循環器トライアルデータベース

PaRADISE
Preventing Amputations Using Drug Eluting Stents

目的 膝下(BTK)の重症虚血肢(CLI)患者において,バルーン拡張型薬剤溶出ステント(DES)による切断術予防効果と安全性を検討する。
一次エンドポイントは重大な切断術(MA:足首上の切断),全死亡,皮膚組織の治癒,安静時疼痛の軽減。
コメント 末梢動脈疾患の中で重症虚血肢(CLI)はめずらしくはないがショッキングな病態である。診断後1年で25%が死亡し,30%が重大な切断術(MA)を行い,20%が痛みや足趾などの切断に耐えなければならない。MAを予防することが重要であり,このために脛骨動脈から足部へのフローを順向性に保つ必要がある。一般的にバイパス手術が適応と思われるが,高齢やバイパス先の動脈を確保できないことなどにより実際にはあまり行われていない。このため痛みや感染などがコントロールできなければMAを行わざるを得ないのが現状である。バイパスの代替に経皮的血管形成術(PTA)が考慮されるが,信頼性や耐久性に限界があり,1年後の脛骨動脈の開存率は20-60%にとどまっている。
BASIL trialはCLIに対してPTAとバイパス術を対比し,2年後においてMAも死亡率も同等であることを示した。しかし,1ヵ月後においてPTAの20%はすでに不成功であり,バイパスの有害心血管イベントは15%にも及んでおり,実臨床としては問題である。さらに,対象はリスクが比較的低い症例(年齢が若い,腎機能良好)と思われるが3年後の切断術非施行生存率は55%と低い結果を示している。
BMSの代わりにDESをCLIに用いることは安全で有用であるという報告が散見されるが,少人数で観察期間も短い。本研究では,膝下(BTK)のCLIに対するDESの有用性をより多人数で長期に観察し,対照としてTASC IIやBASIL trialを用いている。結果として,(1) 3年間の切断術非施行率は94%と対照結果より非常に良好である,(2) BTKでのDESは安全で初期の手術に伴う合併症は少ない,(3) 3年後においてもBTKのDESは耐久性がある,ことを示した。
本研究ではBASIL trialのような除外規定がないことは賞賛に値する。血管造影上の再狭窄率は無症状で4%,有症状で24%であり,大部分の無症状例は血管造影検査を受けていないので実際の再狭窄率は10%未満であると考えられる。CypherのほうがTaxusより再狭窄率は低いが,メタアナリシスでも同様の報告がみられている。死亡率はRutherford分類6の方が分類4,5より有意に高く,同様の研究の死亡率を比較する場合には重症度を基準化する必要がある。本研究では抗血小板薬の併用とスタチンを高頻度(75%)に使用しており,他の研究との相違の一部は薬物治療に由来するかもしれない。足首より末梢ではステントが変形する可能性があり,膝窩動脈末梢や前脛骨動脈入口では再狭窄や不適切な留置を生じやすいことに留意が必要である。本研究は単施設で治療アームもDESだけなので,多施設でバイパス・DESを含め薬物治療を基準化した大規模研究が望まれる。(星田
デザイン 前向きコホート研究,単施設(米国)。
期間 追跡期間は平均27.4か月。
登録期間は2003年5月10日~2009年3月1日。
対象 106例(118肢)。Second European Consensus Documentの定義によるCLI患者で,DES(Cypher;Taxus)の植込みについてインフォームドコンセントが得られ,標的BTK病変に対し0.014インチのワイヤーのクロスを行ったもの。年齢,腎機能不全,透析,脳卒中の既往,心不全,不安定狭心症,癌,その他の致死性の疾患による除外はなし。
■患者背景:平均年齢74歳(80歳以上29%),男性72例(80肢),Rutherford-Becker分類:4(45例);5(36例);6(37例)。
調査方法 Rutherford-Beckerスケールで層別化(4:安静時疼痛,5:軽度の潰瘍,6:壊疽)。BTK病変に対し,1肢につき最大2つのDESを植込み。
残存狭窄≦20.0%を手技上の成功,脛骨部から足部までの順向性血管再疎通を血管造影上の成功と定義。
手技前にaspirin 81mg, clopidogrel 75mg/日または ticlopidine 250mg 1日2回,未分画heparin 40~50U/kgを投与,手技後は無期限のthienopyridine, aspirin投与,および脂質治療を推奨。1,3,6か月後,以後6か月ごとに追跡。皮膚組織治癒の遅延,症状再発,その他の血管領域の評価の必要が生じた場合に血管造影を再施行。潰瘍の治癒または症状軽減が不成功であった場合にインターベンションを再施行した。
TASC II,BASIL試験のhistoricデータと比較する。
結果 228のDES植込みが行われ(Cypher;83%, Taxus;17%),1肢あたりの植込みステント数は1.9, overlapping DES(平均長60mm)の植込みは35%であった。ステント植込み成功率は100%,血管造影上の成功率は96%,手技による死亡はなく,96%の患者が24時間以内に退院した(平均入院期間1.2日)。浅大腿動脈あるいは膝窩動脈インターベンション同時施行は48%。
3年間の切断術の累積施行率は6%,生存率は71%,切断術非施行生存率は68%。追跡期間中の死亡例(25例。手技後の平均生存期間12.8か月)のうち,MAを施行したのは12%であった。
死亡の予測因子は年齢(p=0.03),クレアチニン値>2mg/dL(p=0.0013), Rutherford分類6(p=0.0009)であったが,切断術の有意な予測因子は認められなかった。
血管造影再施行38例(35%:同側の症状再発18例,無症状20例)で,binary 再狭窄率は症状再発例;7/29ステント(24%),無症状例;2/45ステント(4%)。標的患肢の血行再建術施行率は15%。再狭窄率はCypherのほうがTaxusより有意に低かった(p≦0.003)。
★結論★DESによる膝下重症虚血肢の治療は,重大な切断術を予防し症状を軽減する有効かつ安全な方法である。手技による合併症および患肢の血行再建術率は低く,DES治療例の患肢救済および生存率はこれまでの試験を上回る。
文献
  • [main]
  • Feiring AJ, et al. Preventing leg amputations in critical limb ischemia with below-the-knee drug-eluting stents: the PaRADISE (PReventing Amputations using Drug eluting StEnts) trial. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1580-9. PubMed

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収載年月2010.07