。
losartanよりもAT1受容体親和性が強いcandesartanは,losartanに比べて降圧効果が高く,高血圧患者における新規HF発症も少ないことが報告されている。また,高齢のHF患者において,losartanは他のARBに比べて死亡率が高いとも報告されている。そこで,HF患者においてcandesartan,losartanの全死亡に対する影響を比較検討する。

一次エンドポイントは1年後,5年後の全死亡。
コメント JAMA. 2011; 305: 175-82.へのコメント
薬剤のhead-to-head比較試験では,多くの場合,投与量が等価用量であるか,両薬剤の投与群の患者背景に差はないかが問題となる。とくに本比較試験は,前向きの無作為割付け試験ではないので,これらのバイアスを除外することは,本質的に不可能である。本試験ではロサルタン投与群は,より高齢で心不全罹病期間が長く,NYHA分類の重症例が多く,心房細動の合併例も多い傾向にある。さらに,ACE阻害薬およびβ遮断薬の投薬率も低いため,予後にみる際にロサルタン投与群はカンデサルタン投与群よりも不利な要因が多い。本試験では,これらのバイアスを除外するため,propensity scoreと多変量解析を用いているが,統計解析法の限界は否めない。薬理学的に,カンデサルタンがロサルタンよりアンジオテンシン受容体拮抗作用が強いというエビデンスは報告されているが,それが臨床的イベントの抑制にいかに影響するかは,やはり前向きのRCT試験の結果をまたなければならない。本試験は,カンデサルタンの優越性を示唆する一つのエビデンスを示しており,今後前向きRCT試験で検証する価値がある仮説であることを明示した点で意義があると考えられる。(
デザイン 登録研究,多施設(スウェーデンの122施設)。
期間 追跡期間(中央値)はcandesartan群563.0日,losartan群640.5日。
登録期間は2000年~2009年12月14日。
参加者 5,139例*。HF患者。
* Swedish Heart Failure Registryに登録されたHF患者30,254例から,ARB投与例5,823例を抽出。このうち,症例数が少なかったvalsartan投与例(357例),その他のARB投与例(327例)を除外し,candesartan投与例2,639例とlosartan投与例2,500例を解析対象とした。
■患者背景:平均年齢(candesartan投与例72.0歳,losartan投与例75.3歳*),女性(38.1%, 40.7%),診療科(内科:44.6%, 47.7%;循環器科:54.8%, 50.9%),入院患者(45.5%, 61.8%),HF罹病期間≧6か月(59.8%, 70.6%*),NYHA心機能分類*(II度:50.0%, 40.3%;III度:36.0%, 46.2%),EF(<30%:29.0%, 29.8%;30~39%:29.4%, 27.9%)。
既往:高血圧(55.0%, 53.7%),虚血性心疾患(50.7%, 60.6%),心房細動(43.8%, 49.4%),糖尿病(29.2%, 34.0%),PCI/CABG(29.7%, 33.0%),ペースメーカー/ICD(11.4/3.3%, 15.5/3.9%)。
治療背景:ACE阻害薬(16.0%, 3.1%*),β遮断薬(87.1%, 82.3%*),アルドステロン拮抗薬(30.6%, 36.4%*),利尿薬(78.4%, 87.8%*),aspirin(48.7%, 50.5%),経口抗凝固薬(40.2%, 40.1%),スタチン系薬剤(50.8%, 50.0%),硝酸薬(17.5%, 25.4%*)。
candesartan群はlosartan群より全体的に健康的であったが,同群ではEFが低く,目標用量に達していない割合が高かった。
目標用量*(candesartan 32mg/日,losartan 50mg/日[150mg/日]):≦25%(36.8%, 8.2%[22.0%]);26~50%(27.1%, 13.2%[60.0 %]);51~75%(2.9%, 0.6%[17.8%]);≧76%(33.3%, 78.0%[0.2%])。
* p<0.001
調査方法 HF患者の退院時,または外来診療終了時に約70項目についての情報を収集してデータベースに入力。死亡に関する情報はSwedish death registryとの照合により確認。
losartan vs candesartanの全死亡のハザード比は,propensityスコアを使用し,薬剤の選別,予後に影響すると思われる次の5因子に層別した:登録年*(2001~2005年 vs 2006~2009年),HF罹病期間(<6か月 vs ≧6か月),年齢(≦70歳 vs >70歳),NYHA(I~II度 vs III~IV度),EF(<40% vs ≧40%)。
* losartanはcandesartanよりも早い時期から使用されており,2005年発表のCHARM試験(candesartan)をヨーロッパ,アメリカのガイドラインが反映したため2005~2006年をカットオフとした。
結果 [一次エンドポイント]
Kaplan-Meier推定による1年生存率はcandesartan投与例90%(95%信頼区間[CI]89~91%),losartan投与例83%(81~84%),5年生存率はそれぞれ61%(54~68%), 44%(41~48%)(log-rank p<0.001)。
propensityスコアで調整後の多変量解析で,losartan投与例の全死亡リスクはcandesartan投与例と比較して有意に高かった(ハザード比1.43;95%CI 1.23~1.65, p<0.001)。
[サブグループ解析]
propensityスコアと多重代入法(multiple imputation)を使用。
EF<40%の患者と≧40%の患者における解析結果は同様で,コホート全体と同等であった(いずれもcandesartanのほうが有意に良好)。
2009年発表のHEAAL試験はlosartan 50mg/日より150mg/日が死亡,心不全による入院の複合エンドポイントを有意に抑制したと発表したが,losartan目標用量 150mg/日の場合も,全体および目標用量 50mg/日例と同様の結果であった。 
★結論★心不全登録研究において,candesartan投与例はlosartan投与例に比べて死亡リスクが低かった。

[主な結果]
  • 駆出率の低下した高齢心不全患者(>80歳)におけるRA系阻害薬使用は, 非使用にくらべ,全死亡,全死亡+入院の低下と関連したが,失神による入院との関連は示されなかった。
    対象は,2000年5月~2012年12月までに登録された駆出率(EF)の低下した80歳超の高齢心不全患者6,710例[EF<40%,年齢中央値85歳,女性38%。RA系阻害薬使用は5,384例(80%)]。
    RA系阻害薬使用と全死亡,全死亡+入院および失神による入院との関連をpropensity scoreを使用し,RA系阻害薬非使用を対照として解析[37の変数から算出したpropensity scoreでマッチングしたコホート(matched cohort)は2,416例:使用例,非使用例とも1,208例]。
    [全死亡]
    ・全体コホートにおける1年後の粗生存率:使用例73% vs.非使用例47%。3年後生存率:46% vs. 24%。
    ・マッチングコホートにおける1年後生存率:使用例60% vs.非使用例49%(絶対リスク低下:11%)。
    3年後生存率:32% vs. 26%。ハザード比(HR):0.78[95%信頼区間(CI)0.72~0.86]。
    [全死亡+心不全による入院]
    ・全体コホートにおける1年後の無入院粗生存率:使用例56% vs. 非使用例34%。3年後無入院生存率:31% vs. 16%。
    ・マッチングコホートにおける1年後の無入院生存率:使用例44% vs.非使用例36%(絶対リスク低下8%)。HR:0.86(95%CI 0.79~0.94)。
    [失神による入院]
    ・全体コホートにおける1年後の粗入院リスク:使用例1.9% vs. 非使用例1.2%。
    ・マッチングコホートにおける1年後の入院リスク:使用例2.0% vs. 非使用例1.3%(HR:0.87,95%CI 0.50~1.51)。
    Savarese G, et al: Association between renin-angiotensin system inhibitor use and mortality/morbidity in elderly patients with heart failure with reduced ejection fraction: a prospective propensity score-matched cohort study. Eur Heart J. 2018; 39: 4257-65. PubMed
  • 拡張性心不全患者とβ遮断薬-投与例は全死亡率が低いが,全死亡+入院は非投与例と同等。
    収縮機能が保持された拡張性心不全(HFPEF)患者においてβ遮断薬投与例で死亡率が低いかを検証した結果(HFPEF患者19,083例のうちpropensity scoreを用いてβ遮断薬投与例と非投与例を2:1でマッチングさせた8,244例[平均年齢78歳,女性46%];追跡期間中央値709日,登録期間は2005年7月1日~’12年12月30日):β遮断薬投与例は5,496例,非投与例は2,748例。19,391人・年追跡で,全死亡率はβ遮断薬投与例が非投与例より有意に低かった(41% vs 45%;177例vs 191例/1,000人・年:ハザード比0.93;95%信頼区間0.86~0.996)。生存率は1年後80% vs 79%,5年後45% vs 42%。死亡+心不全による入院ではβ遮断薬投与による違いはみられなかった(61% vs 64%:371例vs 378例/1,000人・年,p=0.46)。
    β遮断薬の死亡抑制効果が示されている収縮性心不全(HFREF)患者22,893例のうちマッチングした6,081例(投与例4,054例,非投与例2,027例)でのpositive-control consistency解析では,β遮断薬投与例で死亡率(0.89;0.82~0.97),死亡+心不全による入院率(0.89;0.84~0.95)が低かった。
    Lund LH, et al: Association between use of β-blockers and outcomes in patients with heart failure and preserved ejection fraction. JAMA 2014; 312: 2008-18. PubMed
  • 駆出率が保持されている拡張性心不全患者において,RAS阻害薬使用は低全死亡率と関連。
    2000~2011年に登録された41,791例のうち駆出率の保持された拡張性心不全(HFPEF)16,216例(EF≧40%,平均年齢75歳,女性46%;ACE阻害薬/ ARB[RAS阻害薬]治療例12,543例,非治療例3,673例)のRAS阻害薬使用と全死亡の関係をpropensity scoreを使用して解析した結果:43の変数から推定したpropensity scoreでマッチングしたHFPEFコホート(6,658例:治療例,非治療例とも3,329例)における1年後の生存率は治療例77% vs 非治療例72%(ハザード比[HR]0.91;95%信頼区間0.85~0.98, p=0.008)。全体コホートにおいて,連続共変量として用いたpropensity scoreで調整した1年後の粗生存率は86% vs 69%(0.90;0.85~0.96, p=0.001)。
    年齢とpropensity scoreでマッチングした駆出率が低下した収縮性心不全コホートでは1年後のHRは0.80(0.74~0.86, p<0.001)。
    Lund LH, et al: Association between use of renin-angiotensin system antagonists and mortality in patients with heart failure and preserved ejection fraction. JAMA. 2012; 308: 2108-17. PubMed
  • Eklind-Cervenka M et al: Association of candesartan vs losartan with all-cause mortality in patients with heart failure. JAMA. 2011; 305: 175-82. PubMed

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収載年月2011.03
更新年月2019.03