循環器トライアルデータベース

RAFT
Resynchronization-Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial

目的 至適薬物治療を受けているQRS幅が延長した軽症~中等症収縮不全患者において,植込み型除細動器(ICD)に心臓再同期療法(CRT)を追加した場合の有効性を検討する。
一次エンドポイントは全死亡+心不全による入院の複合エンドポイント。
コメント QRS幅の広い,NYHA心機能分類II~IIIの例で,適切な薬物治療+植込み型除細動器にCRTを加えても予後の改善が得られるか否かは不明であったが,本研究でその有効性が示された。
本研究では,まず心不全が軽快し,生命予後改善効果は遅れて(治療開始後2年を経てから)みられた。NYHAクラスIIの例とクラスIIIの例での効果に差はみられなかった。軽い症状の心不全例では,QRS幅が広く,収縮不全がある場合には薬物治療+CRT-Dの併用を考慮すべきといえる。(井上
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(34施設:カナダ24施設,欧州,トルコ8施設,オーストラリア2施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は40か月,生存例は44か月。
登録期間は2003年1月~2009年2月。
対象患者 1,798例(カナダ1,617例,欧州・トルコ137例,オーストラリア44例)。至適薬物治療にもかかわらずEF≦30%のNYHA II~III度,病因は虚血性,非虚血性を問わない,自己調律時のQRS幅≧120msecあるいはペーシング調律時のQRS幅≧200msec,洞調律あるいは心拍数がコントロールされた(安静時≦60拍/分,6分間歩行時≦90拍/分)永続性心房細動または粗動,あるいは房室接合部アブレーション予定例,心臓突然死の一次予防,二次予防のICD適応例。
当初,NYHA II~III度の心不全患者を登録したが,2005年の報告でICD非植込みのIII度の症例でCRTによる死亡抑制が示唆され,その後ガイドラインが変更されたことから,2006年2月にII度の症例のみを登録するようにプロトコールを改定した。
除外基準:重大な疾患併発例,最近の心血管イベント発症例。
■患者背景:平均年齢(ICD-CRT群66.1歳,ICD群66.2歳),男性(84.8%, 81.0%),虚血性心疾患(68.7%, 64.9%),NYHA II度(79.2%, 80.8%);III度(20.8%, 19.2%),EF(両群とも22.6%),永続性心房細動/粗動(12.8%, 12.7%),洞調律あるいは心房ペーシング(87.2%, 87.3%),高血圧(45.0%, 43.9%),糖尿病(32.8%, 34.6%),PCI既往(24.6%, 23.0%),CABG既往(32.8%, 34.6%),6か月以内の心不全による入院(26.6%, 24.7%),QRS幅:自己調律(826例[157.0msec],837例[158.3msec]);ペーシング調律(68例[206.5msec],67例[210.3msec]),QRS波形:右脚ブロック(7.6%, 10.3%),左脚ブロック(72.9%, 71.1%),非特異的心室内伝導遅延(11.9%, 11.2%)。
治療状況:β遮断薬(90.4%, 89.0%),ACE阻害薬/ARB(96.1%, 97.1%),spironolactone(41.6%, 41.8%),digoxin(33.7%, 35.3%),aspirin(65.3%, 68.8%),warfarin(34.7%, 33.0%),clopidogrel(15.0%, 16.0%),スタチン系薬剤(67.9%, 68.4%),利尿薬(84.7%, 83.6%),Ca拮抗薬(11.3%, 9.2%),amiodarone(15.7%, 13.7%)。
6分間歩行テスト(789例,765例):歩行距離(351.3m, 354.9m),推算糸球体濾過量(59.5%, 60.8%):30~59mL/分/1.73m²(45.0%, 42.7%)。
治療法 ICD-CRT群(894例),ICD群(904例)。
経静脈リードとMedtronic社のデバイスを使用。
施設,心房調律(心房細動,心房粗動,洞調律,ペーシング),単腔ICD,二腔ICDで層別してランダム化。
結果 デバイス植込み例はICD-CRT群888例(99.3%),ICD群899例(99.4%)。
ICD-CRT群の非植込み6例中4例は死亡による。12例(ICD-CRT群7例)が心臓移植を受けた。
ICD群のクロスオーバーは,一次エンドポイント発生前が36例(4%),心不全による入院後が60例(6.6%)。
ICD-CRT群で53例(6.0%)がCRTを施行せず(47例は左室リード留置の失敗)。
[一次エンドポイント:全死亡+心不全による入院の複合エンドポイント]
ICD-CRT群297例(33.2%) vs ICD群364例(40.3%):ハザード比(HR)0.75;95%信頼区間0.64~0.87(p<0.001)。
[二次エンドポイント]
全死亡:186例(20.8%) vs 236例(26.1%):0.75;0.62~0.91(p=0.003),
心血管死:130例(14.5%) vs 162例(17.9%):0.76;0.60~0.96(p=0.02),
心不全による入院:174例(19.5%) vs 236例(26.1%):0.68;0.56~0.83(p<0.001)。
[サブグループ]
・NYHA II度の患者の結果(ICD-CRT群708例,ICD群730例)
一次エンドポイント:193例(27.3%) vs 253例(34.7%):0.73;0.61~0.88(p=0.001)。
二次エンドポイント
全死亡:110例(15.5%) vs 154例(21.1%):0.71;0.56~0.91(p=0.006)
心血管死:74例(10.5%) vs 100例(13.7%):0.73;0.54~0.99(p=0.04)
心不全による入院:115例(16.2%) vs 159例(21.8%):0.70;0.55~0.89(p=0.003)。
・NYHA III度の患者の結果(186例,174例)
一次エンドポイント:104例(55.9%) vs 111例(63.8%):0.76;0.58~0.99(p=0.04)。
二次エンドポイント
全死亡:76例(40.9%) vs 82例(47.1%):0.79;0.58~1.08(p=0.14)
心血管死:56例(30.1%) vs 62例(35.6%):0.77;0.54~1.10(p=0.15)
心不全による入院:59例(31.7%) vs 77例(44.3%):0.63;0.45~0.88(p=0.006)。
・QRS幅と治療間には有意な交互作用がみられ(p=0.003),ICD-CRT治療の効果は自己調律時のQRS幅≧150msec例(HR 0.59;0.48~0.73)が,<150msec例(0.99;0.77~1.27;交互作用p=0.002),ペーシング調律時のQRS幅≧200msec例(1.07;0.63~1.84;交互作用p=0.03)よりも大きかった。
・QRS波形と治療間に弱い交互作用がみられ(p=0.046),左脚ブロック例は非特異的心室内伝導遅延例に比べ有効性が大きかった(交互作用p=0.04)。
[有害事象]
デバイス植込みから30日以内のデバイス・手技関連合併症はICD-CRT群118例,ICD群61例(p<0.001)。
★結論★QRS幅が延長したNYHA心機能分類II~III度の収縮機能障害例において,ICDにCRTを併用すると死亡および心不全による入院は抑制されたが,有害事象が増加した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00251251
文献
  • [main]
  • Tang ASL et al: Cardiac-resynchronization therapy for mild-to-moderate heart failure. N Engl J Med. 2010; 363: 2385-95. PubMed
    Moss AJ: Preventing heart failure and improving survival. N Engl J Med. 2010; 363: 2456-7. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2010.11